あなたの子供はもういないのにね。
カッコウ カッコウ
森の中に響き渡る、カッコウの鳴き声。
今年もまた、カッコウが来た。
格好の巣を探して、カッコウが飛び回ってる。
森の真ん中。
卵を巣に産む、親鳥。
カッコウは、この親鳥に卵を託すことに決めた。
カッコウは、親鳥が不在の巣に降りる。
そしてそこから…
───…パキャッ。
巣からひとつ、卵を落とす。
卵ひとつ分空いたところに。
ころり ころころ
カッコウは、自分の卵をひとつ産む。
元気でね、愛しい子供。
沢山可愛がられて、大きくなってね。
カッコウは卵に声をかけてその巣から離れる。
可愛い可愛い我が子たち。
だいじにだいじに育てるね。
巣の主の親鳥は、ひとつの命が奪われたことも知らず。
そして、知らぬ鳥の子が混じってることにも気づかず。
せっせと卵たちを慈しむ。
しばらくして。
卵から子供が産まれてくる。
カッコウの子供が先に、産まれてくる。
産まれたカッコウの子供は、他の卵を背に乗せると──
─────…パキャッ。
─────…パキャッ。
─────…パキャッ。
自分以外。
この巣の本当の卵を、巣から落とす。
コワシチャウ。
巣には、カッコウの子供だけ。
この巣の本当の卵は、もういない。
可愛い可愛い我が子。
気づいたらあなただけになっちゃったね。
あなただけでも…だいじに育てるね。
親鳥は、だいじにだいじに育てる。
我が子はもう、いないのに。
偽りの子を…
カッコウの子供を我が子と思い、可愛がる。
カッコウ カッコウ
自身とは違う鳴き声の子。
可愛い可愛い我が子よ。
私よりもおおきくおおきく育ったね。
生き残ったのはあなただけ。
愛しい愛しい我が子よ…
カッコウ カッコウ
カッコウ カッコウ……
実際のカッコウの特徴をもとにした詩です。
「托卵」といって、カッコウは卵を産む時期になると、他の鳥の巣に卵を産んで育ててもらうみたいなのですが~…
知らぬ間に自分の子供が居なくなってて、他人の子供を育ててるって…怖すぎる……m(_ _)m
衝撃的すぎて、詩にしてしまいました…汗
お読みくださりありがとうございました。