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見えない服を売る仕立て屋  作者: 北田 龍一


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お買い物

 ある日、小さな国の王様がいました。

 王様は小さくとも、立派な王城に暮らしていました。しばらく戦争もなく平和な王城は、それでも綺麗にされていました。


「あぁ、ありがとうなぁ……助かるよ」

「いえいえ王様、これが我々の仕事ですから」

「うんうん。私にはよくわからないが、きっと必要な事なんだろう。よろしく頼むよ」


 王様は、あまり頭の良い人ではありませんでした。何年も、何十年も、何百年も戦争が起きていないその場所で、立派な城を守っていました。国の大臣さんは、王様にこう言います。


「王様、しばらく戦いは起きていません。あまりお城に金を使わなくてよいのでは?」


 王様はうーんと唸って答えます。


「そうかもしれないねぇ……私はあまり、周りの事はよくわからない。きっと大臣の方が、私よりずっと頭がいいんだろう。多分大臣の言う事は、正しいのだと思うよ。大臣なりに、国の事を心配してくれているのもわかる。無駄使いは良くないからねぇ」

「勿体ない言葉です。王様」

「うんうん。でもねぇ……私みたいに賢くない人には、立派なお城があると安心できるものなんだ。いざとなっても安心だと、分かりやすい物がある……みんなが賢くなれる訳じゃないから、目に見える分かりやすい安心は、必要な事だとも思うんだよなぁ……」

「なるほど……」


 王様は確かに、あまり賢い人ではありませんでした。けれど時々こんな風に、周りを「はっ」とさせることを言うのです。だから王様より賢い大臣や兵士たちも、不思議と王様の事を支えたいと思えるのでした。

 そんな王様の下にある日、一人の仕立て屋がやってきました。

 その仕立て屋は、今までも色んな王様の所に出向き、服を売ってきた仕立て屋のようです。色々と華やかな衣装を並べ、王様に衣服を進めます。その中で一つ、とっておきがあると言い……仕立て屋は豪華な箱を引っ張ってきました。彼はこう言います。


「実は、この箱の中には……特別で、とても華やかな衣服が入っているのです」

「はぁ……どんな服なんだい?」

「この服はですねぇ……愚かな者には見えず、賢い者には見える特別な服なのですよ。きっと王様は偉大で素晴らしいお方ですから、とても気に入ると思いますよ……」


 そうして、ゆっくりと箱を開いたのですが、王様の目には何も見えませんでした。仕立て屋は手を揉み、どうですかと尋ねてきます。王様は困ったように頭を掻いて、素直に言いました。


「まいったなぁ……全然服が見えない」

「…………えっ?」


 仕立て屋さんは、何故かぎょっとしています。王様は気が付かずに、仕立て屋さんに話しました。


「すまないねぇ仕立て屋さん。私はあまり賢くないもので……いつも大臣や兵士たちに、助けられている身なのです」

「え、え、そう……なのですか」

「ははは、そう畏まらないで下さい。私に服が見えたら、あなたの言葉が嘘になってしまいますから」

「ははは……な、なるほど……」


 何か焦りを見せる仕立て屋さんですが、やはり王様は気が付きません。見えない服を眺めていた王様は、うーんと唸って首を振りました。


「仕立て屋さん。申し訳ないけど、私には服が見えないからなぁ……素晴らしい服なのかもしれないけど、見えないのでは確かめようがない」

「む、むぅ……い、いえ! でしたら半額! 半額でお売りしましょう! どうです!?」

「う、うーん……それなら、まぁ……」


 と、強引にオススメしてくる仕立て屋さんに押され、王様はその服を購入しました。早速仕立てて貰いますが、服の見えない王様は上半身が裸に見えてしまいます。王様は顔を赤くして言いました。


「うーん……これは中々恥ずかしいね……」

「お、王様にはそう見えるのでしょうけど……私としては、とても立派な服を着ておられます。とてもお似合いです」

「そうか? そうだといいなぁ……」


 そうして、愚か者には見えない服を売りつけた後、仕立て屋さんは次の国へ、そそくさと商売をしに行きました。一方王様はその服を着て、城に暮らすみんなの前に現れました。大臣も、兵士たちも、料理番のみなも、上半身が裸に見える王様にびっくりしました。


「王様、どうして服を脱いでおられるのです! 早くお召し物を! 風邪をひいてしまいます!!」


 王様は困ったように言いました。


「そうかぁ……君たちにも見えないかぁ……」


 とても残念そうな王様は、その仕立て屋の話をみんなにします。王様はこう続けました。


「私よりずっと賢い君たちなら、服が見えるかもしれないと……そう思ったのだけどなぁ……」

「王様……残念ですが、我々は誰も『賢い者だけに見える服』が見えませぬ。まさかその仕立て屋、王様を騙したのでは……?」

「いやいや、だったらいくつもの国で、服を売って周りはしないだろう。そこの所、どうなんだ大臣」

「間違いなく有名な仕立て屋ですな。しかし……これは調べた方が良いかもしれません」

「う、うーん……どうなんだろうねぇ……そうだ、一応民の皆にも、見せた方がよいと思うのだけど……どうかな?」

「恥をかく事になるかもしれませぬぞ」

「でも……もしかしたら服を見れる人が、いるかもしれないじゃないか」


 裸を見せびらかす事になってしまうかもしれませんが、王様の言う通り、服を見ることが出来る人も、いるかもしれません。もし本当に服があるなら、仕立て屋さんを責めるのは悪い事になるでしょう。

 いろいろと考える事はありますが、王様本人の気持ちは固いと知り、大臣たちは王様の、思い通りにやってみる事にしました。

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