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9・俺、新たな学びを得る

 本陣の移動は遅遅としたもので、車輪村まで三日を要した。


 多くの荷物を俺が知る馬の倍はあるかというブットイ脚を持つ巨大な馬が曳く荷馬車で運んでいるのにこの遅さ。


 それと言うのもひっきりなしに戦況報告が行われるモノだからその都度隊列が停止し、一日に進める距離は普通の行軍の半分以下に落ちているからだとユージンが説明してくれた。


「報告します!」


 また新たな戦況報告が入ったらしく、ようやく到着し陣幕の設営が行われる最中、姫様や幕僚たちは外で報告を聞くこととなった。


 俺?俺もその中に居るよ。本陣詰めだもの。


「ホイールロックに籠る敵は我らから奪った武器、および魔法による抵抗を行っており、カーネル級が存在するものと思われます!」


 伝令が新たにもたらした情報には、俺の知らない単語が含まれていた。


 カーネル?フライドチキンの店か?


「カーネルだと?お前は妾を謀っているのか?」


 姫様はそう声を上げた。


「いえ、武器を巧みに使い、魔法も使う個体が出現しており、カーネル級であると・・・・・・」


「おい、男。それを謀っているというのだ」


 姫様は側付きから大剣を奪い取る様に手にすると、伝令へと突き付けた。


「お前は魔族の等級について知っているか?」


「はい、もちろん存じております」


 姫様の問いに即答する伝令。


「そうか、北方で手柄を立て、男どもで編成される南部の兵団へ向かうつもりだな?魔族狩りを踏み台にしおって」


「いえ、その様なつもりはありません!」


 伝令はそう答えるが、ユージンに今のやり取りがどういうものか小声で尋ねれば


「よくある事だそうです。対魔族の戦いは頻繁に起きるので戦功が立てやすく、戦功を立てた者が隣国と境を接する兵団に転籍したなら、いきなり高位の地位を得ることが出来ると言われています」


 うん、顔が近い。声がキレイ。いっそそのまま・・・


「そうか、そんなつもりはなく、南部の兵団で高位の地位を得たいのだな」


 姫様は伝令へとさらに大剣を近づける。


「では答えよ。ソルジャー級とは何だ?」


「はい、ソルジャー級は森を徘徊する一般的な魔族であり、数体規模のグループで行動し、無手によって人を襲うモノを指します」 


「では、コマンド級とは何だ?」


「はい、コマンド級とは棒や石などを簡単に加工した武器を扱う魔族であり、ソルジャー級を従え二十体規模のグループで行動し、『活動期』に草原へとあふれ出す集団の主体となっている魔族を指します」


「では、人から奪った武器を使う魔族を何という?」


「はい、人から奪った剣や槍、農具などを効果的に扱う魔族はキャプテン級と称し、コマンド級の進化等級の事を指します」


 どうやら伝令はスラスラと魔族の等級について返答している様だ。


 そして、新たにキャプテンと言う等級が登場した。


 それに何より、伝令が行った報告を振り返れば、武器を扱う魔族をキャプテンと言うなら、カーネルと言っていたあれは何なのだ?


「男、では先の報告は何だ。妾がそんな程度の事も知らんと愚弄していたという事か?それとも、お前は混乱した前線陣地からの報告を、何の疑問もなく受け取り、討伐隊を危機に陥れようと画策でもしているというのか?」


 事を大きく見せたい前線部隊の言葉をそのまま伝える。それはいたってよくある事のように思えるのだが、姫様はなぜそこまでこの伝令に怒っているのかよく分からん。


「はい、いえ、ありのままの事実にございます。キャプテン級と化した数百に上る魔族の群れを統制し、村の石壁を巧みに利用して抵抗している事から、群れを率いるだけのジェネラルではなく、直接戦場を指揮できる個体、カーネルが生まれていると推察されるとの事です!」


 伝令はさらにそう答えた。どうやらカーネルと言うのはゴブリンリーダーのように群れの指揮を行うような存在と言う事なのだろう。何で詳細に報告しなかったのか甚だ疑問ではあるが。


 それを聞いた姫様はキッとこちらへと視線を向けた。正確には俺の天使を睨んでいる。


「神官!神殿はコレを読んでいたのか!事態は『侵攻』局面ではないか!」


 そう叫ぶ姫様。


「ブルノ修道院へ伝書便を飛ばせ!聖女隊の出仕要請が必要だ!魔剣騎士は我に続け、後方で戦況報告を聞いている場合ではない。ドーカネ!お前も来い」


 姫様は矢継ぎ早に指示を出し、ようやく設営が終ろうとしている陣幕には目もくれることなく戦場へと歩み出し、側付きや幕僚の中から魔剣騎士と呼ばれているのであろう騎士が後に続く。


「なあ、聖女隊ってなんだ?」


 最後方を付き従いながらユージンに聞いてみる。


「各地の修道院は対魔族戦闘部隊を有しています。神殿の神兵や神聖騎士と違って魔族討伐に特化した女性ばかりで構成された集団で、普段は僕たちと同じく神に仕える者たちなのですが、魔族の大規模な侵入が起きた時には王国の矛として戦う事になっているんです。修道院の本山であるブルノには、対魔族戦闘に秀でた修道士ばかりを集めた精鋭部隊があり、それを聖女隊と称しています」


 じゃあ、なんで今は出張って来ていないんだろうな?


「修道院は魔族に襲われた者たちの未亡人や孤児となった子供たちが生活しています。なので魔族への敵愾心は高く、一度動き出せば王国の命令でもなかなか止まらないため、聖女隊のような精鋭部隊は本来派遣されることはないのですが・・・・・・」


 修道院はもともと魔族に襲撃された村々の救済を目的に神殿から分かれた組織だったそうだが、いつしか対魔族の急先鋒となり、魔族並びに魔族に接触した男を容赦なく殺戮する戦闘集団と化しているとか。

 地方の修道院が擁する数十人の修道士隊ですら危険物なのに、本山であるブルノ修道院の聖女隊ともなれば、脅威度はジェネラル級であるらしい。

 いや、なにそれ、怖い。

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