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実は僕ーー

「サンガツ君、引かないの?」ネコが顔を覗いてくる。近い近い、睫毛長い、いい匂い。

「ごめんボーっとしてた」走馬灯か何かのように、ネコとの思い出が蘇って来た。やっぱり死ぬのだろうか俺は?

 受け取ったスマホの画面に表示される10連ガチャのボタンを押す。水晶玉が金色に輝き始める。一度金当たりが出た時にも同じ演出があった。

「きた! 確定演出! 流石金率アップ!」つい興奮して叫んでしまう。しかし、このガチャの問題はここから。内容次第では気分が天から地に落ちる。頼むぞマジで!

 赤『北海道の危機』白『隣の女の子の消しゴムを拾う』白『新たな性癖の獲得』白『上を向いて歩こう、涙が零れないように』緑『長髪からの挑発を受ける』

 六連目にして、水晶玉が今までにない輝きを放っている。金当たりの確定演出。次の内容が俺の確定した未来。ギャンブル。内容が良ければ喜び、悪ければネコに慰めて貰おう。少し手先が震えながら金当たりの内容を確認するために、えいっと、画面にタップ。


金『ジャンケンで勝てる』


「…………」最初はグー

「…………」ジャンケン

「「ポン」」ネコ『グー』俺『パー』

「やったー勝ったー」

 画面をタップ。銀『告白が成功する』

「好きです!」「ごめんなさい」「俺がジャンケンで勝ったら!」「嫌だ」「じゃあ、せめて野球拳を!」「一回だけね」「ポン」ネコ『チョキ』俺『グー』

「よっしゃああ!」今月一番の感嘆の叫びを上げる。

「はい」髪から、ピンどめを外してネコは俺に渡す。受け取る。

「じゃあ、もう一回」手をグーにして次の戦の準備。負ける気がしない。

「一回だけって言ったでしょ? ほら全部引いてしまってよ」

「嘘だろ?」「ホントだよ」「一回って、ジャンケンが一回なの?」「うん」絶望。

 とりあえず、戦利品としてピンどめをポケットに入れて8連目を回す。ガチャとは関係ないところで気分が天から地へ落とされた。

緑『ピンどめを貰う』

「すごーい、5%の確率で当たったー」今日は占いの当たる確率がいい。それが別に運が良い事とは繋がらないのが悲しい。むしろ、必要ないところで運を使い果たしている気がして勿体無い気分。ただ、俺への占いが当たる事で10%の確率で起こる『北海道の危機』が気持ち減っている琴だけが救いである。本当に気持ちだが。当たったら何が起こるのだろうか? 9連目。白『新たな性癖の獲得』

「被っちゃったか。残念だったね」

「これって確率が倍になったりする?」

「しないよ」心底よかった。これ以上性癖が増えてたまるか。

 最後、10連目。確定演出特になし。普通の水晶玉が画面に表示されている。すでに金当たりが出てしまっているから仕方ない。最後の占いを押す。白――の表示が変わり、水晶玉が光を放つ。初めての演出だ。

「え? 何これ?」「リターン確定演出」「金が出るの?」「出るよ」


金『運命の出会い』


「好きです」「ごめんなさい」ネコは運命の相手じゃないみたいだ。

 まあ、出会いと言うなら、俺とネコは既に運命の出会いを果たしていると言っていいだろうから、俺とネコにこの占い結果は関係ないのか。

「そうか、よかったよ……」ネコはホウレンソウのお浸しを摘んで食べる。

「何がよかったんだ?」弁当に残った最後のから揚げを口に放る。

「…………」

 ネコは何も答えない。よかったと言いながら寂しそうな顔をしているのが気になる。

「君は僕のどこが好きなんだい?」

「顔が可愛いのと俺と普通に話せるとこ」

「正直だね。サンガツ君は」ネコは笑う。可愛らしく笑う。天使かもしれない。

 ネコも最後のプチトマトを口の中に入れた。一番好きな野菜が確かトマトだって言っていた。ネコは好物を最後まで残すタイプらしい。

「僕はね。サンガツ君の事が――好きなんだ」

「ふーん」

 ぼくはねさんがつくんのことがすきなんだ? 僕はね、三月君の事が? 好き?

「え、急にびっくりして告白がどうして!?」

「何を言ったのか分からないよサンガツ君」

 動転しすぎて混乱中。

「アーユーラブミー?」

「文法間違ってるよ?」高校生にもなって恥ずかしい。

「アイラブユー?」違うこれじゃ尾崎豊だ。今だけは聞きたくない。

「ミートー」肉かな? ベジタリアンでしょ? それとも、技術経験点を多く使用するミート? ある意味そうかも。ネコは俺の大事なものをミートさせました、それは俺の心です。……いやいや、ME TOOってアナタ。

「ネコ、俺の事好きなの?」

「そうだよ」軽い返事だな。

「じゃあ、俺と付き合ってください」

「ごめんなさい」なんでだよ。

「なんでだよ」不思議過ぎて心中合わせて二回言ってしまった。

「実は僕はね、君の顔がそんなにタイプじゃないんだ」

 その急なカミングアウトなんなん? MP(メンタルポイント)が尽きちゃうよ?

「顔がタイプじゃないから俺と付き合えないって事なのか?」ネコは首を振る。

「僕はサンガツ君じゃないからね。顔よりも性格で男を選んでいるつもりだよ。まあ、君は性格も大分酷いけどね、あはは!」

 珍しく声を出して笑っているが。俺の事を好きだと言って有頂天にさせてから落下させる作戦だろうか。高く上がれば上がるほど落下のダメージは大きい。

客観的に見て性格が悪いのはネコの方では?

「そんな顔しないでよサンガツ君。君の事が好きなのは嘘じゃないよ」

「じゃあどうして」何度も聞いて悪いが。

「ふふっ。ごめんねサンガツ君。僕が君と付き合えない理由はね、実は僕――」




「今日、死ぬから」

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