第2話 檻の中の鳥
朝6時丁度にラッパの軽快な音が鳴り響き牢屋内にベットの軋む音が響き奥から叫び声が聞こえる。
「起床ッ!」
「ほら、勇者ちゃん起床だぞ」
「もう少し寝てたいんだけど」
「早く起きないと冗談抜きで拷問されるぞ」
ラネルが私にだけ聞こえる声で忠告してくるが一体、起きないと拷問てなんの拷問だよ?
水滴を額に落とし続けるヤツ?それとも、電気椅子?
「イヤァァァアア!」
「なっ!なんの声⁉︎」
突如、隣にある牢屋から叫び声が聞こえベットから跳ね起き隣の牢屋を見たがそこには見せしめのように通路で触手の魔物に蹂躙される少女の姿があった。
「さっさと起きればいいものの・・・・1−2室は全員いるか。次!1−3整列」
「何、この甘ったるい匂いは」
「勇者ちゃんこの匂いはあの触手の分泌する催淫効果のある粘液特有の匂いだ。ああやって規則を破れば有無を言わせず魔物による蹂躙が待っているんだ・・・・」
「わっち達も抵抗したでありんすが捕まったら最後魔物が満足するまで弄ばれ女の威厳を削がれてしまうでござりんす・・・ジュル」
「あれは本当に不快で2度と受けたく無いっす」
三人の汚物を見るような視線の先にはいまだに亜人の少女の肢体を肉に群がる肉食獣のように陵辱し続けていた。
「朝礼に行こう」
「わかりんした」
「行きたく無いけど行くしか無いっすよね」
「了解〜」
解錠された牢屋から次々と女性が出ていく中私達は1番最後に牢屋を出てレンガの冷たい廊下を歩いていく
勿論、私の前を歩いて行った他の奴らは犯されている少女には眼もくれずに向かっていった。
「は・・・ジュルッ・・・・ふぉ・・・ジュズズズ・・・へへ」
「ん」
私は誰も認識出来ない速度で魔法を発動し彼女に巻き付いていた触手の本体の内臓を風魔法で切り刻んだ。
ドゴスッ!
「ぐッ・・・・大量の魔法覚えててよかった」
代償として私も威力順の魔法攻撃を喰らったがまあ、少女はへたり込んでいるが数分もすれば復帰できるだろう
此処に来てからケル達の姿が見えないが私は飛んできたので翌日到着できたが五人は馬車移動なのでザッと5日くらいはかかりそうだよね
十
キリストリアス皇国の道中にある街にてケル達はキリストリアスの教皇キルサスト・L・リビディネイトについて聞き込みをしていた。
「と言う事なんですけど何か有益な情報を知りませんか?」
「う〜ん・・・・私も世界中を飛び回りその手の噂話は山ほど耳にしましたが教皇様の黒い噂は聞いた事がありません。何しろ、教皇様は神託だけを発表する以外の事は何をしているのかは謎である謎多き人物ですからね・・・・・でも、一つだけ聞いた事があるのは“キリストリアスには亜人や犯罪奴隷が集まっている”という噂なら聞いた事がありますぞ」
「他にはありませんか?」
商人はケルのさらなる問いの答えを探るように腕を組み唸ると突然、ハッとなり話し始めた
「思い出しました!何しろその奴隷全てが“女性”である事と他に入国した女冒険者や女商人が突如消息不明になるとか」
「女性だけが消息不明・・・・・」
「皆様もお気を付けて・・・・それでは私はこの辺で」
「ありがとうございました」
ケルは走り出した馬車に乗った商人にあたまを下げその場で考えを巡らせた。
『女性のみを狙った人身売買と誘拐疑惑・・・・・一体何が起きているの』
広場に湿度のあるジメッとした生暖かい風が吹き抜けた
「嫌な風ね・・・・嵐にならないと良いけど」
その日の夜は大荒れとなり2日ほど出発が延期された
その期間もケルは自身の胸に針を刺されるような痛みと荒れた海のように大きな不安の高潮が渦巻いていた
✖️
牢屋生活も一週間が経過しこの監獄の内部構造は全て把握出来たのでいつでも脱獄は可能なのだがしない理由は一つ
『監獄の外に出るには中庭が一番良いけど厚さ100センチの強化ミスリルの壁と結界の破壊と見回りをしている魔族と魔物の討伐をしないといけないのは流石に骨が折れるかな・・・・・だからと言って内部からコッソリとってなると罠の存在があるけど【罠感知】は使用不可ときて罠の発見、解除を得意とする【風水師】が一人欲しいが今の所【風水師】はいないみたいだし・・・・・どうしたものか』
全てのプランを遂行するには【罠感知】を使えるようにする又は【風水師】を味方に付ける事と雑兵を一掃できる高火力アタッカー【狂乱戦士】などの前衛職と【魔術士】などのサポートアタッカーが必要不可欠
「消灯だ電気消すぞ」
「「ほ〜い」」「ええ」
戦闘になっても四天王を一人〜二人で屠れる人材も必要だ。
ケル達が今も此処に向かっている可能性があるが【思念波】も使えないので今の状況も知らせる事も出来ない。
完全に”詰み“と言うやつだ
後は健康の問題だがそれに関しては問題は無かったのは不幸中の幸いだ【色欲】さんは痩せこけた薄汚い女には発情しないノーマル性癖者でよかったと思う。
食事はバランスよいメニューであり体力作りの運動、仕事などと非人道的な扱いはされなかったし娯楽もある程度充実している
お陰様で戦闘になっても体調不良で体が動かないという最悪な事にはならなくてすみそうだ。
運良くケル達が同じ牢屋に収監されれば脱獄計画は順調に進みそうだ。
もう一つのパターンとしてケル達が【色欲】を倒すと言うパターンもあるが成功率は限りなく0%だろう
「賭けてみるかな」
「どうかしたか勇者ちゃん」
「いや・・・・なんでも無い少し考え事」
私はそのまま眠りに落ちた
眠りに落ちる一瞬だったが知らない気配が現れて消えた気がする
0
「アスモデウス様只今、帰還いたしました」
「ストーキングか・・・・・【賢者】の動きはどうだった」
「賢者一行は此方の情報を中間地点の街であるカルフィで収集していましたので商人に成りすまし接触致しました」
「それで・・・・」
「虚偽の情報を握らせ今は【侵食】のストームの巻き起こした嵐により2日ほどの足止めに成功いたしました。到着予定日は8日後になるかと」
「よくやった下がっていいぞ」
「御意」
風切り音がし人影が消えたその瞬間にもう一つの気配がアスモデウスの背後に現れた
「ミラージュか【勇者】の様子を報告してくれ」
「はい、【勇者】ユーは脱走を企てているようですが【風水師】が発見できずに頓挫しているようです」
「それの事なんだが【賢者】を捕らえた後に【風水師】を隣の牢屋に収容しろ。下がっていいぞ」
「御意志のままに・・・・失礼致します」
誰もいなくなった空間にアスモデウスは高らかに邪悪な笑い声を上げた
「【勇者】は世界の意思であり世界そのもの・・・・【勇者】の力もユーとストックの奴も含めて100人目・・・・我糧となれ小枝達よ」