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探求者ロジタールの苦悩  作者: 石たたき
第二章 糸を引くもの
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第37話 不安と決意

 俺はどこかで、俺を取り巻くこの屋敷の現象を舐めていた。俺に備わるオートガード、もしくは謎の魔力とでもいうべき力に安心しきっていたのだ。


 もしオートガードが発動しないような非物理攻撃に襲われたらどうなるだろう。俺の攻撃が反対にオートガードで防がれたら? そもそも俺は、唯一の攻撃である衝撃波の原理も分からない。つまり、対策や向上というのがなかなか望めない可能性が高い。


 確かに攻防に長けた能力ではあるが、しかし地味、いやそれはいいが、それが封じられた場合、俺は何一つ抵抗が出来なくなってしまうのではないか。強力ではあるが単純な能力の弱点でもある。


 とはいえ、今更それを嘆いてもどうしようもない。


 とにかく、俺の見たビジョンの正体は分からないが、俺は尋常ならざる恐怖心と警戒心を抱いて、自らのふがいなさを思い知らされた形になった。


 俺はしりもちをつく寸でのところで踏ん張った。駆け寄ってきた仲間たちの顔を左右に流し見て、そして力なく呟く。


「この扉を開けるのなら、それは各自の自己責任だ。原理はわからないが、この扉はやはり開く者によって、その先、もしくは結果が異なるのかも知れない。少なくとも、俺の手では開けない方がいいと判断した」


 フィッシャーとロングランはこの屋敷が変だと知っているのもあって、この言葉と、俺の神妙な態度を見て何事か感じ取ったのか、いたって真面目な顔つきであった。


 だが。


「何よそれ、面白そうじゃない。それはそれとして、あなたは一体何を見たの? そもそも開けてもいないじゃない、おかしな話ね。あなたが開けないのなら私が開ける!」


 ルルーゼだけは顔色を明るくして、今にも扉に向かって歩き出そうとしていた。


 俺はまだ自分が感じたものへの整理がついていない。言葉、もしくは強い態度で彼女を引き留めるべきかも分からない。


 だが、「怖かった、恐ろしい何かがいるような気がした」という抽象的な表現で彼女を止めることは出来ないだろう。そういう感情に根差した言葉では納得を得られないと分かっていた。


 いわんや、彼女は俺を強者として見ている。こんなにも大胆で強靭な女性が、俺を信頼しているのだ。そう思うと、俺は自身に意地を見出すと同時に、少しずつ未知への恐怖心が薄れて来るのを感じた。


 ならば。


 現状でやるべきことは単純だ。何かあった時、俺がルルーゼをはじめとして彼らを守る、それだけだ。


「何か違和感があれば、すぐに引くんだぞ」


「な、何よ、その言い方……」


 俺は常識人であって下手な冗談を言うタイプではない。ルルーゼはそれをこの短時間でも理解してくれているからか、俺の言葉や挙動を裏付ける何かがあると察知し、改めて警戒を強くしてくれた。ただ、それが少しばかり彼女の勇気を挫いてしまったのも事実である。


 にわかにルルーゼの足が止まる。そして、再び静まり返った合間を縫うように、俺は口を開いた。


「ただ、こういう考え方もある」


 俺は改めて三人を見回して告げた。


「俺もロングランも主人という肩書を持っている。とにかくこの屋敷は全てがおかしい。その主人たる俺たち、それに加えて、純粋なこの世界の住人ではないフィッシャーは、この扉を開けるべきではないかも知れない。つまりルルーゼがこの扉を開くことで、本来この場に存在するべき屋敷に繋がるのではないか、ということだ」


「それで? これが、ロジタールの屋敷である見込みはどのくらいあるのかしら?」


「それは分からない。中に俺の仲間たちがいる可能性もあるし、これが全く知らない主人の屋敷だったり、全く知らない世界が広がっている可能性もある。そのくらいこの扉は訳が分からないんだ」


「おっと、俺の屋敷だっていう可能性もあるぜ」


 なぜかロングランが得意げな顔をして割り込んできた。


「それもそうだ。つまり、あらゆる可能性を排除できない」


 いずれにせよ、この扉を開けなければ何も始まらない。俺が感じた恐怖の正体は分からないが、そもそもそれに確証はないし、無駄に彼らの恐怖を煽っても仕方がない。


「分かったか分からないか私も良く分からないけど、とにかく私が開けるべきだと理解したわ。……それじゃ、開けるわよ」


 ルルーゼは唾を一つ飲み込んで決意を確かめた。そして扉に向き直り足を踏み出すと同時に、俺は改めてフィッシャーとロングランに目線を送った。俺の眼差しの意味する所を解し、二人は警戒心を高めていく。


 ルルーゼが扉を開く。


 扉はすっと開いた。ルルーゼの脇を抜けて、外気と陽光が館内にそっと忍び込み、屋敷内部の風景が露わになっていった。

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