表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/54

第24話 Goodbye To Love【前編】

 いずなは、カーペンターズの『グッドバイトゥラブ』と()う曲が、とても好きだった。平成生まれのいずなにとって、半世紀近く昔のヒット曲である(はず)()の曲は、文字(もじ)通り、特別な曲だった。カレンの語り掛ける様な歌声と、(むせ)び泣く様なギターのサウンズ、賛美歌(ゴスペル)の様な美しいコーラスは、色鮮(いろあざ)やかな落葉(おちば)舞散(まいち)る、秋の木枯(こが)らしの様なイメージ、()の物だったのである。(しか)し、()れは、彼女の()る悲しい記憶(きおく)由来(ゆらい)していた。


 いずなは、(おだ)やかな面持(おもも)ちで大空を見上げ、()う思った。


随分(ずいぶん)と空が高くなったんだなあ)


 秋の透明感(とうめいかん)(あふ)れる青空の(もと)、いずなは敬介と待ち合わせをしていた。()季節(じき)。地上の(すべ)てが黄櫨染(こうろぜん)()まる。時折(ときおり)吹く寒々(さむざむ)とした木枯(こが)らしが、色鮮(いろあざ)やかな櫨染色(はじぞめいろ)銀杏(いちょう)の葉を、矢継(やつぎ)(ばや)に巻き上げていく。ショッピングモールの入り口に、地味(じみ)色合(いろあ)いのベストの制服姿で一人(たたず)むいずなは、目の前を(はしゃ)(なが)ら歩く女子中学生達に目を()めた。


(あっ。清水中学の制服だ)


 目の前の中学生達は、(こん)に白色三本ラインのセーラー服に(こん)色のスカーフだった。彼女たちは楽しそうに談笑(だんしょう)している。目の前の制服は、昨年(さくねん)、いや今年の3月(まで)いずな自身が身に()けていた物でも有る。いずなにとって、あまり(なつ)かしいと()える様な代物(しろもの)では無かったが、いずなは、(おの)ずと一年前に戻らずにはいられなかった。


 一年前、清水中学3年の秋、いずなは恋をしていた。初恋だった。次第(しだい)に丸みを()び、(さなが)ら、美しい(ちょう)の様に、次々と女の子らしい体つきに変貌(へんぼう)して行く同級生達を後目(しりめ)に、いずなは恋に()いても、大きく出遅れていた。そんないずなが(ほの)かな恋心を(いだ)いたのは、サッカー部のKだった。Kはサッカー部のエースストライカーだった。女の子達の人気の(まと)であり、いずなにとっては、所詮(しょせん)、Kは高嶺(たかね)の花でもあった。Kがいずなに振り向いてくれる可能性は、0に等しかっただろう。そんな事はいずなにも良く分かっている。いずなの貧相(ひんそう)な体つきは、何よりもコンプレックスだったし、いずなも、()(あた)りについては(ぶん)(わきま)えていたので、遠くから見ているだけであった。でも、それでも良かった。(あこが)れているだけで、幸せだった。思っているだけで、少しだけ大人になれた気がした。(しか)し、そんないずなに大きな転機が訪れた。(あこが)れのKが席替えで右隣の席になり、話し掛けて来たのだ。

「小泉さん。英語が得意なんだって? 今度、僕にも教えてよ」

「えっ。…いいよ」

 (まさ)に、天の配剤(はいざい)であった。放課後、図書室でKに英語を教えてあげた。Kの優しさも垣間(かいま)見えた。Kはすごく喜び、

「また、教えてね」

「うん」

「あっ。そうだ。僕、宿題まだだから、ノート1日借りても良い?」

「うん。いいよ」

 いずなは、とても幸せだった。ノートも一生懸命(いっしょうけんめい)にとった。先生の板書(ばんしょ)だけでは無い。要点を(まと)めたワンポイントや、(まぎ)らわしい項目(こうもく)等は、いずななりの言葉で懇切丁寧(こんせつていねい)に解説した。Kの事が好きだったからか? 多分(たぶん)、それだけでは有るまい。いずなにとって初めてと()える大切な友達の(ため)に、力になって上げたかったのだろう。


 そんな日々(ひび)が、(しばら)く続いた。いずなは、()る日、文房具屋で可愛(かわい)いひよこ達とあひるのイラストのレターセットを見つけたのだった。


(そうだ、()のレターセットで彼に思いの(たけ)を書いてみよう)


 随分(ずいぶん)(がら)にも無い、思い付きだったのかもしれない。身の(ほど)(わきま)えぬ、思い付きだったのかもしれない。彼女は、(あふ)れ出る思いを丁寧(ていねい)(したた)め、ひよこ達の封筒(ふうとう)に入れて、(くだん)のノートに(はさ)み込んだ。

「あの、昨日(きのう)の…。読んでくれた?」

「ああ、ごめん。(いそが)しくて、()だ」

 (みょう)な話だった。如何(どう)考えても(みょう)だった。(みょう)な話はまだ続いた。()る日、返されたノートを見ていると、何か書いてある。書いてあると()うよりも、()れているといった感じだった。丁度(ちょうど)、インクの切れたボールペンで書いた様な文字(もじ)である。いずなは判読(はんどく)しようと、()めつ(すが)めつ、()文字(もじ)を拾って行った。


(えっ)


『バカ、ちび、ブス、ゴキブリ、早く死ね…』


 正視(せいし)()え無い様な、言葉の羅列(られつ)。そう、()き出しの悪意を文字(もじ)にすると()うなるのでは、と(おぼ)しき内容だった。

「何、…()…れ」

 いずなは絶句(ぜっく)した。そう。信じられない様な出来事(できごと)だった。本当に悲しい話だった。そして、同時に、随分(ずいぶん)間抜(まぬ)けな話でもあった。そして、心臓を(えぐ)られた様な思いだった。心が(こわ)れてしまいそうな話だった。事実(じじつ)(こわ)れてしまったのかも知れない。()証左(しょうさ)()うには(あま)りにも痛ましい事実(じじつ)ではあるが、()の様な状況下(じょうきょうか)にあり(なが)ら、いずなは一滴の涙すら出なかったのだ。卒爾(そつじ)として、いずなは、今、現在、彼女自身(じしん)の置かれている状況(じょうきょう)を、朧気(おぼろげ)(なが)らも理解(りかい)したのだった。


 翌日(よくじつ)からのいずなの行動が一変(いっぺん)した。常軌(じょうき)(いっ)したと()っても()い。まず、授業中に一切(いっさい)のノートを取ら無くなった。教科書すら開いていない。筆記用具も無い。(つくえ)の上に教科書が乗っているだけである。表情も石像の様に(きわ)めて無表情(むひょうじょう)となった。まるで、周囲(しゅうい)に何事も関心が無いかの様だった。当然(とうぜん)、一部の教師は、悪質なボイコットとして(とら)えた。英語教師の渡辺が授業中、いずなを指名し、音読(おんどく)指示(しじ)した。いずなは、屹然(きつぜん)として答えた。

「35ページの何行目ですか?」

「5行目だ」

 教科書は相変(あいか)わらず、(つくえ)の上に置いた(まま)で、開きすらしない。いずなは目を(つむ)ると、(よど)み無く、そして、流暢(りゅうちょう)音読(おんどく)を始めた。渡辺は()めろとは()わない。いずなは完璧(かんぺき)な発音でどんどん読み上げていった。何者かに()かれた様な(てい)で、(まった)(とどこお)りなく読み進めて行く。(やが)て、40ページに差し掛かった(ところ)で、

「もういい」

 と、渡辺は苦々(にがにが)しく()めた。と同時に、此処(ここ)で初めてクラス全体が、一種異様(いっしゅいよう)雰囲気(ふんいき)(つつ)まれた。


『ちょっと、一体(いったい)、…如何(どう)()う事?』

暗記(あんき)…して…やがる…』

『何だ…、あの、がり勉女』

『やだ、気持ち悪い…』


 ざわつくクラスメート達を他所(よそ)に、いずなは、無表情(むひょうじょう)で前を向いた(まま)である。(すべ)ての教科がこんな調子(ちょうし)だった。(ごう)()やした社会科の教師は、いずなを指名し、意地悪くも、(はる)か先のページの音読(おんどく)指示(しじ)した。が、結果(けっか)は同じなのである。前のページ。(たと)えば20ページの1行目であっても、()れまた、同じ事であった。クラス内は、(にわ)かに騒然(そうぜん)とした。


此奴(こいつ)、全教科の教科書を暗記(あんき)してやがるのか…?』

『…(うそ)だろ』

(ばけ)(もの)め』


 人は自分を明らかに超越(ちょうえつ)したものに遭遇(そうぐう)すると、まず、否定(ひてい)から始まる。()れは()る意味、無理(むり)からぬ事ではある。でなければ、(おのれ)の優位性は保てない。(おのれ)の自我を保つ為にも、()れは必要な防衛行動なのでもあるのだ。唖然(あぜん)とするクラスメート達。(はか)らずも、いずなの特殊能力が露呈(ろてい)した瞬間でもあった。実は、いずなには、みんなに()っていない()る能力があった。()れは人並(ひとなみ)(はず)れた記憶力である。いずなには、(おぼ)える、暗記(あんき)するといった行為(こうい)自体(じたい)が不要であった。活字(かつじ)となっている物は、一読(いちどく)すれば頭に入った。そして、二度と忘れる事は無い。いや、出来(でき)無かったと()うべきであろう。サヴァンと呼ばれるべき能力である。(しか)も、通例(つうれい)と異なり、いずなのIQは(きわ)めて高かった。恐らくは150以上であったと思われる。学力に関しては、小学校から、(つね)に学年で一位であった。そして、体育に()いても、小柄(こがら)体躯(たいく)とは裏腹(うらはら)に運動神経抜群(ばつぐん)であったし、性格も温厚(おんこう)で思いやりもあった。(しか)し、にも(かかわ)らず、いずなは同級生からは嫌われ、(うと)まれていた。ひとつには、()の超記憶能力を隠さなかったせいもあろう、また、(つね)に学年一位という成績もやっかまれていたのも事実(じじつ)であろう。非常(ひじょう)裕福(ゆうふく)家庭環境(かていかんきょう)悪意(あくい)ある(ねた)みの対象でもあった。(さら)に、同級生から見れば、(いま)だ小学生の様な体型(たいけい)であり(なが)ら、スポーツ万能と()う点も気味悪(きみわる)がられていたのも事実(じじつ)であろう。(よう)するに、周囲(しゅうい)は、いずなが天才的であることは、誰しもが(みと)めていたものの、()の天才性よりも、何か暗い一種の不具性(ふぐせい)の様な物を、敏感(びんかん)に感じとっていたのかもしれない。


 いずなの()の能力の顕現(けんげん)は、幼少(ようしょう)時分(じぶん)(まで)(さかのぼ)る。(さき)にも(しる)したが、いずなの(うち)はとても裕福(ゆうふく)であった。両親共に医師(いし)である。いずなの父親は内科医で、小泉吾郎と()う。


 小泉吾郎。()の名前、賢明(けんめい)なる読者諸君(しょくん)は、もうお気づきの事と思うが、私の別のお話では何度か登場した人物でもある。()の男は天才的な医師(いし)として、静岡界隈(かいわい)のみならず、()の知名度に関しては、(すで)に全国区であった。(ただ)誤解(ごかい)の無い様に申し上げれば、天才的な、と()形容動詞(けいようどうし)は、医師(いし)()名詞(めいし)修飾(しゅうしょく)する物では無い。抑々(そもそも)医師(いし)に対する()め言葉としては、堅実(けんじつ)な見立ての、とか、誤謬(ごびゅう)の無い診断(しんだん)の、と()った形容動詞(けいようどうし)相応(ふさわ)しく、天才的なと()った言葉は、やや的外(まとはず)れと()(そし)りを(まぬが)れない。医師(いし)とは、当たり前の診断(しんだん)診療(しんりょう)を、堅実(けんじつ)、かつ、着実(ちゃくじつ)に、誠意(せいい)()って遂行(すいこう)する事が求められる職業であり、其処(そこ)には、天才的な(ひらめ)きや、技術、プロ選手の様な(はな)やかさは必要無いのだ。(かさ)ねて()うが、()の小泉吾郎に()ける『天才的な』と()形容動詞(けいようどうし)医師(いし)修飾(しゅうしょく)する物ではない。(ただ)しく表現(ひょうげん)するのであれば、天才的な囲碁(いご)センスを持つ、元囲碁(いご)プロ棋士(きし)である医師(いし)表現(ひょうげん)すべきなのであろう。


 そうである。小泉吾郎は元囲碁(いご)プロ棋士(きし)なのである。()れも、かつて、タイトルを3つも手にしている。()せぎすで160センチにも満たない小柄(こがら)体躯(たいく)。やや猫背気味(ねこぜぎみ)に丸めた背中のため、身長は、(つね)に、150センチ程度の印象(いんしょう)を与えていた。()の父親の経歴(けいれき)非常(ひじょう)数奇(すうき)な物だった。幼少(ようしょう)(ころ)より勉強は出来(でき)たが、()れ以上に、囲碁(いご)の天才的才能を発揮(はっき)していた。吾郎先生が小学校に上がる(ころ)には、もう、周囲(しゅうい)の大人達では太刀打(たちう)出来(でき)無かった。彼は小学3年に上がった4月、とあるプロ棋士(きし)内弟子(うちでし)となる(ため)、上京した。そして、小5でプロデビュー。通常、鬼の棲処(すみか)()われる、C級、B級順位戦を(またた)()()()け、一躍(いちやく)、トッププロに(おさ)まったのである。15歳で7大タイトルである聖王位、天狼位(てんろうい)の挑戦権を手に入れ、そして、二大タイトルを奪取。15歳にして、タイトルを二つも獲得したのだ。若き天才棋士(きし)の出現に、当然(とうぜん)周囲(しゅうい)、そして、マスコミは色めきたった。彼の囲碁(いご)の強さの秘密として、()独特(どくとく)死生観(しせいかん)が上げられる(勿論(もちろん)囲碁(いご)の、である)。吾郎先生は、石の生死の見切りが途轍(とてつ)も無く早いのである。()だ、眼形(がんけい)はおろか地形(ちけい)すら(さだ)まらぬ(うち)から、直感的(ちょっかんてき)に石の生死を見極(みきわ)めるのである。(おそ)らくは、独特(どくとく)空間把握(くうかんはあく)能力とでも()おうか、(たが)いに交互に最善手(さいぜんしゅ)を重ねて行った結果、()の空間に()ける眼形(がんけい)()く有るべきだと()うイメージを完全に持っているのであろう。そして、()洞察力(どうさつりょく)には(すこぶ)定評(ていひょう)があった。(さら)に、彼の名を高らしめたのが、『光速の思考』とも呼ばれた思考の速さ(スピード)である。()れについては、こんな逸話(エピソード)がある。天狼位(てんろうい)決勝戦の第4局、対戦相手は斯界(しかい)重鎮(じゅうちん)、井上天眼九段天狼(てんろう)であった。吾郎は其処迄(そこまで)()の大御所を相手に3戦勝利し、(すで)に2つ目のタイトルに王手を掛けていた。そして、其の中盤戦の攻防の一手、角番(かどばん)で後が無い井上天狼(てんろう)は128分の長考(ちょうこう)(すえ)、勝負手を放った。かなり、難解(なんかい)局面(きょくめん)である。(しか)し、吾郎は間髪(かんぱつ)()れず、()()ちを(はな)つのだ。見掛(みか)(じょう)は、一秒と経過(けいか)していない刹那(せつな)出来事(できごと)であった。()瞬間(しゅんかん)、周囲から、異様(いよう)(どよ)めきが起こったと()う。(のち)に異次元からの(やいば)(ひょう)された一手である。


「最初は、時間持続現象(クロノスタシス)かと思いました」


 吾郎先生は、当時(とうじ)を振り返って、()述懐(じゅっかい)する。時間持続現象(クロノスタシス)については、我々(われわれ)一般人(いっぱんじん)にも馴染(なじ)みのある現象(げんしょう)である。()瞬間(しゅんかん)にふと時計に目をやる。すると、時計の秒針が止まって見えると()うアレである。()現象(げんしょう)自体(じたい)は、不思議(ふしぎ)でも何でもない、科学的説明のつく現象(げんしょう)なのだが、(しか)し、彼の場合は明らかに違う。彼は井上天狼(てんろう)が打った刹那(せつな)、何の気無(きな)しに時計を見た。そして、二十五手読んだ後に、(ふたた)び時計を見た時、


 ()()()()()()()()()()()()


 と、()うのだ。当初(とうしょ)、吾郎先生はチェスクロックの故障を疑ったと()う。(しか)し、次の瞬間、時計の故障等では無く、自身の思考速度の()せる(わざ)と気が付いた時、自身(おのれ)の勝利を確信したと()う。(まさ)に、時間と()概念(がいねん)超越(ちょうえつ)した思考(しこう)、いや、時間(とき)を置き去りにした思考と()う事になる。(ただ)()れには(いく)つか異論(いろん)噴出(ふんしゅつ)した。一つは、そんな馬鹿(バカ)な事は有り()ないという常識的(じょうしきてき)正論(せいろん)である。(さら)に、()直前(ちょくぜん)の井上天狼(てんろう)の約二時間の長考(ちょうこう)を、吾郎自身、二、三十分程度(ていど)認識(にんしき)していた(よう)である。(したが)って、(みちび)き出される結論(けつろん)()うである。彼は、井上天狼(てんろう)の次の勝負手を()の局面の必然(ひつぜん)(すなわ)ち、最善手と(さだ)め、()れを前提(ぜんてい)とした上で、井上天狼(てんろう)長考中(ちょうこうちゅう)に二十五手分読みきって居たのだと。()れなら、()だ、理解(りかい)範疇(はんちゅう)である。勿論(もちろん)、井上天眼の次の一手、(まさ)渾身(こんしん)からの勝負手を寸分(すんぶん)(くる)いも()く読み切った事は、(たし)かに、瞠目(どうもく)(あたい)する(わけ)では有るが、一秒足らずの刹那(せつな)に二十五手も読みきると()(はな)(わざ)を信ずるよりは、(はる)かに、信用出来(でき)る話ではあるし、又、現実的(げんじつてき)でもある。あれから、30年以上経過した現在のAIソフトですら、評価値は井上天狼(てんろう)必勝の状況である。(しか)し、莫大(ばくだい)な時間を注ぎこみ10億手以上読ませた場合にのみ、吾郎の放った()()ちが、浮かび上がって来るのである。()の場合の評価値はつかず、吾郎の圧勝と表示される。つまり、一見(いっけん)平凡(へいぼん)な手の連続の(すえ)、25手目に相手を頓死(とんし)させる様な状況に(いざな)っているのである。()の高校生の様な()だ成人前の少年が、老獪(ろうかい)()うより、妖怪味すら感じさせる手筋を(はな)つのである。一種(いっしゅ)異様(いよう)な光景と()って()い。いずれにしても、井上九段が、(いく)らA級棋士とは()え、()(よう)化物(ばけもの)()みた男が相手では、(たま)った物では無い。二十五手後、大石(たいせき)を殺された井上天狼(てんろう)(きし)(よう)な低い声を振り(しぼ)り、敗北(はいぼく)宣言(せんげん)したのであった。


 ()って、何時(いつ)しか、彼は周囲(しゅうい)から『石の殺し屋』とか、『死神吾郎』と渾名(あだな)された。また、アニメ好きの若い棋士(きし)たちからは、『ザ・ワールド』とか『スター・プラチナ』、(ある)いは、『キング・クリムゾン』とも、呼ばれる様になっていた。彼の異名(いみょう)(さて)置き、(まさ)に、順風満帆(じゅんぷうまんぱん)棋士(きし)人生と()って良い。行く行くは、未来の名人、本因坊(ほんいんぼう)将来(しょうらい)嘱望(しょくぼう)されていたものだった。彼の父親は内科医であったが、息子の進みたい道が彼の道と心得(こころえ)()(ため)の全面的なバックアップを()しまなかった。(しか)し、彼が碁帝位タイトル戦の()る日、()の父親が夭逝(ようせい)する。大腸癌(だいちょうがん)であったと()う。彼にとって父親の理不尽(りふじん)な死は、彼の将来(しょうらい)に大きな影響を与えた。彼は、最後に手にした(それも、父親との最後の面会を犠牲(ぎせい)に手にした)3冠目のタイトルと共に、突如(とつじょ)として、囲碁(いご)プロ棋士(きし)廃業(はいぎょう)し、故郷清水に逼塞(ひっそく)した。そして、3年遅れで清水高校に入学したのであった。果然(かぜん)囲碁(いご)界は、百年に一人とも()われた天才を喪失(そうしつ)する事となった。吾郎先生は嵐の様に囲碁界を席巻(せっけん)し、同様(どうよう)に、嵐の様に立ち去って行った。彼は、父親の歩いた道を歩む事を決意する事となるのである。


 現在(いま)の彼は、フサフサした毛髪にところどころ白髪(しらが)()じり、()貧相(ひんそう)な出で立ちと相俟(あいま)って、人畜無害(じんちくむがい)なムク犬の様な印象(いんしょう)を与えていた。性格も(きわ)めて温良(おんりょう)恭倹譲(きょうけんじょう)の人であり、寡黙(かもく)()の人物は、自制心(じせいしん)に飛んだ人物で、感情の起伏(きふく)は小さく、()の時代にあっては(めずら)しい丸いレンズの眼鏡(めがね)に、糸の様な細い目でいつもニコニコしていた。(しか)し、彼の30代は大変な切れ者として、将来(しょうらい)嘱望(しょくぼう)されていた。青雲(せいうん)(こころざし)に燃える、寡黙(かもく)で居て、熱血的な医師(いし)であった。彼は医師(いし)という職業は好きであったが、病院内での政治は嫌いであった。院内の派閥(はばつ)争いに嫌気(いやけ)し、ゲーム、アニメと()ったオタク趣味に走ったかの様に振る舞い(まあ、実際、走っていたのではあるが)、30代半ばになってからは、自己を(めっ)する事に骨を折る様になった。結果(けっか)、出世コース、派閥(はばつ)争いとは無縁(むえん)な、『大智(だいち)()(ごと)し』を、()で行く振る舞いを(つらぬ)き通し、人の良いおじいちゃんの様な先生と()う立ち位置を、いつしか、確立して行くのであった。


 彼は、(おだ)やかな顔で、良く(うそぶ)く。


「僕はサイコパスですよ」


 と。()の言葉を()いた周囲(しゅうい)の人々は、彼一流(かれいちりゅう)のセンスの無い冗談(じょうだん)だと思い、笑う。()れはそうであろう、彼ほど、温厚(おんこう)で、蘊藉(うんしゃ)で、慈悲深(じひぶか)い男も(めずら)しかったし、()の上、沈着冷静(ちんちゃくれいせい)で感情の起伏(きふく)も無い男もいなかった。(しか)し、彼自身(じしん)、本気であった様で、()台詞(セリフ)屡々(しばしば)、口にしていた。サイコパス。(すなわ)ち、精神病質(サイコパス)()う言葉は、近年(きんねん)、やや、曲解(きょくかい)された趣旨(しゅし)で受け取られ、ハンニバル・レクター博士に代表される殺人嗜好者(しこうしゃ)を連想する()きが多い。此処(ここ)で一般的に()われているサイコパスの特徴(とくちょう)臚列(ろれつ)してみよう。


 ① 良心が異常(いじょう)欠如(けつじょ)している

 ② 他者に冷淡(れいたん)で共感しない

 ③ 慢性的(まんせいてき)平然(へいぜん)(うそ)をつく

 ④ 行動に対する責任が(まった)くとれない

 ⑤ 自尊心(じそんしん)過大(かだい)で自己中心的

 ⑥ 口が達者(たっしゃ)で表面が魅力(みりょく)

 ⑦ 罪悪感が皆無(かいむ)


 吾郎先生について、上記に照らして(かんが)みるに、①~⑥はまるで当らない。(しか)し、⑦については、『必要とあらば』と()う前提条件がつけば、多少(たしょう)当っているのかもしれない。又、③についても、多少(たしょう)意訳(いやく)をすれば、『本当の事は()わない。(ある)いは、相手が誤解(ごかい)している事に(まか)せる。そして、()れを()えて訂正(ていせい)しない』と()った部分は該当(がいとう)するのかも知れない。だが、()れとても、人間なら普通(ふつう)にある、心理的事象(じしょう)であり、殊更(ことさら)、問題視する様な事柄(ことがら)では無い。(もっと)も、吾郎先生の事である。自分と同じ水準の人間であれば1の説明で()事象(じしょう)について、10も20も説明を(よう)する事に、ただ(たん)に、辟易(へきえき)としていただけなのかもしれない。にも(かか)わらず、吾郎先生は自身(じしん)をサイコパスだと固く信じていた。()の理由の一つには、確固(かっこ)たる強固(きょうこ)な意志が()げられる。つまり、途轍(とてつ)も無く頑固(がんこ)なので有る。()し、100人を救う(ため)に、一人を殺害する必要があるのであれば、彼は迷わず、()れを選択するかもしれない。そして、一度決めた事は、感情に流される事無く、躊躇(ちゅうちょ)せず、(おそ)らくは冷静に遂行(すいこう)するであろう。つまりは、充分(じゅうぶん)な良心と倫理観を持ち合わせてい(なが)らも、何処(どこ)か社会とか法制度に対して全幅(ぜんぷく)信頼(しんらい)を持ち合わせてはいない人物。そう、創作上(そうさくじょう)の人物で(たと)えるのであれば、シャーロック・ホームズが該当(がいとう)するのであるのかも知れない。まあ、そう()(わけ)で、所謂(いわゆる)、変人。それも、かなり変わった(エキセントリックな)人物であった事は(うかが)えるのである。


 一方(いっぽう)、いずなの母親も、才色兼備(さいしょくけんび)の、天才肌の外科医であり(なが)ら、(きわ)めて常識的な人物。(さなが)ら、ワトソン博士の様な人物と()って()かった。此方(こちら)は、文字通り、『天才的な』と()う表現が相応(ふさわ)しい医師であり、()の芸術的な手技(てわざ)は病院の内外でも定評(ていひょう)があった。そして、彼女も組織内の政治とは無縁(むえん)な人であった。(むし)ろ、そう()ったものを(すこぶ)嫌悪(けんお)しており、組織内では孤高(ここう)の人と()った立ち位置であった。彼女は目がパッチリした、スラッとした長身のグラマラスな(すご)い美人で、何でも自分の意見をはっきりと主張(しゅちょう)し、妥協(だきょう)をしない所から、冷酷(れいこく)で協調性の無い人物と見られ()ちであったが、実は、性格は基本温厚(おんこう)である。だが、時々(ときどき)(ごく)(まれ)に情に流される事があり、()(たび)に吾郎先生は、実に上手(じょうず)細君(さいくん)操縦(そうじゅう)していた。いずなにとって父親は、非常(ひじょう)温厚(おんこう)なお父さんで、いずなは父の怒った姿など一度も見たことは無かった。二人は東大理Ⅲの同窓生であり、共に、ヒポクラテスの誓いを立てた間柄(あいだがら)でもある。二人とも、長らく静岡県内の病院を転々としていたが、吾郎が38歳、彼女が35歳の時、静岡市立清水病院で邂逅(かいこう)、そして結婚したのであった。


 夫婦二人で並んでいると、時々(ときどき)、親子と間違えられる。父親の風貌(ふうぼう)は、還暦(かんれき)間近(まぢか)人畜無害(じんちくむがい)田舎(いなか)の村長さんの様に(うつ)ったし、母親は、長身で眼鏡(めがね)を掛けた美人女医、バリバリのキャリアウーマンである。()い寄る男共を、感情も見せずに、()れこそ事務的に、軒並(のきな)粉砕(ふんさい)していた(ところ)から、『デスマシーン』とか、『鋼鉄の処女(アイアン・メイデン)』とか()った、医師として有難(ありがた)くも無い称号(しょうごう)まで頂戴(ちょうだい)していた。であるから、いずなの父親と、婚約・結婚した時は、周囲(しゅうい)驚愕(きょうがく)筆舌(ひつぜつ)に及ばず、双方(そうほう)の両親((もっと)も、吾郎先生側は母親だけであるが)すら(いぶか)しんだ程であった。吾郎先生は、当時、多額なお金を積んだとか、何か弱みを(にぎ)って脅迫(きょうはく)したのではあるまいかとか、(ささや)かれた位である。それ(ほど)までに、いずなの父親は、一般的に男性としての魅力(みりょく)という点に()いて、圧倒的(あっとうてき)に欠けていた。にも(かか)わらず、いずなの母親は、父親に傾倒(けいとう)していた。心酔(しんすい)していたと()っても良い。早い話がぞっこんだったのである。知的水準は同等、医者としてのスペックも同等、(しか)し、妻は社交的、良人(おっと)は内向的と()う違いはあるものの、沈着冷静(ちんちゃくれいせい)深謀遠慮(しんぼうえんりょ)というか、(ふところ)の広さというか、度量(どりょう)の大きさで、いつも、良人(おっと)後塵(こうじん)(はい)してしまう。夫婦で意見の違いがあった時は、夫婦で意見がぶつかる(わけ)でも無い、良人(おっと)が頭から論破(ろんぱ)をする(わけ)でも無い。ニコニコと子供でもあやす様に接し、気がつくと、妻の主張(しゅちょう)したものとは違う(ところ)へ、ソフトランディングさせられているのだ。『私は、()の人にはかなわない』、何度と無くそう思った。でも、妻にとっては、()れが不思議(ふしぎ)居心地(いごこち)が良かったのである。


 二人は、長らく、子宝(こだから)に恵まれなかったが、母親が40に届こうかという時、いずなを懐妊(かいにん)したのであった。夫婦は(あきら)めかけていた子宝(こだから)(さず)かり歓喜(かんき)した。母親は平成×年3月20日に、元気な女の子を出産した。()の夜は月が美しい晩だった。夫が病院裏手で喫煙中に見た()(はな)満開(まんかい)だった。一般人に(くら)べ、比較的(ひかくてき)、生と死の(せめ)()う職業に身を置き(なが)らも、名も無い生命の偉大さに深く感銘(かんめい)を受ける瞬間(しゅんかん)であった。いずなの父親が大仕事をしたばかりの妻に、ニコニコと(ねぎら)(なが)ら、『菜月(なつき)』という名前は如何(どう)だろう? と、提案(ていあん)した。母親も良いお名前ね。と、同意した。いずなの父親は()の機に、清水病院の職を()し、現在の自宅に小泉医院と()う医院を開業した。いずなの母親は、いずなの出産を機に、病院を()し、良人(おっと)の手伝いと家事(かじ)に専念するようになった。夫婦は患者達から、吾郎先生、順子先生と(した)われていた。順子先生も温厚(おんこう)な人であったが、いずなを(しか)るのは順子先生の役目だった。(もっと)も、いずなは(しか)られる様な事は(あま)り無かった。


 両親の愛情を一杯(いっぱい)に受けて、いずなはすくすくと成長して行った。(しか)し、いずなが幼稚園(ようちえん)年中(ねんちゅう)(ころ)、不吉な影が(おお)う。いずなは、言葉が他の子よりも遅かった。()る日、幼稚園(ようちえん)の先生から呼び出しがあった。いずなについて気になる事があるというのだ。言葉が遅い事もあり、順子先生が幼稚園(ようちえん)出向(でむ)いた。そして、園長先生が切り出す。

「実は、菜月(なつき)ちゃんの事なんですが…」

「何かあったんですか?」

時々(ときどき)、他のお友達から意地悪(いじわる)をされたり、()めたりする事があって…。菜月(なつき)ちゃん、言葉以外は(すご)くしっかりしているし、明るくて、(やさ)しくて、思いやりもあるんですけどねえ。それで、私共もいつも気をつけていたんですけども、今日、木村良太君を()()いて軽い怪我(けが)をさせてしまって…」

「申し(わけ)ありません。怪我(けが)具合(ぐあい)は」

「いえ、怪我(けが)も大した怪我(けが)では…、良太君のお母さんもそう()っていましたし。あっ、でも、先方(せんぽう)さんに一言(ひとこと)()びの方は…」

「はい、()れは、勿論(もちろん)。ところで、原因は何だったんでしょう?」

()れが、()(かく)(みょう)なんです…」

 そう()って、語り始めた園長先生のお話は、(たし)かに奇妙(きみょう)な話だった。


 (こと)発端(ほったん)は、お遊戯(ゆうぎ)の時間のじゃんけんだった。『誰がじゃんけん強いかな?』と()うゲーム大会だったのだが、いずなは圧倒的(あっとうてき)強さで優勝をした。()れを一部の子供達が『ズルをした』と(さわ)ぎ立て、『ズルしてない!』と憤然(ふんぜん)としたいずなと(つか)()いに発展したと()うのだ。(たし)かに、此処(ここ)まで聞いた限りでは、奇妙(きみょう)でも何でも無い、何処(どこ)幼稚園(ようちえん)でも見掛(みか)ける(いさか)いに過ぎないのだが、見ていた先生達は異口同音(いくどうおん)()った。

「問題は菜月(なつき)ちゃんの勝率なんです。菜月(なつき)ちゃんは17勝3敗で優勝しました。私は横で見ていて、菜月(なつき)ちゃんは間違いなく、フェアにやっている。遅出しなんかではなく、(むし)ろ先出しなんです。(しか)何故(なぜ)か、お友達は魅入(みい)られた様に負ける手を出してしまう。なんで、こんなにじゃんけんが強いのか…。今日の事だけなら、(ただ)偶然(ぐうぜん)と思ったかもしれませんが、先日のカルタ大会、トランプ大会、(すべ)菜月(なつき)ちゃんが圧勝(あっしょう)しています」

(たし)かに、(みょう)な話ですねえ」

 順子先生も相槌(あいづち)を打った。園長先生は困った様な顔で溜息(ためいき)()じりに()った。

「まさか、菜月(なつき)ちゃんに(ワザ)と負けなさいとも()えませんし…」

「それもそうですね。(いえ)でもちょっと注意して観察して見ます。それに、手を出したのは良くありませんから…」

 順子先生は、園長先生たちにお()びもそこそこに、いずなを()れて帰った。途中(とちゅう)和菓子屋(わがしや)菓子折(かしお)りを求めると、()の足で良太の自宅にも寄った。良太の(うち)は近所の八百屋(やおや)である。母親がいずなの不始末(ふしまつ)()(なが)ら、菓子折(かしお)りを差し出そうとした。如何(いか)にも女傑(じょけつ)らしい良太の母親が、恐縮(きょうしゅく)しまくっていた。

「いや、順子先生、よしてくださいよ。あんなの怪我(けが)(うち)に入りませんよ。(つば)つけておけば直ります。大体(だいたい)、うちの良太が先に手をだしたと聞いてますよ。こら、良太、菜月(なつき)ちゃんにあやまんな」

「やだよ、母ちゃん。いずながずるしたんだよ」

「いじゅな、じゅるちてない!」

「良太! 母ちゃんいつも、()ってんだろ。女の子に手を出したら、お(きゅう)だって。大体(だいたい)、女の子に手を出して、()()かれるなんて、10年早いんだよ。おまえは」

 いずなと良太は、双方(そうほう)の母親の強制で、お互いにお()びを()った。いずなと良太、共に、憮然(ぶぜん)とした表情の(まま)であり、双方(そうほう)とも納得(なっとく)していないのは明白(あきらか)であった。(もっと)も、そうは()っても子供の事である。良太の(うち)を、お土産(みやげ)のりんごを(もら)って()する(ころ)には、お互いに『バイバイねー』、『また、明日ねー』などと、()い合っていた。


 順子先生はいずなを()れて、不機嫌(ふきげん)そうな面持(おもも)ちで自宅に向かっていた。()程迄(ほどまで)に、いずなが同級生と(つか)()いの喧嘩(けんか)をしたのがショックであった。普段(ふだん)素直(すなお)ないずなの、(かたく)なな態度(たいど)面白(おもしろ)く無かった。いずなは元々(もともと)線が細く、繊細(せんさい)幼女(ようじょ)である。いずなも順子先生の気を引きたい一心で()()った。

「ママ、いじゅな、じゃんけん大会で勝ったんだお」

 順子先生はそれには、答えなかった。不機嫌(ふきげん)そうに歩いている。センシティブな子供であるいずなにも、敏感(びんかん)()気配(けはい)は伝わっていた。いずなも、(うち)に着く(ころ)には、目に一杯(いっぱい)、涙を()めていた。(うち)に帰りつくと、順子先生は仁王立(におうだ)ちになり(なが)らも、いずなに出来(でき)るだけ(やさ)しく()った。

「何で良太君に暴力(ぼうりょく)したの? いけない事でしょ」

「…」

 いずなは、目に涙をいっぱい()めて、順子先生を(にら)んでいる。

「いじゅな、悪くない!」

「でも、良太君に悪い事したのは、菜月(なつき)でしょ!」

「だって、りょーた、いじゅなの事、じゅるって()った! いじゅなじゅるなんて、ちてない!」

「そんな事、関係無いのよ。菜月(なつき)は良太君の事、怪我(けが)させたのよ。いけない事でしょ。()の後も、素直(すなお)にごめんなさいをしないで…」

「だって、いじゅな悪くないもん。…ねえ、ママ、いじゅなじゃんけんで1等賞だったんだお」

「…そんな事、今は関係無いでしょ」

 順子先生の()の言葉に対して、ついに、いずなが爆発した。


「ママのバカ! …ママなんて、大嫌(だいきら)い!」

『ぱんっ』という、肉を打つ激しい音がした。順子先生がいずなのほほを平手打(ひらてう)ちしていた。いずなは2~3秒、ビックリした顔で順子先生を見上げていたが、()の瞳にはみるみる内に涙が(あふ)れ、そして、わあわあと大声で泣き始めた。順子先生は2撃目を加えようと、手を上げた瞬間(しゅんかん)、後ろで『こほん』と、(かす)かな咳払(せきばら)いの音が聞こえた。順子先生は、思わずハッとして、振り上げた手を止めた。振り返るまでも無い。吾郎先生だった。父親は背を丸めた老人の様であった。が、細い目をニコニコさせて、年相応(としそうおう)快活(かいかつ)な声で()()った。

「やあ、順子さん。お帰りなさい。(いそが)しいところ申し(わけ)無いけど、お茶を()れてもらえるかな? あと、おリンゴもむいてもらえるかなあ?」

「あっ、はい、ただいま」

 ()の、吾郎先生の呑気(のんき)一言(ひとこと)で、思わず、(われ)に帰った順子先生は目の涙を指先で(ぬぐ)うと、台所へ行った。順子先生は、良人(おっと)意図(いと)をすぐさま理解(りかい)した。()の夫婦は互いの事を、『パパ』、『ママ』と呼び合っている。夫婦は二人だけのときは『あなた』と『ママ』である。そして、病院内では互いに『先生』である。良人(おっと)が妻を下の名前で呼ぶときは、何か意見したい時か、夫婦のお(つと)めの時だけである。()の場合、良人(おっと)は、少しクールダウンしなさいと()っているのだ。吾郎先生は泣いているいずなの前にチョコンと座る。(さなが)ら、お(じい)ちゃんと孫娘である。吾郎先生は(やさ)しくいずなの頭を()でると(おだ)やかに()った。

「おやおや、菜月(なつき)ちゃん。如何(どう)したの?」

「ママに、悪い子されたの…」

「ああ、ママに怒られたのかな? でも、ママ、理由も無く、悪い子するママじゃないよ。如何(どう)してかなあ?」

 いずなは()(じゃく)(なが)らも、(うつむ)きがちに()った。

「…いじゅなが意地悪(いじわる)ちた。『ママのバカ』って…」

「そうか、()れはいけないね。ママは()われて如何(どう)してたの?」

「…ママ、…泣いてた」

 いずなは()光景(こうけい)を思い出してしまったのだろう。また、うわーんと泣き出してしまったが、吾郎先生はいずなを(なだ)める様に、頭を()(なが)ら、

「ママ、菜月(なつき)ちゃんが()った事が、とても悲しかったんだと思うよ。…菜月(なつき)ちゃんがママにバカって()われたら如何(どう)思う?」

「…悲ちくなる」

「そう()う時は、如何(どう)したら良いかなあ?」

「…ママに、ゴメンすゆ」

「そうだね、それが良いね。菜月(なつき)ちゃんは良い子だね」

 吾郎先生はニコニコし(なが)らそう()った時、順子先生が、バツが悪そうにお茶とおりんごをお盆に載せて入って来た。順子先生は、いずなに(やさ)しく語りかけようとしたが、()れより先に、吾郎先生が(やさ)しく語りかけた。

「アハハ、順子さん。そんな所に立っていたら、いけないよ。いくら(やさ)しくて綺麗(きれい)な順子さんでも、菜月(なつき)ちゃんからはゴリアテに見えてしまうよ」

 順子先生は口の中でアッと()った。またしても、良人(おっと)意図(いと)に気がつき、お盆をテーブルの上に置くと、いずなの前にちょこんと正座した。娘はすぐに泣き(なが)ら飛びついて来て、()()った。

「ママごめんなさい、いじゅな悪い子。ごめんなしゃい」

 母親は()った。

「ううん、叩いてごめんね、菜月(なつき)ちゃん」

 順子先生はいずなを涙(なが)らに抱きしめた。そして、今更(いまさら)(なが)らに、吾郎先生の深謀遠慮(しんぼうえんりょ)に舌を巻いた。

先刻(さっき)愛娘(まなむすめ)平手打(ひらてう)ちをした。()行為(こうい)だけでも問題なのに、私は立った(まま)()れをした…)

 吾郎先生は妻に、子供と話すときは、同じ目線で話した方が良いよ。一人間対一人間として話さなければいけないよ、そう(さと)していたのだ。(さら)には、()良人(おっと)の事だ。恐らく、お互いに、まず頭を下げないと、交渉事は前に進まないよ。とも、()っているのだ。順子先生は良人(おっと)配慮(はいりょ)感謝(かんしゃ)(なが)らも、

「でも、あなた、ゴリアテはひどいですわ。もう…」

「アハハハ…。ごめんごめん。ところで、幼稚園(ようちえん)で何があったのかな?」


 順子先生は、今日幼稚園(ようちえん)での出来(でき)事を(つつ)(かく)さず、良人(おっと)である吾郎先生に伝えた。吾郎先生は、ふむふむと相槌(あいづち)を打ち(なが)(だま)って聞いていたが、(やが)て、いずなに語りかけた。

「へー、菜月(なつき)ちゃんはじゃんけんのチャンピオンなのか。じゃあ、パパとやってみようか…」

 いずなは満面(まんめん)()みで、(うれ)しそうに(うなず)くと、

「うん。いいお。いじゅな、負けないお」

 ジャンケン勝負は20回やった。パパとのジャンケンに、いずなもとても楽しそうである。勝敗はいずなの16勝4敗。相子(あいこ)は無かった。吾郎先生は、フムと(うなず)き、()()った。

「うん。菜月(なつき)ちゃんは、本当にジャンケンが強いね。じゃあ、トランプでも勝負しようか?トランプは何が出来(でき)るのかな?」

「『鬼しゃん』、『足しぇるかな?』、『仲良しさん』」

 吾郎先生は怪訝(けげん)そうな顔で、順子先生に(たず)ねた。

「ねえ、ママ、()の『鬼さん』と()うのは?」

 順子先生は笑い(なが)ら答えた。

「ああ、()れは、多分(たぶん)、『ばばぬき』ですわ。おばあさまが育てていらっしゃるお子さんもいますので…。幼稚園(ようちえん)側も気を使って…」

「ふむ、成程(なるほど)ね。幼稚園(ようちえん)も大変だなあ。()れで、『足せるかな?』と()うのは?」

「それは、『ブラックジャック』だそうです。足し算の練習にもなるもので、幼稚園(ようちえん)でも良くやらせているそうですよ」

成程(なるほど)ね。最後の『仲良しさん』は?」

 順子先生はニコニコし(なが)()った。

「それは、『神経衰弱(メランコリー)』だそうですよ」

 いずなが喜び勇んで()った。

「パパ、何しゅる?」

 吾郎先生は、居間の引き出しからプラスチック製のカードを取り出し(なが)ら、思案気(しあんげ)()った。

「そうだね。『足せるかな?』にしようか?」

「うん。いいお」

 ジャンケンの結果(けっか)(ディーラー)は吾郎先生だった。最初(さいしょ)互角(ごかく)の勝負だった。双方(そうほう)とも勝ったり負けたりで、2勝2敗。(しか)し、()(うち)俄然(がぜん)、いずなが勝ちだした。途中(とちゅう)奇妙(きみょう)な事が起きた。いずなは13でスタンドしたのだ。親の吾郎先生は5が見えている。親のため16以下ではドローしなければならない。吾郎先生が、フムと(うなず)き3枚目をドローしようとした瞬間(しゅんかん)である。

「パパ。じゅるだめでしゅよ。パパのは、()()()()の王子たま」

 順子先生は怪訝(けげん)な顔をしている。

「?」

 吾郎先生はニコニコし(なが)ら手を()め、引こうとしていたカードを、山札を持っていた左手中指で器用(きよう)にスッと押し込み、一番上のカードを引き直した。吾郎先生は(わる)びれた様子(ようす)も無く、

「はっはっは。菜月(なつき)ちゃんは、実に目が()いねえ」

 横できょとんとしている順子先生を後目(しりめ)に、開いたカードはハートのJだった。吾郎先生のバーストである。そして最後の勝負、今度もいずなは、何の逡巡(しゅんじゅん)も無く、14でスタンドしたのだ。順子先生に、当然(とうぜん)(よう)に、(たちま)()きあがる、些細(ささい)な、()れでいて、異質な違和感(いわかん)


何故(なぜ)?)


 吾郎先生も14である。矢張(やは)り、引かざるを得ない。結局(けっきょく)、引いたのはダイヤの8で、吾郎先生のバーストである。結果(けっか)、いずなの7勝3敗で終戦した。そして、順子先生は考える。そうだ。奇妙(きみょう)なのは、此処(ここ)なのだ。ブラックジャックの最終戦、菜月(なつき)がスタンドしたのは、7以下の札を引いて()れないと判断(はんだん)した結果である。()判断(はんだん)自体(じたい)は、然程(さほど)、おかしな事ではない。確率的に13分の7であり、(ほぼ)五分五分(ごぶごぶ)()っても()い。若干(じゃっかん)、7以下の可能性の方が大きい(わけ)であるが、(しか)()れも、判断(はんだん)()ってしまえば()(まで)である。(しか)()の場合、奇妙(きみょう)なのは、菜月(なつき)(なん)躊躇(ちゅうちょ)も無く()判断(はんだん)を下した点にあるのだ。まるで、次に来る(ふだ)を知っていた(よう)ではないか。吾郎先生は右手人差し指を口に当てて(しばら)く考えていたが、(やが)て、ニッコリ笑うと、

菜月(なつき)ちゃん。本当に強いねえ。じゃあ、今度は『仲良しさん』をやろう。…そうだ、ママ。(うち)にもう一組トランプあるかなあ」

 順子先生は、はっとして、

(たし)か、去年(きょねん)菜月(なつき)幼稚園(ようちえん)(もら)ってきた…」

「だるましゃんトランプ! いじゅな持ってくゆね」


 いずなは、先刻(せんこく)(あらし)(うそ)の様にご機嫌(きげん)である。彼女は二階の子供部屋にトランプを取りに行った。

菜月(なつき)ったら、あのだるまさんトランプがお気に入りなんですよ」

 いずなはトランプを持って、すぐに戻って来た。(たし)かに裏にはユーモラスなだるまさんが描いてある。吾郎先生はいずなのだるまさんトランプを借りると、裏返しに並べた。(さら)に、先刻(さっき)使っていたトランプも裏返しにして並べ、()()った。

菜月(なつき)ちゃん。今日は『本当に仲良しさん』を、やろう」

「どんなの?」

 いずなは、わくわくして、すぐに食い付いた。

「簡単だよ。同じ数字。同じマークで無いと仲良しさんになれないんだよ」

 いずなはニコニコし(なが)(うなず)いている。

「うん。分かった。やろう」

「よし、じゃあ、ジャンケンで勝った方が先攻(せんこう)だね」

 吾郎先生はそう()うとジャンケンをした。吾郎先生がチョキ、いずながパーで、吾郎先生の先攻(せんこう)である。

「ありゃ、今度も菜月(なつき)ちゃん、ジャンケン、負けちゃったね」

「えへへ…」

 吾郎先生は手前(てまえ)にある、だるまさんトランプから(めく)った。スペードの3である。そして、また、だるまさんトランプを(めく)った。スペードのQである。()の時、いずなが口を(はさ)んだ。

「パパだめでしゅよ。だるましゃんトランプに仲良しさんいましぇんよ。だるましゃんトランプの次は、パパのトランプ。そうすれば…」

 いずなは、ニコニコし(なが)ら、左手でパーを出し、右手でチョキを出し、自分の目の前に突き出した。先ほどの先攻(せんこう)決めジャンケンの組み合わせである。それを見た吾郎先生は、丸い眼鏡(めがね)の奥できらりと細い目を光らせたが、好々爺然(こうこうやぜん)としたいつものニコニコ顔に戻ると、()った。

「ハッハッハ。菜月(なつき)ちゃんは、本当に賢いねえ」

 (しか)し、笑顔とは裏腹(うらはら)に、人差し指を口許(くちもと)に当てて考え込んでいる。

「じゃあ、次はいじゅなね」

 いずなは、先程(さきほど)、吾郎先生が引いたスペードのQを開くと、

「えーっと、お(いも)たんの葉っぱのお姫たまは…」

 いずなはそう()(なが)ら、中程(なかほど)にあるトランプを開いた。()れは、何とスペードのQだった。


「!」


 順子先生は驚いた。えっなんで? と()う思いだった。(しか)し、そんな順子先生にお構い無しに、いずなは当て続ける。6組連続で取り、7組目で、

「ありゃ、違ったった」

 と、終了。()れには順子先生も、当然(とうぜん)、言葉が無かった。

()れは、もう、偶然(ぐうぜん)なんかじゃない。偶然(ぐうぜん)だとしたら、ざっくり計算しても、146億分の1くらいの確率だ。ありえない。一体(いったい)如何(どう)()うトリックなんだろう)

 順子先生は、(なか)(あき)(なが)ら見ていた。()れなら、子供達が菜月(なつき)をズル呼ばわりするのも(うなず)けた。(しか)し、大人の自分が見てもトリックが、皆目(かいもく)分からない。結局(けっきょく)、49組対3組でいずなの圧勝(あっしょう)だった。吾郎先生はと()うと、後ろ手を組み(なが)ら立ち上がり、

「はっはっは、菜月(なつき)ちゃん本当に強いねえ。よし、ご褒美(ほうび)をあげよう」

 そう()うと、居間の大型複合機から、A4用紙を20枚ほど取り出した。吾郎先生は、自宅にも併設(へいせつ)された病院とLAN回線で繋がっている大型複合機を置いていた。そして、いずなの横に座ると、いずなに渡した。


「はい、お絵かき用だ」

「わーい。ありがと、パパ」

 いずなは鉛筆をくそ握りにすると、お花の絵を描き始めた。()れをニコニコ(なが)めていた吾郎先生であったが、ふと、思い出した様に、A4用紙の短い辺を指差し(なが)奇妙(きみょう)な事を()い出した。

菜月(なつき)ちゃん。()の紙の短い辺。()れを1としたら、此方(こっち)の長い辺はいくつになるのかなあ?」

 順子先生はきょとんとしている。いずなは自分の広げた両手の指を見つめ(なが)ら、即座(そくざ)()った。

「お指じゃ、出来(でき)無いよお」

「そうか、お指じゃ出来(でき)無いかな?」

 でも、()(あと)、いずなはニコニコし(なが)ら、不思議(ふしぎ)な話を始めた。

「うーんと、小さい方にお(うち)を作るの、ちかくいお(うち)。まちかくの…。そしたら、お(うち)は1」

 そう()うと、いずなは指を一本だした。吾郎先生はうんうんと(うなず)いている。

()れで、大きい方にもお(うち)を作るの。まちかくの…。そしたら、お(うち)は2」

 いずなはチョキをだした。さらに、A4用紙の対角線に鉛筆でギギギと線をいれると、

「斜めの道にもお(うち)を作るの、まちかくの…。そしたら、お(うち)はたん」

 そういって、指を3本突き出した。そして、ニッコリし(なが)ら、

「ねっ、()うすればお指で、出来(でき)るでしょ」

 順子先生は、いずなの分かった様な、分からない説明を、(うつ)ろな面持(おもも)ちで聞いていた。如何(いか)にも、幼児(ようじ)戯言(ざれごと)である。如何(どう)やら、(いえ)の数を()っているのであろうが、それに対して、吾郎先生はうんうんと(うなず)(なが)ら、()った。

「そうだね。()の通りだね。菜月(なつき)ちゃんは本当に賢いね」

 いずなは、えへへと、(うれ)しそうに笑うと、

「ちかくいお(うち)を作りましょ♪ ちかくいお(うち)を作りましょ♪」

 と、お歌を歌い(なが)ら、(いえ)の絵を描き始めた。吾郎先生はそんないずなを腕を組み(なが)ら、口許(くちもと)に人差し指を当て見つめていたが、()のうち、いずなはテーブルに()()して気持ち良さそうにお昼寝を始めてしまった。幼稚園(ようちえん)の上っ張りのままだったが、吾郎先生はいずなを負ぶさると、

成程(なるほど)ねえ、四角いお(うち)か…。ママ、もう一杯(いっぱい)、お茶をお願い出来(でき)るかな。僕は、菜月(なつき)を子供部屋のベッドに寝かして来ますから…」

「あっ、はい」

 と、順子先生。彼女は、一生懸命(けんめい)思考を辿(たど)るも(なに)(なん)だか、さっぱり分からない。まるっきり五里夢中(ごりむちゅう)で、まるで、(きつね)にでもつままれた様である。幼稚園(ようちえん)の先生方が奇妙(きみょう)だと()っていた理由も良く分かった。相対(あいたい)の勝負である以上、()の勝率は50%、(すなわ)ち、2分の1であるべき(はず)である。にも(かかわ)らず、ジャンケンにしても、トランプにしても、あの勝率は尋常(じんじょう)では無い。考えれば考える程、不思議(ふしぎ)な話である。何か取り()めた理由がある(はず)なのだが…、順子先生は超常的な現象まで疑った程だ。医師(いし)である自分が信じられ無くなる。順子先生はお茶をお盆に()せて居間へ行くと、夫は、電話でお寿司屋へ出前を頼んでいた。順子先生はテーブルの上にお茶を置くと、吾郎先生の隣に座った。

「あなた、菜月(なつき)如何(どう)しました?」

「ああ、ママ。グッスリ寝てるよ。疲れたのだろうね。ママも疲れたろう。明日は休診日だよ。今、お寿司を頼みました。ママもゆっくりしたら良い」

「ありがとうございます。…あの、それで、菜月(なつき)について、何か気が付いた事ありますの?」

「…まあ、(にわ)かには、信じ(がた)い事だけれどもねえ…。菜月(なつき)は、他の園児達から見れば、民話などに登場するサトリの様に(うつ)ったのだろうね。親としては、(はなは)穏当(おんとう)()く発言ではあるけど…」

「?」

 そう()うと、吾郎先生は頭を()(なが)ら、ズズズとお茶を(すす)る。そして、(おもむろ)に語りだした。一体(いったい)、どの様なトリックが伏在(ふくざい)していると()うのだろうか?

いずなの幼児期の不可思議な逸話。此れには本当にトリックがあるのだろうか? 数奇な経歴の持ち主である吾郎先生の推理が冴える。そして、いずなの悲しい初恋物語の行方は? 次回、『第25話 Goodbye To Love【後編】』。おたのしみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ