九十六 冷しに飽きたら
冷やし中華の麺をこねている。今日のお昼に食べる為と思ってこねていると何やら視線を感じる。振り向いてみたが誰もいない。気のせいだと思ってまた麺を練り始めているとやっぱり誰かの視線が、肌にピリピリするように、感じてきた。材料を一度置いて、手を洗いゆっくりと視線を感じる所へ気配を消してゆっくりと進んでみると……。
ロートゥスお姉様が、階段を駆け下りたりしながらこっちを見ている。前を向いた瞬間に、ゆっくりと気配を消して後を追うと二階へと行くのが分かる。壁を登り上から見ていると考える仕草をしている。
「フルグルに気づかれていないな」
「よし、僕も気配は消せているな」
「僕から驚かしに言ってみよう」
ロートゥスお姉様が、階段の方に向かいゆっくりと降りて行くのを見てから気配を消して、後をついていく。勿論気づかれる訳がないが、調理場の所に行くのが見える。
「あれ。フルグルが居ない」
「あれ。どこに行った」
「ロートゥスお…ね…え…様……」と僕は、後ろから囁くように声をかける。
「ウァァァァ」
「ビックリしたぁぁぁ」
「ビックリしたじゃないでしょ」
「何をしているのですか?」
「ご飯が気になって見に来ただけだよ」
「全部みてました」
「全部みてました」
「大事な事なので、二回いいました」
「覚悟ありますか?」
「ごめんなさい」
ロートゥスお姉様は、怒られる前に直ぐに謝ってきた。それも綺麗な土下座をしている。それを見てしまったらなんか怒るのも馬鹿らしくなってきて、どうしてそんな事をしようとしたのかを聞いてみる事にした。
「何でそんな事しようとしたの?」
「カメッリアお姉様の気配を消すのが凄かったから」
「あれは、もはや普通の人じゃできないよ」
「やっぱり普通じゃないだ」
「あれはね、目の前にいたとしても気づかないレベルなんだよ」
「それくらい怖いだよ」
「フルグルでも怖いて感じるだね」
「いっぺん変わってみる?」
「ごめんなさい。無理ですあれは……」
「次に、似たような事言ったら幻術使って変わってもらうからね」
「闇を感じるよ」
「それよりも麺を作っているみたいだけど」
「また冷やし中華だとあきあきだよ」
「冷やし中華なんて作りませんよ?」
「……ん?」
「あれ麺だよね」
「麺ですね」
「麺冷やすよね」
「冷やしますね」
「それなら?」
「違いますよ」
「エェェェ」
「今日作るのつけ麺ですよ」
「何が違うの?」
「濃いスープに、麺をつけて食べるですよ」
「それは、楽しみだ」
「お昼になったら呼びますから戻ってて下さい」
「……うん。分かったよ」
やっと麺の続きが出来る。つけ麺て言うくらいだから平たい麺で、ちぢれ麺だよねと思いながらゆっくりと練っていく。後は、着るだけだなと思いながら太く平たくちぢれた麺が完成する。
ここからスープを野菜、鶏がら、豚骨、牛出汁を分けて煮込んで、ここだと思った所で、一緒にブレンドする。ここに隠し味として、粉末の魚の出汁をいれて弱火でかき混ぜて完成する。
「お姉様達ごはんだよ」
「「「はい」」」
「凄く食欲をそそる匂い」
「美味しそうな匂いだね」
「この匂いが、つけ麺のスープなんだね」
「味噌と醤油どっちがいいですか?」
収納ボックスから手作り味噌と醤油をだして、何にするかを聞いてみる事にした。いつもならこの味だけにするのだが、選ぶのもいいだろうと思い。今日は、珍しく選択を出して言ってみる事にした。
「僕は、醤油がいいな」とロートゥスお姉様が言って。
「私は、味噌がいいな」とマールムお姉様が決めて。
「醤油七の味噌三で、作るオリジナルがいいかな?」とカメッリアお姉様が言ってきた。
「醤油、味噌、オリジナルね」
スープを作り、チャーシュー五枚、刻みネギ、かまぼこ、味付け玉子、もやしを入れてから皆がいる机にと持っていく。麺は、茹でて氷で冷やした物だ。
「この冷たい麺をスープにつければいだよね」
「はい。それであってます」
「スープは、食べ終わる頃に言って下さい」
「スープを足して薄めて飲めますので」
「それは、それで楽しみだ」
皆それぞれに、麺とスープがいきわたり。いただきますと掛け声が出た途端に、食べ始める。麺の量は、三人前だが大丈夫だろう。食べている間何故か凄く静かだった。
すする麺の音くらいしか聞こえない程に、ゆっくりと時が流れれていくのだった。皆からは、美味しかったと絶賛だった事が嬉しかったりした。




