5.盗賊を追い出す
・今回のお話に登場する人物【盗賊、賢者】
「盗賊ー、ちょっといいかー」
「なんだ賢者の兄ちゃんか。オイラになんか用か?」
本日は猛吹雪。火竜の洞窟探検日和な昼下がり。
勇者パーティーの賢者は魔法のかまくら内で盗賊に呼びかける。
「勇者パーティーから盗賊を追い出すってのはどうなんだろうか?」
「兄ちゃん、ついに頭がイカれたのか?」
「なんだとこの犬ガキめ」
賢者は自分よりも背の低い、獣の耳が生えた盗賊の頭をわしゃわしゃと撫でた。
拒絶はしないものの、少し毛を逆立てて反論する盗賊。
「オイラは犬じゃねぇ狼だ!」
「まあ実際は猫なんだが」
「もっと酷くなった!?」
それは悪化しているのか? と賢者は疑問に思いながらも一件の説明を行った。
何気に盗賊へと引っ付き天然カイロ扱いしていたが。
「へぇー、マイブームか~」
「ああ、加えて最近は追放を言い渡されたのかと勘違いするパーティーメンバーの反応を楽しみにしていたりもする」
「兄ちゃん、大人気ないな」
主婦の方々に大人気御礼!
勇者パーティーに所属する元奴隷が執筆した暮らしに役立つ節約術集。
この物語はうだつの上がらない尻に敷かれた夫達の提供でお送りしておりません。
「それでオイラを追い出そうと考えたのか?」
「いいや。拾ったペットを捨てるのは飼い主の覚悟不足だ」
「ペット扱いすんなし」
飼い主の責任とペットのいのちだいじに。保健所も大助かりなことだろう。
ワンワンニャーニャーと吠え鳴く盗賊を賢者は宥める。
「冗談だ。可愛い弟分を置いていく程に非情じゃないさ」
「まあ、勇者の兄ちゃんとか聖女の姉ちゃんとか、全員に見捨てられたらスラム暮らしに戻るだけだしな」
盗賊が勇者パーティーに入ることになった切っ掛けは、とある街で盗賊が聖女の財布を盗み出したことから勇者と賢者が知勇兼ね合わせた捕り物をし、その結果がスラム暮らしの孤児の犯行と分かって、聖女が勇者パーティーで保護するべきだと強く主張したからである。
「生き急ぎ過ぎだろ……またネズミ小僧に戻るつもりなのか」
「ネズミじゃねぇ狼だ!」
狼小僧は今や王都で演劇にもなっている大人気作。
尚、本人は義賊として活動したことは無い模様。生きるのに必死だったとか。
「でも、もし盗賊を勇者パーティーから追い出したりなんかしちゃったら聖女様が激怒なされることだろうな」
「聖女の姉ちゃんが怒ってるところとか見たことないな」
普段、温厚な人物がキレると……という奴である。
いつもキレキレにヤバイ人物がそこにいることについては異世界に置いておく。
科学が発展した世界の平和ボケした小さな島国辺りでいいだろう。
「折角、綺麗に洗ってケモミミ頭とか尻尾の毛とかフッワフワな手触りになったのに逆戻りになるのもな」
「頭撫でんな」
そう言いつつも拒否はしない盗賊。
ちなみに聖女が相手だと顔を赤くしながら借りてきた猫状態の如く大人しくなる。
「第一、盗賊として活躍しているお前がいなくなったら誰が偵察任務に就くんだ? 誰が索敵を行うんだ? 先制攻撃だって役立ってるぞ」
「暗殺の技術は賢者の兄ちゃんから習ったんだけど」
「俺は知識だけだ」
衛兵さんこいつです。
身寄りの無い孤児に裏家業の暗殺技術を教え込むとはやってくれる。
「第二に、迷宮ダンジョンや魔王軍の拠点地域、敵地での活動に際して罠の発見や解除ができなければ大いに苦労するだろう」
「へへん、オイラに感謝しろよ」
「ああ、財宝がぎっしり詰まった宝箱の罠を解除できることは感謝しなきゃな」
「兄ちゃん、俗物的だな」
賢者の目が金貨になっていそうだ。
盗賊よりも欲深いのはどういうことだろうか。
まずはその煩悩を頭から追い出す必要性を検討して貰いたい。
・今回のお話に登場した人物紹介
盗賊……猫の獣人。本人は狼だと言い張る。
「いい加減に尻尾触るのやめれ」
賢者……戦う変人。本人は賢人と言い張る。
「あと五分」




