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2.俺、異世界に戦慄する

「こんなお札に鎧が収まるというのは不思議ですね」


 天使ユージンがまじまじと妖鎧符を眺めている。まさかここまで実現できるとは思っていなかったのだが、やったら出来たのだから仕方がない。

 とある戦国風ゲームのパワードスーツな甲冑と課金アイテムであるチートな刀を創造出来てしまった。


 供にしたのは美少女は美少女でも、付いてる男の娘ではあったのだが・・・・・・


 前代未聞の出来事に神殿は大騒ぎとなり、すったもんだの末、俺たちは魔族討伐へと旅立つこととなった。

 その過程で神殿は天使による破壊行為が行われたが、まあ、仕方がないだろう。相当な不満があったことが窺える。


 そんな中で教えられたのが、ここはツァスタバ王国と言う国であり、肥沃なスナイドル大平原北方に築かれた豊かな国なのだそうだが、平原の北にあるメトフォード大森林から魔族が侵攻してきているとの事だった。平原にはいくつかの国が存在し、東にはエンフィールド大山脈が広がる。そこには手先が器用で鍛冶や細工が得意な種族が住み、平原の国々と交易がおこなわれているとの事だった。


「ああ、面白いだろう?鎧を着て歩き続けるのは色々と不便だし、神殿で起きた様な魔力酔い?になって動けなくなるだろうからな。こうやって簡単に持ち運ぶように出来ているんだよ」


 ユージンにそう答えながら、一部が倒壊した神殿をふと振り返る。天使を怒らせる様なことは止そう。俺はノンケだし、ユージンも男と言う信念を持っているんだ。ちょっと惜しい気はするが・・・・・・


 俺たちは神殿を後にし、聖職者たちが手を震わせながら快く渡してくれた餞別を持って北へと旅を始めた。


 といっても、歩くのはごくわずかな距離で、すぐに船旅となった。


「広い川だな」


 そこは日本では考えられないほどの広さがあり、まるで海か湖を渡っている気分になってしまう。


「ヘンリー川は平原を流れる大きな川で、大森林にまで繋がっています。この川を行けば目的のマスケット城へ行くことが出来ますよ」


 そんな天使の美声を聞きながらの船旅は至福の時間となった。


 いくつかの湊に立ち寄りながら2日の船旅の後、目的の城というか城塞都市へと到着した。


「それにしても、まさかイルカの様な生き物が船を曳いて泳ぐ姿を見るとは思わなかったな」


 どうやらこの世界は河川交通が発達し、その主力を担うのが馬車ならぬイルカ舟だった。大型船ならば複数のイルカが船を曳いているそうで、大きな屋形船の様なものを退く姿が拝めるそうだ。残念ながら俺たちは出会う事が無かったのだが。


 マスケット城はちょうど湊のすぐそばに聳え立っており、元は蛇行した川の跡、つまり三日月湖によって取り残されていた小高い丘を利用して建てられているようだった。

 周りは元の河道を活かして堀状に整えられ、城に直接船着き場が存在している。ただし一般の湊は少し離れた現在の川に面して設けられているのでそこから堀を利用した運河で繋がっている状態だ。

 俺たちは湊で下船すると城へと歩いて行き、ユージンが門番へと神殿の紋章が入った符を見せる。


「この度召還を行ったチェスカー神殿のユージンと申します。召喚者を連れ参内に参りました」


 そう告げられた門番も天使の微笑みに魅了され、これと言って疑う事もなく取次のために中へと消えていく。

 しばらく待つと門番は騎士を連れて戻って来た。


「神殿の使者と聞いたが、チャスカ―神殿は女の神官が存在するのか?」


 天使の微笑みが通用しない騎士。それもそうだろう。騎士はまさしく美女と呼ぶにふさわしい顔と声である。流石の天使でも誤魔化せそうにない。


「いえ、私は男でございます」


 ユージンがそう礼をすれば鼻で笑う騎士。


「フン。それで、まさかそこな冴えないモノを召喚者などと騙るのではあるまいな」


 鋭い目つきで俺を睨む美女。日本においてどちらかと言えば胡散臭げに見られることの方が多かったのでご褒美なのだが、きっと騎士には通じていないだろう。


「召喚者の銅金一義と申します」


 俺がそう名乗れば、さらに胡散臭そうな視線を寄こす騎士。


「その様な得体のしれないモノを召喚者などと、さて、本当にチェスカー神殿の使者なのか?」


 再度ユージンへと問いただす騎士。


「こちらを」


 ユージンは神殿の連中が手を震わせながら手渡してきた魔道具らしき品を騎士へと手渡し、騎士も魔道具へと手を触れ何やら操作している。


「ふむ、間違いなく神殿の使者、並びに召喚者であるらしいな。入れ」


 終始胡散臭げな視線を受けながら門をくぐり、建物へと歩いて行く。


 中はまさに石造りの城となっていて、色とりどりの服を着た人々や鎧姿の騎士が行きかっていた。


「かなり女性が多い様に見受けられるんだけど?」


 俺はユージンにそう尋ねたが、答えたのは騎士であった。


「それは当然であろう。相手は魔族だ。男は連れ去られオモチャとして弄ばれる」


 はい?それ、どこのアマゾネスですか?


 ふとユージンを見れば目を逸らされてしまった。


「女のみでは戦力として足らん故、男も駆り出してはいるが、本来であれば神殿が召喚など行うべきではないのだ。そう言う事は修道院に任せておけば良いモノを」


 そう言ってどこか憂いた目を俺に向けてくる騎士。


 魔族とは、身長が2メートルを超える巨人族で筋骨隆々の戦闘部族だそうだ。その上、嗜虐的な嗜好でもあるのか、とにかく男を弄ぶ習性を持っているらしい。地球のファンタジーでは女性が弄ばれるのがお約束なのだが、ここでは逆であるらしい。


「相手がそこなヤツの様な者たちならばまだ救いもあるだろうが、醜悪なバケモノでは救いも無かろう。連中が何故好んで男を弄ぶのかは分からんが、女も恨みがましく殺されるのだから、そう扱いが違う訳ではないのだがな」


 どうやら相手はアマゾネスの様な救いのある種族ではなく、本当にただヤバいモンスターであるらしい。



 

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