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18・俺、もっとヤバいモノを見つけてしまう

 結論から言おう。そこに居たのは世紀末のギャング団である。


「ヒャッハー」という吹き出しをつけておけば間違いない。よく見れば美少女や美女だと驚いてしまうだろうが、そんなことは些末な問題に過ぎない。

 そう呆れてしまうほどの力押し、野蛮な攻撃法。

 棘の付いた鎧でもって体当たりしてみたり、釘バットか鬼の金棒かと言う様な刺々しいメイスを振り回す姿は、聖女という名からは途方もなく遠かった。


「あれが聖女隊なのか」


 その姿を見た俺は、そう呟いた。


「思い描いた清廉でスマートな戦いぶりからはほど遠かろう?」


 姫様がそう笑う。その通りだ。


 もっとこう。レイピアの様な細い剣を持って綺麗で軽やかに戦っている方がイメージに合う。いや、戦っている時点でどうかという話だが。


 先行し偵察していた騎士が帰って来て合流する。


「村の出入り口は、最も聖女隊が固まっているあそこです。そして、右へ回ったところにも開放された門があります。それ以外の通路にはバリケードがあり、聖女隊も薄くしか配されておりません」


 ざっと見える範囲を見渡すが、俺にはパッと判断しかねる。やはり、戦場の勘というヤツが必要なのだろう。


「もとの村内配置図がコレだな。ジェネラル、ないしクイーンが居座るとすれば、ココか」


 持って来た見取り図を開いて指し示す姫様。


「でしたら、突破すべきはこのバリケードかと」


 最短距離で村長の屋敷とみられる建物に至れる経路を示す騎士。


「そうだな。バリケードを破り、一直線に向かうか」


 姫様たちがルート設定を迅速に行っていくが、俺はとにかくそれを頭に叩き込むのが仕事である。車輪村ほどの余裕はないらしいのだから、仕方がない。


 簡単な作戦会議を終えるとすぐさま行動である。


「行くぞ、着いて来い」


 姫様は大剣を手にしてそう俺たちに声を掛けると駆けだした。


 全く俺たちに気付く気配もなくバリケードからの攻撃に反撃を加える聖女隊のヒャッハーがどんどん近づいて来る。


 目前に迫ってようやく数人が振り向いた。


 何だよ、お前らもラリってんじゃないのか?顔が怖いぞ。

 めちゃくちゃ引いた。


「そこをどけ!押し通る!!」


 姫様がそう叫べば他の面々も気が付いたらしい。


「何者だ!ここはわれらの持ち場である!」


 そう言って立ちはだかる世紀末アマゾネスを構わず体当たりで押し飛ばす姫様。俺たちも聖女隊の間をすり抜けてパリケードへと取り付いた。


「やれ!」


 姫様がそう叫ぶ頃には俺とユージンは振りかぶっていた。


 二人の共同作業でバッサリとバリケードが崩れ去り、進撃路を確保する。中にはウジャウジャと魔族の壁が見えているが構う事はない。


「突っ込むぞ!!」


 大剣を振りかぶって俺の横をすり抜けていく姫様。それに続くように俺たちも駆ける。


 豆腐でも切るかのように魔族を斬り伏せながら目的の建物へと走る。他に目をくれるにはこちらの人数が少なすぎた。


 ワラワラ寄って来る魔族を斬り、払い、叩き、とにかく建物目指して走って行けば、そう時間はかからなかった。

 まだカーネル級はこちらに反応できていない。


「ふん!」


 建物の壁へと大剣を振るい、迷いなくたたき割る姫様。流石に豪快過ぎないか?


 と言っても立ち止まれば魔族に囲まれるだけの為、俺たちはひと固まりとなって建物へと侵入していく。

 中にも魔族が蠢いており、そいつらを容赦なく斬りつけながら物色する。


 どこだ?どの部屋に居る?


 屋敷はそこまで大きいわけではない。見栄や威厳のために広くは作られているが、俺の地元にあった神社の本殿ほどの広さだ。戸や壁をなぎ倒していれば、ジェネラルらしき大物を見つけた。


「死ねや!」


 もはや冷静じゃないのはアンタだよと言いたくなる言葉を発し、姫様がソレへと斬りかかり一刀で倒す。

 しかし止まることなく家探しをしてみたが、他にめぼしい大物の姿は見当たらなかった。


「どういうことだ?他には居ないのか!」


 姫様が叫ぶが事態は好転しない。


「そろそろカーネル級に対応されます。対応される前にご指示を」


 一人の騎士が姫様に言う。この襲撃は明らかに失敗だった様だな。


「おい、幼生体を見たのはどこだ!」


 幸いなのは偵察隊を率いた隊長を連れてきている事。一応の配置や状況は彼女が把握している事を願ってだろう。姫様がそう叫ぶ。


「ここより東、東門より遠望できた・・・、ここです!」


 サッと広げた村の配置図の一点を指し示す騎士。


「ほぼ真逆かよ」


 それを覗き込んだ俺は顔をしかめた。


「仕方がない。このまま突き進み、最悪は東門を突き破って脱出だ」


 そう決断した姫様に従い、俺たちは屋敷を飛び出し東を目指した。

 関ヶ原で島津がやったという敵陣突破かよ・・・


 悲嘆に暮れながら走るさなか、ざっと見たところ魔族どもは建物を使っていないヤツも多そうだ。洞窟や洞の感覚で風雨凌ぎ程度と考えているのかもしれない。


「この先の広場です!」


 走る一団の中ほどで先ほどの騎士がそう声をあげる。


 そのまま道を進めば蠢く魔族が見え、さらにヒャッハーがすでに進入しているのか?メイスを振り回すトゲトゲ集団がその先に垣間見えた。


「妾らの襲撃でほころんだ隙に入り込んだか、面倒な!」


 それを認めた姫様も顔をしかめる。ここで言い争いは時間の無駄。いや、命取りになりかねない。


 だが、立ち止まれば周りの魔族に行く手を塞がれるため、立ち止まる事も方向転換して戻る事も出来ない。押し問答を覚悟で聖女隊を目指すしかない。


 そのとき


「はーい、僕イケメーン!超絶イケメーン。クイーンは僕だけのモノ!」


 などと言う訳の分からない狂声が聞こえた。正直、空耳であることを祈った。


 そうは思いながらもその声のした方を振り向けば、スラリとした赤ら肌の小柄な生物が目に入った。


「ドーカネ殿!」


 脚を緩めた俺に注意する騎士だったが、彼女も俺に釣られてそれを見る。


「殿下!」


 すぐさま姫様へと声を掛ける騎士。やはり、場数が違うんだろうな。


「どうした!」


「幼生体です!」


 騎士にはそう見えたらしい。


 確かにゴブリン(不成体)に近い背格好だ。だが、奴らほど体は崩れていないし、朦朧として徘徊している訳でもない。ハッキリした意識を持ち、妄言まで吐いている。俺以外の人間には単なる奇声だろうがな。


「旋回は無理だ!このまま聖女隊へ突っ込む!」


 まあ、そうなるだろう。目の前には聖女隊に押された魔族の壁、後ろからは俺たちを追う魔族の群れ。下手に迂回すれば逃げ道を失ってしまう。


「はーい、僕の元においでー」


 ヤツの周りには二メートル級の巨体が二つ見える。が、そいつばかり見ている暇なく、目の前の壁を斬り崩して聖女隊の中へと雪崩れ込んだ。

 



 

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