双子と王立学園 3
メリッサは手紙を開いた。
そこにはこう書かれていた。
――万事任せておきたまえ。
メリッサは緑がかった青い目をパチパチと瞬かせた。
「これだけ?」
フェリオに視線を向けると、彼も苦笑していた。
「いかにもラランテスらしいが……」
「事の詳細をもう少し書いてくだされば良いのに」
双子への手紙には、何が書いてあるのだろうか。
「ルード、リア」
「「ヒミツだよ!!」」
「え……秘密?」
「「うん、当日のお楽しみだって書いてあるの!!」」
「そ……そう」
当日とは、いったい何のことであろうか。
メリッサは気になったが、双子はそれぞれの手紙を大切そうに持ち、見せてはくれないようだ。
「「でもね、このペンダントは学園にいる間は外さないようにって」」
「そうね……それが良さそうね」
ラランテスにお礼として渡したはずの光と闇の魔石。
しかし、それらは魔道具になって戻ってきてしまった。
「ラランテス先生に改めてお礼をしなくてはいけませんね」
「ああ……だが、魔術師団の研究室を去ってから忙しいらしく、なかなか連絡がつかなくてな」
「次のお仕事の準備でしょうか?」
「そうかもしれないな……」
万事任せておきたまえ……という意味深な言葉もそうだが、ラランテスがどんな仕事に就いたのかも気になる。
「ラランテスは、気まぐれだが信頼できる。ひとまず彼に任せておこう。後日、何を要求されるかも気になるところだが」
フェリオがため息をついた。
ふと、視線を感じてメリッサは、図書室の扉に目を向ける。
扉の隙間から、素早い動きで去って行く侍女三人の後ろ姿が見えた。
「本当に……何をする気なのかしら」
メリッサもフェリオに引き続き、ため息をつくのだった。
* * *
そうこうしているうちに、王立学園の入学式がやってきた。
王立学園の制服に身を包んだ二人。
紺色のジャケットにチェックの半ズボンとスカート、ニーソックスにピカピカの革の靴。
リボンの真ん中のブローチは、特別な魔石でできていて、このあと成績ごとに色を変えていく。
二人なら、すぐに一番上の金色になるかもしれない、とメリッサは思った。
ルードとリアは、幼い頃から家庭教師たちに教育を受けていて、全てにおいて優秀だ。
メリッサは、座学の成績は良かったが、魔力が全くないので重要視される魔術学の実技に参加できず、下から二番目の黄色だった。
二人のブローチの魔石は、まだ透明だ。
色はともかく、楽しく元気に通ってほしいというのがメリッサの願いではある。
「それにしても、よく似合うわ」
「「わーい!!」」
ルードとリアは、制服が大きめで、それがなんとも可愛らしい。
「良いか、くれぐれも周囲に魔力のことは気づかれないように……」
「「……お父さま、ご心配なく。細心の注意を払います」」
「それなら良いが……」
ルードとリアは、ロイフォルト伯爵家の者らしいよそ行きの表情を浮かべた。
普段、メリッサの前では甘えんぼでやんちゃな二人だが、外ではむしろ完璧すぎる貴族令息と令嬢なのだ。
「「では、お父さま、お母さま、いってまいります!!」」
「がんばってね……」
「保護者席で見ているからな」
「「うん!!」」
二人は手を繋ぎ、去って行った。
式の前だというのに、三年間の双子の成長を目の当たりにした気がして、メリッサはちょっぴり涙ぐんでしまった。
「なんてご立派に」
「あんなにお小さかったのに」
「一生お仕えする所存」
「ん……?」
そのとき入学式の会場の天井部分から、聞き慣れた声がした気がした。
だが、会場の天井は通常よりも遙か高く、声が聞こえるはずもない。
メリッサは気のせいだろうと思うことにした……したかったのだが……フェリオを横目に見ると、一瞬だけ眉根を寄せていたので、やっぱり聞き間違いではないのかもしれない。
最後までお付き合いいただきありがとうございます。下の☆を押しての評価やブクマいただけるとうれしいです。




