双子からの手紙 1
双子は互いの額を合わせるようにして思い悩んでいた。
「ねえ、ルード……メリッサ元気ないよね」
「うん、リア……メリッサぼんやりしてるよね」
「――叔父さまも帰ってこないね」
「うん、もう三日も帰ってこない」
双子の記憶の中、いつだってメリッサは笑顔だった。いや、悪戯をした二人を叱るときはしかめっ面だったかもしれない。
それから、一度だけ泣いたことがある。
あれは、ルードとリアがメリッサの風邪を治そうとして魔法を使い、逆に自分たちが倒れてしまったときのことだった。
双子が倒れた日から、メリッサはそれまで以上に一生懸命に双子に関わり、愛を注いでくれた。
両親を失ったことは悲しく、叔父が仕事に忙しく帰ってこないことは残念だ。けれど双子は寂しくはなかった――メリッサがいてくれたから。
しかし、ここ三日メリッサは部屋からなかなか出てこず、出てきてもどこか上の空だ。
「――叔父さまのせいかな?」
「そうかもね……じゃあ、この前みたいに家に入れないようにしちゃう?」
「うーん、でもね。叔父さまも私たちに優しくしてくれる」
「うん、メリッサと同じくらい僕たちを心配してくれるし、メリッサにも優しいね」
「「それにもうあんなふうに魔法を使わないって、約束したもんね〜」」
双子はウンウンと頷き合い、頭を傾げた。
大好きなメリッサに、元気になってもらうにはどうしたらいいのか、と。
「「「手紙がよろしいでしょう」」」
そのとき、二人の背後からマーサとメアリー、そしてダリアが現れた。
彼女たちは画用紙とパステルを差しだす。
「「……メリッサ喜ぶ?」」
「ええ、喜ばれます」
マーサは柔らかく笑った。
双子の表情がパアッと華やいだ。
「「――もしかして、叔父さまも喜ぶ?」」
「ふふ、泣いて喜ぶでしょう」
メアリーはさもおかしそうに笑った。
双子は揃って眉根を寄せる。
「「泣いちゃダメー!!」」
「物のたとえですわ、坊ちゃん、お嬢様」
ダリアは淡々とそう言ったが、口の端は緩んでいる。
三人はニコニコ微笑んでいる。
その姿を見ていたルードとリアは、アイスブルーの瞳でお互いの顔を見つめ、にっこりと笑った。
「――同じ事考えてる?」
「うん、ルードと同じ事考えてるよ」
「僕も、リアと同じ事考えてる」
二人は立ち上がると胸を反らして「「じゃあ、三人とも部屋から出て!!」」と侍女たちに命じた。
「あらあら、私たちは仲間はずれですか?」
「子どもの成長とは……嬉しくも寂しいものですね」
「仕方ありません。掃除の続きを致しましょう」
三人が去って行くと、ルードとリアは画用紙に合作で絵を描き始めた。
字を習い始めた二人は、ようやく全ての初級文字を書けるようになったところだ。
時々歪になってしまうのはご愛敬。
相談しながら、一生懸命書き上げていく。
「上手に書けたんじゃない?」
「うん、今までで一番上手に書けた」
二人はご満悦だ。
さらにパステルで絵を描いていく。
二人はクルクルと画用紙を丸めた。
「そうだ、私のリボンで結ぼうよ」
「いいね! メリッサのは金色だ」
「うんうん、じゃあ叔父さまのはこの緑がちょっと入った青色にしよう」
「「あとはどうしよう――うん、ピンク!!」」
リアのリボンは絹布の高級品だ。
しかし二人は構わずほどよい長さにそれを切り、こちらもできるようになったばかりのちょう結びで画用紙を縛った。
クルクル、クルクル、クルクルと双子は次々画用紙を丸めてリボンを結んでいく。
「「でーきた!!」」
二人はたくさんの手紙を抱えて立ち上がり、部屋の扉を勢い良く開けたのだった。
書籍化決定いたしました
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