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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

今日も、来週も、そのまた来週も、一緒にさつまいもカレーを食べよう

玉ねぎと、にんじん。それにさつまいも。梨華は買いもの袋の中身を確認する。・・・・・・うん。これで全部だ、大丈夫。よし、と自身を鼓舞するようにうなずいて駅へ向かう。

いつもの材料を持っていつもの時間、いつも通りに向かっているはずの梨華の心中は穏やかではなかった。脈は忙しなく、早く早くとせき立てる。それに引っ張られるようにして向かう先は、待ち合わせ場所の駅だ。同じゼミ生の沙織の家に行くところだった。


週に一回、土曜日には梨華お手製のさつまいもカレーを振る舞いに沙織の家を訪れるのが二人の常だ。そしてそのまま泊まり込んで、日曜日はだらだらと過ごすのがいつものことなのだが・・・・・・今日は、どうだろう。

もしかしたら、いや、たぶん、最後のご飯会になるかも。そんな暗雲立ち込める梨華の心中を知らず、晴天が綺麗に拡がっている。


「あっ、梨華! 待ってたよぉ」

「沙織、もーちょっとマシな格好してきなよ。駅前だよ?」

「いーのいーの、どうせあとコンビニ寄って終わりなんだから」


楽しげに笑う沙織は、上をジャージ、下を短パンという完全お家くつろぎモードといった服装だ。そんな着飾らない彼女が魅力的ではあるのだが、それにしても、だ。

しかし、そんな格好ながら緩く結った茶髪がふんわりとウェーブがかっていて可愛い。短パンからのびるすらっとした足は、同性でも見とれてしまう綺麗な脚だ。梨華はそれを見る通行人たちの視線を遮るようにして立ち、「じゃあ行こっか! 」と手を引いて歩き出す。


いつも立ち寄るコンビニでホタテの貝柱のおつまみと、カルパスを買う。お酒はなし。一つずつジャンボフランクを買って、食べながら歩く。二人で片方ずつ買物袋の持ち手を持って、のんびりと話をしながら。

コンビニを出るといつの間にか太陽が傾いて、橙色に衣更えをしていた。オレンジ色の世界が温かく広がっている。ぽかぽかと温かな温度に、なんだか安心感を覚えてつい、言葉が飛び出た。


一瞬のような、永遠とも思えるような静寂。怖くて沙織の方を向けない。・・・・・・どうしよう、どうしよう。ここで言うはずじゃなかったの。ほんとは、カレーをふたりで食べて、その後、ゆっくりしながら、ほんとは。


「梨華」

「・・・・・・」

「梨華。こっち向いてよ。」


沙織の言葉に、動きたくないと叫ぶ首を無理矢理動かして隣を見る。鼓動は静まり返って、めまいがする。ぐらぐらと揺れる視界と浅い呼吸の中仰ぎ見た沙織は暖かく橙色に染まっていた。


「わたしもだよ」


道端だなんて関係ない。二人して抱きしめあって、苦しくなるまで口をふさいだ。抱きしめた体は夕日のせいだろうか、それとも自分自身が熱くなっていたからだろうか。

ぽかぽかと熱く、熱く感じた。

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