人は無力なの
そして俺は夢咲さんと共に夜を共にしたのだった。
ん……? これじゃあいい方がまずいか。
夢咲さんと機種変作業をするのだった。
というが流石と言うのか、俺のすることは身体を運んだりの雑用だ。
これも驚いたことだが新しい身体というのは1人一つ用意されていて夢咲家の屋敷から持ってきて運んでの繰り返しなのだ。
そして恐ろしいことに各家の鍵を夢咲家は持っているのだ。
移動に関しては夢咲はかなりの身体能力の持ち主で俺はそんなのについていけるわけなくお姫様抱っこされている。
割と作業ゲーでよく飽きないな、と少々感心する。
初めは人ん家に不法侵入するのは気が引けたがだんだん慣れてくると何にも思わなくなるのは不思議なことだ。
それにたまにテレビで見るような著名人がおり少しいい気分だ。
そうしていくうちに時間は流れていった。
「ここで最後かしら?」
「いいよな、夢咲は凄い力が使えて」
男として憧れる一度は何かしらの能力を扱ってみたいと。
「そうかしら? 私は今までこんな力持っていてよかったなんてことはなかったけれど。むしろこんな力さえ無ければと思うことがあるわ」
夢咲さんは悲しい表情を浮かべる。
「ねぇ、知っているこの力の代償を?」
「魔力とかか?」
「そんなのあるわけないじゃない。寿命よ寿命」
「寿命?」
「そう寿命。私はこの力を使うごとにほんの少しずつ寿命が縮まってきているの」
まあ確かにそのくらいの代償がないとその力は扱えないか……。
「ごめんなさい、少し話しすぎてしまったわ」
「うん、まあ」
「さあ、最後よ。気を抜かず頑張りましょ」
そう呟き夢咲さんは慣れたように男性に手をかざす。
すると不安の表情を顔に浮かべた。
「おかしいわ記憶の移動ができないわ」
「どういうことだ?」
「つまりこの人は起きているということよ」
俺は息を呑み、男の顔を見る。
夢咲さんは咄嗟に『フリーズ』と叫び男を固まらせる。
「おいおい、人がゆっくりしているところでなんだお前らは?」
男は半身が凍っているのを気にする様子もなくゆっくりと立ち上がったのち、後ろ髪をぽりぽりと掻いている。
「やっぱり、あなたチェンジャーね?」
夢咲さんは男を見てそう言う。
「それを知っているということは、お前もそしてそいつもってことか?」
「そうよ、あなた現家の者でしょ」
仕事へ行く前に雷音さんに言われたこと、現の人間とあえば何がなんでも逃げろということ。なんでも不要な記憶を利用して武装組織を作ろうとしているんだとか。
「おっ、俺を知っているのか? そう、俺は現 暖」
堂々と名乗る男にプライバシーとかはないのかと、突っ込みたくなる。
「そう……『フリーズ』っ!」
夢咲さんは容赦なく攻撃を放つ。するとつららが男目掛けて飛んでいく。
「くっくっく、相性が悪かったな嬢ちゃん」
しかし男はなんともなく、余裕すら感じる。
「何をしたのよ!」
夢咲さんは今までになく焦っている。
「お前、氷だろ? 俺は……炎なんだよ! 『バーン』」
そう叫んだ男から炎の渦が飛んでくる。
夢咲さんは咄嗟に氷の壁を作りそれを防ごうとするが氷は溶け炎は夢咲さんを呑む。
「はぁ、あぁ」
夢咲さんは火傷を覆い、肺に何か入ったのか荒い呼吸でなんとかたっている。
残酷な戦いを目の当たりにして、俺はなんとなく悔しくなった。
それは夢咲さんが劣勢で殺されかけているのもあるが、一番は自分の無力さだった。
生まれた頃から特殊能力なんて持ち合わせていない、だから戦う義務もないはずだ。でも悔しいのだ、目の前にいる1人の女の子を救えない自分が嫌いになりそうだ。
身体は震えて汗も止まらない。
目の前の女の子はあんなに必死になっているのに。
男は夢咲さんに容赦なく炎を放つ。
久しぶりに俺の目からは涙が出た。
気づけば俺は倒れ込む夢咲さんの前に立っていた。
「これ以上、彼女を傷つけないでやってくれ」
「待って水原くん、あなたが太刀打ちできる相手じゃないわそいつは」
夢咲さんが何かを俺に訴えているが何も聞こえない。
「ほう、次はお前が相手か、一体どんな能力を使うんだ」
俺は男へ向けて走る。拳を握り。
そして俺は男の右頬を殴った。男はふらっと避けて、笑い始める。
「なんだよ、無能力者かよ!」
男は俺に炎を放つ。
熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い。その単語だけが脳内で流れる。
それでも俺は立ち上がり拳を握った。
そして男の横腹を殴る。
するとカウンターなのか男は俺の顔面に炎を放った。
そして俺は耐えきれず倒れた。
やっぱり無力であった。
でも少しは時間を稼げたかもしれない。
俺は雷音さんにメールを送った。
雷音さんならすぐきてくれると思って。
「お待たせ」
雷音さんだ。
「くっ、夢咲雷音か。仕方ないここは一旦引くとする」
すると暖は逃げ去っていった。
「ひどい火傷だな2人とも。早く治療し無ければ」
私は助けられた。確かにお兄さまのおかげで助かったが。多分お兄さまを呼んだのも水原くんでその時間を稼いだのも水原くんだった。
「れいちゃん。ずいぶん嬉しそうな顔だな」
私は意識を失った肩に寄りかかる水原くんを撫でる。
不覚にも私はあの時、水原くんをカッコいいと思ってしまった。
とりあえず完結です。また気が向いたら続き書きます。




