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5・俺、現実的だと納得する

 騎士との話を終えた俺たちは、部屋へと案内された。


 どうやら一般兵の様な大部屋ではなく、かと言って幹部クラスの様な個室でもない。そこそこ地位があって上からも下からも圧が強い中間管理職が使う二人部屋である。


 このツァスタバ王国をはじめとする草原諸国は、特殊な事情から女性の騎士や兵士が多いとの説明を受けた。


 よくあるファンタジー物の様な男女平等世界であるとか、価値観が逆転した世界観のソッチ系であるといった事情ではなく、魔族による影響が大きい。

 魔族はオスをクイーンというボス級個体が囲ってしまい、駒となる多数の個体はオスにありつけないメス集団という構成。もっと人間に近い外見や種であれば、素直に人間と交わることが出来、平和な関係を築けていたのかもしれないが、外見が随分と違い、種としても近似してはいなかった。つまり、平和に共存し混血するという道は実現できない。

 だが、困ったことに魔族にとって人間は近しい種であるとともに、オスと認識できてしまうナニカがあるらしく、人間のオスと見れば襲い掛かる事になってしまう。


「遺伝子レベルで世界征服が刻み込まれた古典ラノベの魔族よりは現実的かも知れんが・・・・・・」


 部屋で荷ほどきをしながら俺はそう零す。


「何でしょうか?」


 さきほど、神殿が伝えなかった話に至るまで聞かせることになり、さらに騎士からより事細かく神殿の恥部まで語られたことで、少々怯えながらユージンが尋ねてくる。


「いや、大した事じゃない。俺の世界にあった物語よりも真っ当な世界だと思っただけさ」


 俺は怯えた天使など見たくはないので、ラノベ設定のあれこれを聞かせることにした。


「それはまた、本当に英雄譚やおとぎ話なんですね」


 そう感心して聞き入ってくれる天使。いや、こんな密室でそんな興味津々な顔をされると、勘違いしちゃうじゃないか!


 この世界では、対魔族軍団を女性主体で編成している。しかし、それは女に権力を奪われたくない男どもには不安で仕方のない事態な訳で、要所には男を配してコントロールしようとしている。

 もちろん、危険を顧みず魔族討伐に参加する男性兵士や騎士、被虐趣味や興味本位の変態もそれなりに混じってはいるのだろうが、男性比率が圧倒的に低くなっている訳ではない。そうした状況から、四人に一人は男である。ただ、俺が遭遇した通り、魔族の動き次第では部隊に要らぬ危険をもたらすことに繋がる事もあり、配置には慎重な配慮を要する事になる。


 そこを間違えれば魔族を不用意に刺激して部隊の危機を招くにとどまらず、街の陥落と言う事態にもなりかねないのだから。


「この世の魔族は世界征服が目的ではないですし、街を落とすことも目的とはしていません。目的は男。ですからね」


 ニコニコそう口にする天使。君、そんな笑顔で何を求めているのかな?


 それから数日は特に何をするでもなく、お客様待遇のままに訓練に参加する事になった。


 今回召喚が行われたのは、数十年に一度という大規模な魔族生息地が発見されたことによる。


 特定のメスがオスを囲う習性を持つ魔族は大規模に繁殖する事は少なく、群れの規模も領地貴族の軍勢で対処可能なレベルであることが多い。


 例外的に大きな群れが森を出て草原付近へと進出する「活動期」が存在するという事で、今がそれにあたるとの事だった。


「今回の『活動期』は大規模な物であることが確認されている。確認されたジェネラル級集団が10を超え、今まで討伐できたのは4つに過ぎない。クイーンの居る巣がどれ程の規模を持つのかは未だ分かっていない」


 そんな説明がなされ、巣の位置すら特定できていなかったのだが、のんびりしている間に事態が動きを見せた。


「だが今日、マッチロック、およびホイールロック両村が魔族に呑まれ、フリントロック、パーカッションロックへと迫りつつあるとの報告が入って来た」


 姫様の側近がそう説明するのを居並ぶ諸将や文官たちと並んでボケっと聞き、事態が動いてるんだな、などと考えていた。


「これよりプリチェット砦へと本営を前進させ、本格的な反攻体制の構築に入る事となった。皆、準備を始めよ!」


 何やら大事になるんだなぁといった感想を抱きながら、さて、一体どうすれば良いのやらとしばらく待つ。


 この数日で見聞きしたところによると、男がいる部隊は偏在しており、主力部隊にはほぼ存在しない。予期せぬ魔族の標的となる事を避ける為だろう。

 魔族が生け捕りになっていたのも、変態どもや志願兵たちが勝手に想像しているご褒美など存在しない事実を突きつける目的だった様で、ここ数日の間も練兵場で実物を用いた訓練が行われていた。

 捕まったらご褒美が待っているアマゾネスなどではなく、夢も希望もない獣に襲い掛かられてしまうだけ。さらには少しでも気に入らなければすぐに殺しに来る。

 まさに地雷原でステップダンスを踊るような罰ゲームしかそこには存在していない。


 後方では脚色や誇張、創作によって事実がねじ曲がっているため、意気盛んにはせ参じてやって来た変態どもへと現実を見せつけているんだと教えられた。こうした訓練により、ごく数粒を除いては心を入れ替えた精強な兵士や騎士になるという。そりゃあ、そうだろう。相手はただの獣だもの。ごく一部の奇特な連中については知らん。

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