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  作者: 春日井箱
1/1

フェアリ 1

おっさん、いいよね。おっさん、悪くないよね。

というおっさん賛歌をひたすら貫く予定です。


「嘘でしょ! 何でっ…………!」

『グラァアアアアアアア!』


 少女の声をかき消すように、

その野獣は雄たけびを上げた。

元は綺麗な装飾を施されたであろう鎧は

辛うじて原型を保っており、

既に足手まといな武装となり果てている。


 とはいえ、

わざわざ脱いでくれるのを待ってくれるほど

目の前にいる野獣に

知性と情が備わっているとは全く思えない。


 攻撃力には自信があった、

学院の卒業試験でも

歴代最高の得点で

首席を勝ち取った技が自分にはある。


 破壊不能とまで言われた《創造の岩》を、

フェアリ・メルベイドは打ち砕いたのだ。


 それなのに、

フェアリの攻撃は野獣に通じない。

力を込めようとしても、

すぐさま間合いから逃げられる。

 かと思えば、その大きな角で木々をなぎ倒し

その木々を器用に放り投げて攻撃してくる。

 攻撃自体は大したことは無いが、

どうも息が合わない。


 そうしているうちに、

フェアリの体力は消耗を続けて、

普段なら絶対当たらないような攻撃が

そのの膝を掠めた。


 攻撃は想像した以上に鈍く響き、

一気にフェアリは窮地に立たされる。


 もちろん、

これが初めての実戦経験では無い。

無いが、()()で戦うのは

その限りではなかった。


『グラァアアアアアアア!』

 後悔をする時間も無く、

大型の野獣であるフォレストジープの巨体は

フェアリの身体めがけて猛突進してくる。


 出会い頭で

相打ちは出来るかもしれない。が、

フェアリは別にここで

死んでもいいと思っているわけでは無い。


 もともと、ただの腕試し。

いや、憂さ晴らし程度に

単独討伐でも洒落こもうとしたわけだった。

 

「ひっ……!」

 瞬間の怯えが、全身に伝わった。

もう逃げ場はない。

身体はともかく、弱まった心は

その場から完全に動けなくなってしまったからだ。


「……おいおい、何やってんだか。

とりあえず《滞縛(ディフインペリオ)》」


 フェアリにはその声は届いて居なかった。

最早、気絶寸前の恐怖に

五感は全て鈍くなっていた。


だから、フェアリが目の前にいた

フォレストジープの動きが止まるのを目にしたとき、

「ああ、これが死ぬ前に見るという例の……」

と思ったという。


 ズウウン。

彼が手を振ると、

フォレストジープはゆっくりとその

巨体を地面に伏した。


 服従したわけでは無い。

彼の力に屈服して、その命を散らしたのだ。


「やれやれ、そんな身一つで単独討伐ってか?

……お嬢ちゃん、討伐依頼を舐めすぎじゃないのかい。

そんなこっちゃ、命がいくつあっても足りないぞ」


 口調からして、

相当年上だと思った。


 フェアリは正直、年上が嫌いだった。

命の危険から助けて貰った直後だというのに、

 フェアリの心は瞬間的な反発心で一杯になる。


「よ、余計なお世話です! 

あ、相打ちでも討伐は出来ましたよ!」

「おいおい。一人一殺って、

お前さん魔獣でも相手にしているつもりか?

そんな風に死んでもらうために、

お前さんの親御さんは

こんなに大きくなるまで育てたってのか?

そういう親不孝は感心しねえな」

「ぐっ、お、親は関係ないでしょう! 

私はとっくに成人して……え?」


 フェアリが目の前に立っている男を見上げる。

口調は完全におっさんのそれだが、見た目は若い。

 いや、というか……15.6歳程度にしか見えない。


「え? あ、あんた……いくつよ?」

「ん? 今年で15歳だな」


 ポリポリと首筋を掻く少年。

そのあどけない顔とは裏腹に

仕草と醸し出す雰囲気はまさに老成した

おじさんそのものだった。


「と、年下じゃないの! え、偉そうに!」


 フェアリは立場も忘れ、大いに憤慨した。

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