双子と王立学園 1
第二部は子どもたちの学園生活、育児に奮闘するメリッサとフェリオのお話です。
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王立学園への入学。
それは、ほとんどの貴族が通る道だ。
ルードとリアは、王立学園への入学を間近に控えていた。
「……でも、思ったより準備が大変なものね」
メリッサに続き五人の弟妹。
六人もの準備をした母はさぞや大変だっただろう……と、今さらながらメリッサは思った。
けれどそれど同時に、お揃いの制服、バッグ、色違いの手作りの袋物、ピカピカの靴を前にすれば心躍るというものだ。
「ねえねえ、メリッサ! じゃなかった、お母さま! どっちが私のなの?」
「リアはピンクだよ!」
「え? そんなこと決まってないもの!」
「ごめん……僕、リボンとフリルはちょっと」
「も〜……しかたないから譲るけど」
白銀の髪にアイスブルーの双子、ルードとリアは先ほどからメリッサに張りついている。
メリッサは今、それぞれの袋物に刺繍しているところだ。
杖に絡まる水とつる薔薇の紋章を可愛らしくあしらった刺繍はとても上手くできている。
ルードはクマさんマークで、リアはウサギさんマークだ。
王立学園へ持って行く袋類は指定のサイズに手作りする必要がある。
しかしほとんどの貴族は、使用人に作らせたり専門の業者に依頼する。
「ロイフォルト伯爵家らしく、宝石とか縫い付けるべき……?」
「「このままがいいよ!!」」
ルードとリアは、メリッサの手作り品を気に入ってくれたらしい。
高位貴族ほど趣向を凝らすものだが、母が手作りしてくれた袋が嬉しかった記憶があるメリッサは、どうしても手作りしたかった。
二人が嫌がったら、外注しようと思っていたが、ルードとリアがご機嫌な様子を見てメリッサは胸を撫で下ろす。
「ルード、リア……でも、買った物のほうが良くなったらいつでも言ってね?」
「「大事にするよ……?」」
にっこり微笑んだ二人の笑顔は、きっと精霊が与えてくれたものだろう。
メリッサは二人のあまりの可愛らしさに感激し、思わず抱きしめた。
二人もメリッサを抱きしめ返す。
「あらあら、甘えん坊ですこと」
そう言ったのは、侍女のマーサだ。
しかし彼女は、その言葉と裏腹にハンカチで目頭を拭っている。
「坊ちゃんとお嬢様もいよいよ王立学園に通われる……寂しくなりますわ」
やはり目頭をハンカチで押さえているのは、侍女のメアリーだ。
「――覗きに行けばいいのです」
なぜそんなことも気が付かないのか、というふうに胸を逸らしたのは侍女のダリアだ。
マーサとメアリーが眉根を寄せた。
「まあ……そのようなこと」
「王立学園は特別な事情がなければ、教員と保護者と子どもたちしか入れないのですよ」
王立学園には高位貴族だけでなく王族も通うため、セキュリティが完璧なのだ。
「あら、授業を受ける坊ちゃんとお嬢様、お友達と遊ぶお二人、給食を食べるお二人、見たくないのですか」
「「もちろん見たいですわ!!」」
三人は円陣を組んでしまった。
メリッサは波乱の予感を胸に、三人から目を逸らす。
メリッサは、ルードとリアの母になる手続きを正式に終えた。
堂々と王立学園に行くことができるのだ。
「おや、ずいぶん盛り上がっているな……」
そこにリボン付きの小箱を手にしたフェリオが勤めから帰ってきた。
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