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探求者ロジタールの苦悩  作者: 石たたき
第一章 封印された男
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第10話 新たな侵入口

 パーミラは慎重そうで天然のような所がある。俺たちは幾ばくか緊張感を失いつつも、そのまま手分けして館内を見回った。


「どうだった? こちらは廊下から他の室内まで、同様に少しずつ大きくなっていた」


「こちらもです。ただ、新しい通路や部屋が出来たということはなさそうですね。そういうのがあれば、何か封印の秘密に近付けるかも知れませんが」


「なるほど、俺を封じたのが人ではなく、屋敷側という見方もあるか。その観点から考えてみるのもありかも知れない」


 それから一時間ほど周囲を調べてみたが、外も含めて、目立った変化はなかった。屋敷そのものが膨張したという事実が、改めて浮き彫りになっただけだ。


 その後、朝の支度を終えて、俺たちは昨日と同じく行動を開始した。すなわち、パーミラは再び屋敷周辺の見回りと調査、俺は留守番がてら、更に屋敷内を詳しく調べる。


「人ではなく、屋敷の意思、か……」

 

 封印の対象が俺ではなく、他の何かを封印しているという可能性もある。俺がその為の生贄となって、この地に張り付けにされているというものだ。そして、俺の中の魔力のような力が作用して、その者の復活を助けるといった具合になる。


 もしそうであれば、何か得体の知れないモノに憑り付かれたようで面白くはない。俺は怪しいものを見つけ出すべく、廊下や行き止まり、部屋の細かい部分までしっかりと調べるべく行動した。


 屋敷内部の構造は至ってシンプル。一階と二階はほぼ似たような構造で、ホール、その先に階段、左右にドアがある。ドアの先には廊下が伸びて、いくつかの部屋と行き止まりがある。


 室内の様子は様々で、何もない部屋もあれば、厨房、書斎、応接室など、それらしい施設もある。


 それだけを見ればまともな屋敷だ。


 しかし、何か所か気になっている場所がある。今まではそういうものなのだと思っていたが、改めてパーミラの言葉を考えると、どうにも気になってきた。


 俺はその内の一つ、奇妙な行き止まりを頭の中に浮かべた。


 それは一階の左端。何となく半端な所で通路が切れている。さきほど、ちらりと見た時は異常はなかった。だが調べ方が足りなかっただけかも知れない。


 俺は早速その通路に向かった。


「ううむ、特にこれと言って……」


 やはりただの白い壁が押し黙っているだけだ。


 しかし。


 俺は不意に襲い来る再度の地響きを感じた。始め、それは遠い所で小さく鳴り響いているだけだったが、やがて押し寄せる波となって、俺へ迫って来た。


「お、おお、おおお……」


 俺は後ずさりしつつ、思わず自分でも笑ってしまいそうな声を出してしまった。


 何とも奇妙な光景だ。


 廊下の行き止まりの壁が後退していく。映画やゲームなどで見るギミック演出ではあるが、実際にそれを体験してみると、唖然となって体が動かない。俺は棒立ちになってその様を眺めていた。


 壁はゆっくりとした鳴動を交えながら、徐々に奥へ広がり、振動の壁が伸び、更に左右に部屋が生じていく。


 地響きが終わったあと、周囲には一転して静寂が広がった。さて、新しい部屋が二つ。何が出るか分からないが、調べるしかない。


 まずは左の部屋からだ。


 室内には長テーブルと椅子が用意されていた。それだけだ。


「晩餐会場のようなものかな」


 突如として出現したのは確かに驚くべきことだが、特にめぼしいものはない。次へ向かおう。


 だが。


 !?


 部屋を出ようとして、俺はその場ではっと足を止めた。


 ドアの向こうで、何かが動いている音がする。擦るような足取りで、力なく動いているようだ。


 屋敷への出入り口は玄関と裏口だけで、この短時間のうちに、誰かが駆けて来るにしても早すぎる。とすると一体何者だろう。隠れてやり過ごすべきか。


 しかし、これをスルーしてしまっては、得体の知れない存在が近くにいるという不安がつきまとう。今の内に確かめておいた方が、のちのち余計な心配をせずに済むというものだ。


 これまでとは違う異変を前に、用心しつつ、俺はそっと扉を開いた。


「なんだ貴様は!?」


 突如、野太い声が飛んで来た。


 扉の先の通路には、先ほどまでいなかったはずの男がいた。古の魔術師を思わせるような三角の帽子に、焦げ茶色のローブ。服装は落ち着いた地味なものだが、顔を見る限り、俺と同年代くらいだろうか。どことなく面長で偏屈な男をイメージさせる。


「お、俺はロジタール」


「ロジタール、今、ロジタールと言ったのか!?」


「そうだが、もしかして何か知っているのか?」


 俺は俺の正体さえも分からない。まさかこの男は何か知っているのかと、否応なしに期待が沸き上がって来る。

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