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1・俺、召喚されたってよ

 ふと目を開けると知らない光景が目に飛び込んで来た。


「おお、召喚者よ!」


 などと呼びかけてくる聖職者のような恰好をした男に目が点となった。何がどうなっているのか分からない。


「ん?私の言葉が分からないか?」


 などと論点のズレた話を続けている。


 そして、辺りを見回してみれば、見た事もない建物の中に居る事に気が付いた。


 ステンドグラスは見当たらないのでキリスト教の教会ではないらしい。ただ、石造りに見えるので神社ではない、光が差し込む事から洞窟という訳でもなく、何かのセットにしては大掛かりすぎる。ドッキリなどと言うには手が込み過ぎているだろうと思い至った。まあ、それ以前に一般人にこんなドッキリを仕掛ける意味が分からないが。


「ここは?」


 辺りを見回した後に発した言葉はそれだった。


「ふむ。言葉は問題ないみたいだな。其の方は私によってこことは違う世から召喚させてもらった。と言えば分かるだろうか?」


 何ともありきたりなラノベ小説にありそうな言葉を投げかけられ、再度周囲を見回すが、他の召喚者らしき人物が見当たらない。


「異世界召喚というヤツで合っている。という事でしょうか?」


 そう口にすれば、聖職者らしき人物の顔がほころぶではないか。


「そうか、やはり理解しておったか。そう!我々は異なる世から我らの望む力を持った者を召喚した!」


 聞きたかった答えはそこでは無かったが、確かにそれも疑問点ではあった。


「それならば、なぜ俺なのです?こんな中年では思うように体も動かせない。召喚するなら10代の若者が良かったでしょうに」


 本当にヤレヤレといった感想しか出て来ない。40になるような下り坂を降りている年齢の俺などを召喚して何がやりたいのだろうか。


「ふむ。それは召喚条件が其の方が最適であったからと言う事であろう。我々が求めているのはただ単純な若さや技量ではない。それが求めた条件ならば、我が世にも数多居る故にな」


 などと言い出すではないか。かと言って俺に技術や科学などの専門知識がある訳ではない。


「何、そう考え込むことはない。聖櫃を之へ!」


 聖職者がそう言えば、そそそと宗教儀式や宮廷儀式と言った仕草で何やら掲げられた箱を音もなく俺の前まで運んでくる人物。


「これは?」


「それは各国の宝剣や宝具となっている退魔の武具を呼び出した魔道具。我が神殿に伝わる聖櫃である!召喚者の望む武具を創造する力を持っており、其の方にはその力が秘められておる」


 ドヤる聖職者に少々引き気味の俺は何をどうやれば良いのか戸惑った。


「その武具と言うのは俺が使うという事で合っているのだろうか?」


 こういうラノベでは、自分が生産職として道具を生み出し活躍するのか、俺自身が戦うのか、そこは一番重要な要素と言って良いだろう。


「もちろん、聖櫃によって生まれし物は、呼び出した者にしか使えん」


 ああ、そう言う奴ね。ホント、ヤレヤレだよ。


「で、どうやんのよ、これ」


 そう零せば、箱が少し下がり、目を見張るような美少女の顔が現れた。


「箱に手を置き、あなたが望むものを思い浮かべてください」


 小声でそういう。その声はどこか少年ぽくもあり、神秘的な魅力を秘めているではないか。


 魔物を退治し、魔王を討伐するような世界なのだろう事を考えれば、剣や槍を振り回すのは怠い。魔法をどうすると言っても、それだけなら召喚しなくても出来る事だろう。バルカン砲をブッパして秒でケリを付ければ楽なんじゃね?


 そんな考えが頭を過ぎりもするのだが、目の前の美少女を見て少々悪戯心と好奇心が頭を過ぎる。


「姫騎士とか姫武将って何か良いな。君も一緒に戦ってくれないかい?」


 そう問いかければ、驚いたように目を見開く。その姿も日本のアイドルなんか比にもならない位に可愛かった。


「うだつの上がらねぇ中年にめぐって来た幸運だ。美少女とイチャコラできる役得ぐらいあっても良いよな?」


 そんな、ほの暗い欲望も込め、怠いが自分の知る中で一番のチートを強く念じながら美少女の手を取ると、箱が強烈な光を放って目を開けていられなくなった。 



「な、何が起きたのだ!」


 聖職者の叫び声が聞こえ、目を開ければ目の前には甲冑姿の美少女が見える。自分の姿を確かめれば、やはり同じ様に甲冑姿であることが確認できた。成功したらしい。


「あの、これは?」


 美少女が目を開いて自分の姿に驚きの声を上げる。


「妖鎧というものさ。普通に動かすだけで力を何倍にも増幅してくれる優れものさ」


 俺は彼女にそう、格好よく説明した。


「な、その姿は一体!?なぜ贄にしたユージンまでがそうなっているのだ?」


 聖職者がそんな叫び声を上げる。


「ニエ?」


 俺は聖職者の言葉に反応し、そう口にした。


「聖櫃が宝具を生み出すには召喚者の魔力だけでは足りず、糧となる魔力を必要とします。それを担うのが僕の役割でした」


 美少女ユージンがそう説明してくれた。


「ただ今回、僕は糧としてではなく、召喚者さまのお望みに従って供として選ばれたようにございます」


 生贄として箱を持って来たらしい天使ユージンの微笑みを見て、心のうちにあった憤りが一気に沈静化していく。


「そうか、こんな幼気な女の子を生贄にして召喚者に力を与えようとするとは、腐った連中だな」


 俺は呆れてそう言った。


「いえ、僕は男ですよ?」


 ん?

 

 はい?


 俺はジッと天使を見つめる。


 オトコって何?え?こんな天使が野郎だというのかい?いったい何の冗談だい?


「男?」


「はい。男です」


 あまりの衝撃に、この建物に居る他の連中の事などどうでもよくなってしまった。


「こんなミス・ワールドな美形の男の娘が居てたまるか!!」 

 

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