叔父と双子
会場の注目を一身に浴びていたメリッサとフェリオだったが、その視線は次々と二人の後ろへと移っていく。メリッサが振り返ると、神々しいばかりに可愛らしい双子が、侍女たちに連れられて入場してくるところだった。
「これは可愛らしい……さぞや今日の宴で注目を浴びることだろう」
フェリオはため息交じりにそう言った。
しかし、メリッサもその言葉を否定することなどできなかった。
今日の宴に関しては、家族も含めてねぎらうという意味で子ども連れの騎士や魔術師たちも多く招かれている。
子どもたちはどの子も可愛らしく着飾って天使のように愛らしい。
しかし、ルードとリアは特別だ。
ダンスのために流れ始めた音楽すら、二人のために奏でられているようだ。
ルードにエスコートされたリアは、会場を見回してにっこり微笑み優雅に礼をした。
サイドに流した銀色の髪には、ロイフォルト伯爵家の家紋であるつる薔薇が絡みついている。
アイスブルーの瞳の色と相まって、精霊のように高貴にすら見える。
一方ルードは、完璧なエスコートを見せ、いつもの無邪気な表情を潜めリアを守っているようだ。
その表情からは子どもらしさが消えて、メリッサと再会する前のフェリオにそっくりだ。
二人の後ろから着いてきた三人の老婦人。
彼女たちは背筋を伸ばし、只者ではない威厳を放っていた。
「これがロイフォルト伯爵家の威光なのね……」
「――ルードとリアも十五歳になって王立学園を卒業すれば、この場所で生きていく。当然だろう」
事もなげにそう言ったフェリオに、メリッサは密かに『やっぱり住む世界が違う』と思った。
しかし、きっとこの言葉はフェリオ自身が幼いころから言われてきた言葉なのだろう、そんな気がした。
しずしずと入ってきた二人だったが、メリッサとフェリオが一緒にいる姿を見つけるとぱあぁっと表情を明るくした。
二人はいつものように走り出すことなくしずしずと近づいてきた。
しかし、メリッサの目の前に来るとお互いの手を離してメリッサに抱きつく。
「どうだった? 練習したとおりにできていた?」
「ねえ、上手くいった? ロイフォルト伯爵家の名に恥じない?」
「ふふ、二人ともみんなが驚くくらい完璧だったわ」
「「わーい!!」」
二人は抱きついていつものような笑みを浮かべた。
会場中がその表情の変化に、誰も彼も可愛いものを慈しむような視線を向ける。
「それにしても、君たちは目立ちすぎるな」
フェリオのその言葉に、双子はメリッサから離れた。
「わかっているよ、叔父さま」
「私たちが目立つことにしたの、叔父さま」
「……ルード、リア」
「「お母さまを守るんだから。――だから、抱っこして」」
フェリオは目を見開き、それから微笑んでルードとリアを抱き上げた。
その表情の変化を今度こそ会場の全員が見ることになった。
もはや会場はざわめくことすらできずに静まり返っている。
こうして近づくと、色合いこそ違えども三人はとてもよく似ている。
つまり、三人とも絶世の美貌を持つのだ。
メリッサは、そんな三人を見つめ、確かにルードとリアが言うとおり地味な自分は目立たないだろう――そう思うのだった。




