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可愛い双子の子育てと契約妻は今日で終了予定です【書籍化決定】  作者: 氷雨そら


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手紙の真相 3


「とはいえ、しがない学者でしかない私が知ることなどたかがしれているが……」


 紅茶を差し出しながら、マーサがにっこりと微笑んだ。


「まあ、普通の学者は研究という名目で最前線に行ったりしませんのよ」

「はは――戦場には慣れている」


 メアリーもお茶菓子を差し出しながら微笑む。


「先生の学派は両陛下や王太后陛下まで巻き込んでいること、存じておりますわ」

「――ああ、ようやく新しい時代が来たのだろう。偶然な」


 ダリアは静かに近づいた。


「三年前、あの場所でお会いしたときは驚きましたわ」

「……君がまだ現役であることに驚くよ」

「ふふ……先生こそ」

「学者と君の仕事では引退するべき年齢が違う。命大事にな」


 ダリアはどこに行っていたというのか……。しかし、今の話の繋がりから考えればおのずと答えは見えてくる気がする。


「――最前線?」

「「「あら、ほほほほ」」」


 三人はごまかすように笑うと、ぴったり揃った礼をして去って行った。

 そういえば、ダリアはたまに腰痛で大事を取っていると姿が見えないことがあった……とメリッサは思い返す。


 三人が去って行くと、扉は少し開けられたままとはいえ、部屋の中はメリッサとラランテスの二人だけになった。


「……」


 ラランテスはこの上なく優雅に紅茶を飲んでいる。

 その姿があまりにも絵になることにある種の感銘を受けながらメリッサも紅茶を口にする。


「……さて」


 いよいよ話してもらえるのか、と思っているとラランテスは立ち上がり扉を大きく開け放つ。


「君たちにも関係することだ。相手の理解力が十分なのであれば、子どもだからという理由で聞かせないという選択はしない主義だが……」

「「……」」

「おはよう、君たち。盗み聞きはおすすめできないな」

「「おはようございます、ラランテス先生。申し訳ありませんでした」」

「……座りなさい」


 ルードとリアは、会話を聞こうとしていたようだ。

 二人に聞かせて良いものか、とメリッサは少しだけ悩んだ。

 けれど、たとえ幼くても間もなく王立学園に入学する二人は、状況を知っておくべきなのだろう。


 ――それに、ある意味二人のほうがメリッサよりも貴族としての判断には優れている節がある。


 三人の侍女たちが再び現れ、ミルクとお菓子を席に置いてしずしずと去って行った。

 三人が止めない、それも一つの答えなのだろう。


「ルード君、魔術精霊主義について述べよ」

「……授業ですか?」

「黙って答えるように」

「――魔力は精霊から与えられたもので、魔力を持つ者は持たない者よりも優れているという考え方です」

「なるほど……テストでは正解だ」


 突如始まったいつもの授業。

 しかし、これにも意味があるのだろう。


「ではリア君、それによって起きた歴史上の功罪を述べよ」

「かつて魔女と呼ばれた者たちは精霊に選ばれた神聖な者として人権を手に入れ活躍しました。一方、魔力のない者は人権を失い魔道具の発明まで魔力がある者に支配されました」

「ふむ……よく学んでいるな」


 二人がチラチラとメリッサを見ているのは、彼女が魔力を持たないことを気にしているからだろう。

 しかしメリッサは、自身が魔力を持たないことをそれほど気にしたことがない。

 メリッサの弟妹は、実は全員が平均よりよほど強い魔力を持ち合わせているのだが、魔力がないことで家族がメリッサを虐げたり馬鹿にすることはなかったのだ。


 ――二番目の弟が年頃になった時、一度だけメリッサが魔力がないことを馬鹿にするようなことを言ったときは家族全員がメリッサ側について大騒動になったくらいだ……。

 もちろん二番目の弟は思春期に入り、つい言ってしまっただけで本心ではないことはメリッサが一番よくわかっていた……。だが、弟妹はそれを許さなかった。


 そんなわけで、メリッサは魔力に関する自己肯定感はそれほど低くないのだ。


「――魔道具が開発され、その力は人の魔法を凌駕するようになった。もちろん、国内屈指の魔術師たちの魔法に比べればまだまだ発展途上ではあるが……」


 メリッサでもわかる。今、自分が周囲から卑下されないのは魔道具が開発されたおかげだ。

 そして恐らくこれから先、魔道具は人がその身だけで扱える魔法のさらに上の性能を持っていくのだろうと。


「話が逸れたが、魔術精霊主義者にとっては許しがたい状況とも言える」

「……だから、ラランテス先生と同じ考えを持つフェリオ様は戦場で孤立するように情報伝達を阻まれた、ということですね。ラランテス先生が半年に一度最前線に行ったのも、研究のためだけではなかったということですか?」

「メリッサ君は理解が良いから好きだよ」


 ラランテスがニヤリと笑ったその瞬間、いつの間にか忍び寄っていたダリアが勢いよくティーポットをテーブルに置いた。


「禁止ワードですわ」

「熱いお茶がかかっただろう」

「あらあら、大変申し訳ありません」


 ダリアは優雅に礼をすると、再び部屋から出て行った。


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