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6.奴隷を追い出す

・今回のお話に登場する人物【奴隷、賢者】




「奴隷ちゃん、ちょっといいかな?」


「は、はい! 賢者様! なんなりとお申し付けくださいっ!」


 本日は雷雨。衝撃の展開日和な昼下がり。

 勇者パーティーの賢者は二人きりとなった宿屋の一室で奴隷に相談する。


「勇者パーティーから奴隷を追い出すってのはどうなんだろうか?」


「死にますね」


「おいやめろ」


 もし奴隷がここで死んだら真っ先に疑われるのは賢者だろう。

 ついにやっちゃったかーと思われる可能性は大いにありけり。


「やめますね」


「素直!?」


 自殺未遂に終わった凶行を止めようと慌てていた賢者はずっこけそうになる。

 奴隷として生きてきた少女は命令に忠実なのだ。


「拾われたこの身この命……勇者様に賢者様に聖女様と名高い方々に捨てられてしまったとあっては奴隷として生きていく価値がありません」


「一応、『元』奴隷なんだけどな……」


 違法な奴隷オークションを勇者パーティーの総力でぶっ潰したのはいいが、帰る故郷も無い絶望しきっていた少女が一人いた。

 聖女が献身的なアフターケアをした結果が勇者パーティーに生涯の忠誠を誓ったスーパー奴隷の誕生である。


「す、すみませんっ! 私この生き方しか知らなくてっ」


「いや、いいって。奴隷根性が染み付いちゃってるなぁ」


 苦笑いしながらも説明を行う賢者。

 説明を受けた奴隷はなんとも言えない表情をする。


「マイブームですか……?」


「その通り。まあ暫し付き合ってくれ」


「はあ、構いませんが」


 まだよく分かっていないような顔をする奴隷。

 それに構わず賢者はいつものペースで続けた。


「話を戻すが、仮にも勇者パーティーに奴隷が所属しているのは見聞が悪く(はばか)られるだろう?」


「ガーン」


 奴隷は大きなショックを受けたようだ。

 落ち込む奴隷に賢者は追い討ちをかける。


「それに働き過ぎ。あんまし命令口調で言いたくなかったけど適度に休んでって言ったよね? 細かいのも挙げると奴隷時代の癖が偶に出るし。食事する時とか座席あるのに床で食べようとするの、アレやめてね」


「あ、あう……」


 つまみに合う!

 冴えないおっさんが選ぶ、味覚に冴え渡る銘酒カタログギフトはお歳暮に。

 この物語は無類の酒好きドラゴンたる竜王の提供でお送りしておりません。


「ただ、奴隷ちゃんは意外にも戦闘では前衛職として活躍している」


「本当ですかっ!?」


 本当である。戦闘時は見事なまでの槍捌きを見せていた。

 世界竹で作られた槍はパーティーメンバーの武器の中では現在、最強を誇る。


「ただ最近では蛮勇な突進が目立つけど」


「うっ」


「今のところ、パーティーメンバーで一番死亡率が高いのが奴隷ちゃんです」


「うぅ……」


 教会の聖職者から、その勇猛果敢さを褒め称える手紙が届いたのがつい最近。

 教会本部からは聖女様を守る近衛騎士にならないかとお誘いを受けたそうな。


「やっぱり私なんかが勇者様方と旅をするなんて身の程知らずでしたよね……」


「ちょ、何処行く気」


 失意の奴隷はフラフラと部屋から出ようとする。

 賢者は行き先を尋ねた。


「身投げしてきます……」


「やめてくれませんかね!?」


「皆さんには迷惑が掛からないようにしますから!」


「いや、そういう問題じゃないから! 命を大事にして欲しいってことだから!」


 命のあり方について考え直した賢者。

 これは明日の天気は槍が降るか。


「死なずに生きたままジワリジワリと苦しむことをお望みなのですか……?」


「なんでそうなる!?」




・今回のお話に登場した人物紹介


 奴隷……なんでも言えばなんでもやってくれる筈。実は辛いものが好き。

「この命、捧げます!」


 賢者……なにが相手でもなんでも殺ってくれる筈。実は従順な子が好き。

「死をも恐れぬ狂戦士が何度でも蘇生できるってのは問題だな」

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