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晶紀

晶紀―――


私は清香の事が好きだった。だからいちばんの仲良しでいたかった。私を優先して欲しかった。弱い私の側にいて欲しかった。それなのに…。


清香は中学校に入ってからできた友だちだ。趣味も合うしとても居心地がいい。遊びに行く事も多かったし、勉強で分からない所は教えてくれるし、私の言うことは何でも聞いてくれる。


私は1人で行動できない。だから色んな子に声を掛けて仲良くなる。

清香は私の家みたいな存在。

疲れたら帰ってきて休んで、また友だちの所に出掛けていく。

一度清香にその話をしたら、

「何それ?」

って呆れたように笑ってた。


私は友だちが沢山できた。毎日色んなグループで楽しんでいる。

清香はマイペースだから休み時間も1人で本を読んでいたりする。

清香が1人なのはいいけど、清香に話しかけるクラスメートは許せない。そんな時は清香を無理矢理引っ張って教室から連れ出す。

「今、みっちゃんと話してたのに。」

「いいの、いいの。みっちゃんみたいに嫌われてる子と話してると清香の価値が下がっちゃうよ。」

「みっちゃん、普通にいい子だよ。」

清香にイラつく自分がいた。

「ねえねえ、今日帰り買い物行こうよ」

「いいけど…」

清香の友だちは私だけでいい。


帰りに駅ビルを2人でブラブラした。

アクセサリーを見ながら、

「ここのアクセサリー可愛いよね。私は好きじゃないけど…。」

と適当に話す。


清香とは毎年誕生日プレゼントを交換している。いつもお互い欲しい物をリクエストしてプレゼントしあうけど、今年は私が好きじゃないあのアクセサリーにしよう。清香なら何でも喜ぶだろうしね。


「そういえばもうすぐ修学旅行だね。晶紀と一緒に回れたらいいな。」

私はそれには答えない。

「晶紀は友だち多いもんね…。」

清香が少し寂しそうに言う。

もっと私といたい、私と修学旅行回りたいって言いなさいよ。そしたら一緒に回ってあげるのに…。

「一緒に回ってくれる人、自分で探すね、困らせてごめんね、晶紀」

私は目の前が真っ暗になった。でも清香に友だちなんていないでしょ。どうせ私に泣きついてくるに決まってる。


清香は知らない間にみっちゃんと男子と修学旅行を回る約束をしたみたいだ。楽しそうに予定を考えてる。

私はというと、周りの子は私と清香が修学旅行を一緒に回らない事が不思議なようで、喧嘩したの?とか聞かれる始末。挙げ句の果てに修学旅行の班も結構決まっていて私は何とか人数の足りない所に入れてもらえた形。何で私がハブられた感じになってるの?清香がもう少し私にちゃんと頼んでくれたら修学旅行一緒に回ってやったのに。


それからの私は意地になっていった。

清香が誰かと話してたら無理矢理トイレに連れていった。

清香の前で他の友だちと遊ぶ約束をした。清香も

行きたいって言えば、連れていってやるのに。

夜も遅くまで通話した。成績が下がればいい!

学校から、清香に届いた書類も無理矢理取り上げて開封した。

「止めて!お母さんから頼まれた大事な書類なの!」

清香が怒った。怒ったのを見たのは初めてかもしれない。

清香は床に散らばった書類を拾っている。

「ごめん…。」

清香は返事をしない。

少しやり過ぎたかな?


「晶紀はさ、清香の事超好きだよね?」

「え?」

日曜日、友だちと買い物してるといきなり言われた。

「大好きな清香がみっちゃんとか他の子と仲良くしてるからヤキモチやいてるんでしょ?」

「そ、そんなことないよ。確かに清香とは仲良しだけどさぁ。」

「晶紀は清香には超強気だもんね。私が清香だったらとっくにキレてるよ。清香だから大丈夫なのかも。2人いいコンビなんだから大切にしなよ。あんな良い子いないよ。」

私は全身がカーッと暑くなるのを感じた。

私はアクセサリー屋に入り、ブレスレットを購入した。私の嫌いなアクセサリー屋で…。


「清香、誕生日おめでとう。これプレゼント。」

「ありがとう…」

清香はアクセサリー屋の紙袋を見て気付いたようだ。

「晶紀、プレゼントありがとう。選ぶの大変だったでしょう、晶紀の嫌いなお店で…」

そういう清香の目にはもう私は写っていないように見えた。私に対して何の感情もない目だった。

私、プレゼント上げたのに喜んでもらえてないの?

友だちだからプレゼント渡したのに…。もっと有り難く思いなさいよ!


この日から清香からの接触は無くなった。お昼も誘いにこない。休み時間も話にこない。清香と話さない私の事をみんながコソコソ言っている。清香には私しかいないと思っていたけど、私以外の友だちが男女問わずいる。見ているととても楽しそうだ。そこに私の入る場所はないけど…。何で私がこんな惨めな思いしないといけないの?休み時間1人で過ごさないといけないの?


次の日、私はクッキーを焼いて学校に持っていった。友だちに一通り配り終えて最後の1枚が残っている。

「清香~、これ余ったからあげる~」

私はそのクッキーを思い切り清香にぶん投げた。いきなりの事に清香は避けようもなく、クッキーは清香の顔に当たってしまった。

クッキーは割れてしまった。

清香は落ちたクッキーを拾うと氷のように冷たい表情で

「いらない。」

と言って返してきた。

「ごめんね、わざとじゃな…い。」

清香の顔を覗き込んだがそれ以上言葉が続かない。

清香は怒ってる。こんな表情の清香は見た事ない。もう無理だ。私は背中に冷たい汗が流れるのを感じた。


「晶紀~、あんたやり過ぎ。清香の事好き過ぎて拗らせちゃったね。大事なんだったらもう少し大切にしなよ。」

「何よ。」

「私らのグループだって清香の気を引く為に近付いてきたんでしょ?」

「そんなことないよ。」

「清香を1人ぼっちにしたり、まぁ、清香は気にしてなかったみたいだし、晶紀がいない間に友だちも沢山出来てたみたいだけど。」

何で?清香は私がいないとダメなはず…。

「とりあえず晶紀はもう無理。最悪ストーカーになっちゃう。もう話かけないでね。」

女子が蜘蛛の子を散らすように、教室の方々に散っていく。そしてまたグループになって楽しそうに話し出す。清香もこっちを見ようともしない。

清香ならまた友だちになってくれるよね?だって優しいもんね?

清香に近付こうとした時、みっちゃんが私に近付いてきた。

そして耳許でそっと

「晶紀のしてきた事は全部聞いてる。ただのいじめだよ。」

と言われた。

いじめ?何処が?何が?

私はただ清香と友だちでいたかっただけなのに…。少しだけ優位に立ちたかっただけなのに…。


その日から私の教室の居場所は失くなった…。


また友だちは出来るかもしれない。でも清香みたいな友だちとはもう出会えないかもしれない…。

また清香と仲良くしたい。今度は大切にするから…。

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