8.女騎士を追い出す
・今回のお話に登場する人物【女騎士、賢者】
「くっころさん、ちょっといいですか」
「賢者殿、私をくっころさんと呼ぶのはいい加減やめて貰いたいのだが」
本日はにわか雨。必殺技の鍛錬日和な昼下がり。
勇者パーティーの賢者は冒険者ギルドの修練場で女騎士に例の話を持ち出す。
「では女騎士さん、ちょっといいですか」
「……私に何の用か?」
改まった態度を取る賢者を訝しく思いながら対応する女騎士。
騎士とは常に冷静沈着を心掛けるものなのだ。
「勇者パーティーから女騎士を追い出すってのはどうなんでしょう?」
「な、なんだと!?」
冷静さとは何だったのだろうか。
いや、むしろパーティーから追放を言い渡されたと思ったのなら冷静でいられることが稀なのだろう。
「どういうことだ賢者殿!」
「ちょっ落ち着かれよ、女騎士さんや」
どうどうと宥めようにも詰め寄る女騎士の焦燥は中々静まらない。
女騎士には差し迫った深刻な問題と受け止められたようだった。
「もしも、という話であって決定事項ではないんです。だから落ち着いてください」
「そ、そうなのか……?」
ホッとした様子で「よかったぁ」と小声で呟く女騎士を尻目に説明を進める賢者。
騎士道を踏み躙り、その誇りを穢したことは万死に値することだろう。
「そうですよ。第一にパーティーメンバーの同意が必要でしょうし」
「同意があればするつもりなのかっ!?」
無いとは言い切れないのが賢者クオリティ。
再び動揺する女騎士に話を続ける賢者。
「いや、だって前衛がまた増えてしまったことですしおすし」
「私は魔法も使えるぞ!」
「……そ、そうですねー」
攻撃も防御も回復も、万能さでは勇者と同じタイプの女騎士。
ただし、その全てが勇者と比べると劣っているという下位互換でしかない。
「魔王軍に攫われた姫を奪還するまでは、この旅を諦める訳にはいかない」
「ご立派な忠誠心なことで」
「姫様の供をしている身なら当然のことだ」
冒険のお供に!
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この物語は王の御身を守護する宮廷魔術師連盟の提供でお送りしておりません。
「その姫をまんまと誘拐された訳ですが」
「うぐっ」
「かしこさが低いなりに頑張ってるんですね」
「うぐぐっ」
女騎士のステータスは言うならばオールラウンダーのように均等に割り振られている。
そのパラメータはどれ一つとっても勇者より劣る。
「騙し討ち的な駆け引きとか謀略とかにも弱そうですし、騎士の誇りが作戦の邪魔になるなんてことは無いですよね?」
「そ、そんなことは……」
無いとは言い切れないのが女騎士クオリティ。
一切の手を緩めずに話を続ける賢者。
「騎士ってくらいだから盾を扱えるのかと思ったら非力だし」
「賢者殿ッ、女だからと甘く見ないで貰いたい!」
「それは敵勢を止めてから言って貰いたい」
「ぐぬぬ」
女騎士は特別に使えない子という訳ではないのだが賢者はどうしても勇者と比べてしまう。いくらなんでも言い過ぎたかとフォローを入れる賢者。
「で、でも早馬を出したい時は馬を扱える人材として重宝しますよ!」
「私はパシリか!?」
・今回のお話に登場した人物紹介
女騎士……雑魚モンスターになんか負けません。でもポンコツ。
「くっころとはなんなのだ」
賢者……恐るべき頭脳の無駄使いをしている。ある意味ポンコツ。
「閃いた!」




