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3・俺、仕組みを理解した

 騎士に従っていくと、そこは大広間の様な場所だった。


「殿下、連れてまいりました」


 騎士がそう伝え、中へと踏み入れば、そこには複数の騎士や文官が居並ぶ光景に出くわした。門番が伝えた時点で用意が進められていたのだろう。


 ユージンはなれた仕草で中央に1人座る人物の前へと歩み出る。騎士に促されて俺も続き、ユージンの仕草を見よう見まねで真似てみる。


「この度、召還を行いましたチャスカ―神殿のユージンと申します。こちら、召喚者ドーカネカズヨシにございます」


 しっかり教育を受けた神官らしく、流れる様な美声を紡ぐ天使。


「ご苦労であった」


 横から声がしたのでチラッと見れば、威厳の在りそうな男である。鎧姿ではないので文官だろうか。どうしてこうもファンタジー世界は顔面偏差値が異常に高いのか嫌になるのだが、そんな事を言っても仕方がないのだろう。


「神殿の書には召喚者のみならず、其の方も宝具を授かったとあるが、相違ないか?」


 続けてそう尋ねるイケオジ。


「はい。召喚者ドーカネの願いによって、私は供として宝具を授かることになりましてございます」


 天使がキリっとこたえている。


「おい、お前。男なのか?神殿の使者と言うからには男なのだろうが、妾に次ぐ美形とは何の冗談だ?」


「殿下!」


 予定されていなかった言葉を発したらしい中央の人物をふと見れば、なるほど、ユージンにも劣らない美少女が居るではないか。


 そんな事を思いながら眺めていれば、その美少女は席を立ち、ユージンへと歩み寄る。


「気に入らんな。魔族相手に神殿が召喚を行う。そこに政治的な思惑以外の何があるというのだ。そして召喚に際してこのような美形を用意し、召喚者を篭絡しようとでもしたのか?」


「フランキ殿下!」


 イケオジが更に声を張り上げるが、当人は止まる様子がない。


「お前もお前だ。冴えない面をしおって、美形に鼻を伸ばしてここまで着いて来たのであろう。汚らわしい!」


 蔑むように俺を見下ろす美少女。いや、ちょっとしたご褒美になってるんだが。


「ザコ召喚者よ、お前の実力は如何ほどだ?練兵場で試してやろうではないか」


 姫様はまるでメスガキの様な事を言い出す。


「お待ちください。此度の召喚において授かった宝具は、石をも簡単に斬る先例なき無双の剣にございます」


 天使がメスガキへとそう忠告してくれる。


「ほう、石を斬る、か。ならば魔族も容易く斬れような」


 姫様は挑発的な目をユージンへと向け、そして再度俺を一瞥した。


「練兵場にとっておきの魔族を用意せよ。一刀に斬り伏せることが出来なければ放り出す」


 メスガキから一転、風雲児の気配を纏った姫様がそう言い放ち、真っ先に部屋を出ていこうとする。


「お前たち、練兵場へ向かわんか」


 呆然とする俺たちへと騎士が声を掛け、案内してくれるらしい。これがいつもの事なのだろうか? 


 練兵場へと連れていかれ、そこで仁王立ちする姫様を見つける。


「遅いではないか。待ちくたびれたぞ」


 顔は美少女なのだが、その口と行動は残念そのもの。


「魔族はまだか!」


 などと、仁王立ちで不満を漏らしながら大きな檻が運び込まれてくるのを待っていた。


「男ー!男ー!」


 檻からはそんな叫び声が聞こえ、俺は恐怖に打ち震えてしまう。


 だって考えてもみろ、美形のアマゾネスだったならまだしも、叫んでいるのは体長2メートルを超える熊かゴリラのような存在だぞ?


「ユージン、アレが何言ってるか分かるか?」


 俺はユージンに聞いてみた。


「いえ、雄たけびを上げている事しかわかりません」


 天使よ、ここまで散々思っていた疑問への回答をありがとう。


 召喚されてこれまで、俺は様々な人の言葉を「理解」してきたのだが、それはまるで吹き替え洋画を見るがごとくであり、理解した内容と口の動きが合致していなかった。

 そして、目の前の魔族と言われるモノの言葉を理解できたことで確信へと変わる。俺、この世界の言葉なんて何も分からないんだなと。ただ「理解」しているだけなんだと。

 そして、どういうわけだか人間とは似ても似つかない生物の雄たけびすらも「理解できてしまっている」という現実を。


「さあ、召喚者。アレを一刀両断してみせろ!」


 姫様がそんな無茶振りをして来る。どうやらチェスカー神殿と言うところがよほど嫌いらしく、顔は喜びに満ち溢れている。


「魔族を檻から出せ!」


 姫様の命によって檻は開き、魔族が飛び出してきた。


「男ー!男ー!嗅いだこともない成人の男の匂いだー!」


 その叫びを理解した俺は、この場から兎に角逃げ出したくなった。嫌だ、こんなの・・・・・・


「ほらどうした。魔族は男へ向かって行く習性があるんだ。お前たちが狙われているんだぞ」


 嬉しそうにそう口にする姫様をみてため息が出てしまう。


「そこのメスガキ!私の獲物に言葉をかけるんじゃねぇ!」


 姫様の言葉に反応した魔族が姫様へと標的を変えた。


「ハッ、何だこの魔族は。まずは私を狙うというのか。ならば来るがいい。一撃で倒してやろうではないか」


 姫様は守ろうとした騎士達を下がらせ、自身の背丈ほどもある大剣を掲げている。


「ヤレヤレ。展装!」


 俺は妖鎧を身に纏い、輝鋼剣を引き抜いた。


「死ねやメスガキ!」


 姫様へと飛び掛かる魔族へと駆ける。


 姫様は右手の爪による攻撃を大剣で凌ぐが、力負けして退いている。それでも果敢に対峙しているが劣勢は明らかだった。


「今度はしのげると思うなよ!このメスガキがー!!」


 魔族が周囲を威圧するような声を発し、一瞬硬直する姫様。


「悪く思わんでくれよ」


 俺は防御姿勢を取る姫様の脇を抜け、輝鋼剣を魔族へと振り下ろした。 


 

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