1.勇者を追い出す
追い出す とは
・今回のお話に登場する人物【勇者、賢者】
「なあ、勇者ー」
「んー、どうした賢者ー?」
本日は晴天。魔王討伐日和な昼下がり。
勇者パーティーの知恵袋たる賢者はこの日、勇者に語り出す。
「勇者パーティーから勇者を追い出すってのはどうなんだろうか?」
「……は?」
突拍子も無いことであった為か、流石の勇者も反応が随分と遅れてしまった。
それもそうだろう。無二の親友たる賢者から戦力外通告も同然の――
「待て。もう一回言ってくれ」
「勇者パーティーから勇者を追い出すってのはどうなんだろうか?」
「うん、聞き間違いじゃなかったわ」
確認行為は時に大事である。
そんな至言を忘れないのは勇者という英雄だからこそか。
「勇者パーティーから勇者であるオレを追い出したら、もうそれ勇者パーティーじゃなくね?」
「だよな」
「そうだよ」
その通りである。
一体全体どういう訳なのか説明して貰う勇者。
「マイブーム?」
「ああ、この勇者パーティーから『コイツ、要らないんじゃね?』という人員を追放する必要性を検討することが最近、俺の中で話題になっている」
「リストラかよ」
「人員を削減するだけがリストラではないがな」
そう言いながらも賢者は説明を続ける。
賢者から「勇者パーティーから不要なメンバーを追放するのは賢者の役目」という良く分からない理論を展開されたが、かしこさは低くないが高くもない勇者にはやっぱり良く分からなかった。
「つまり、あくまで仮定の話なんだな?」
ホッと息をつき、少し安心した勇者。
勇者の確認に目を逸らす賢者。
「……本題に入ろう。まず最初に――」
「おい、返事を返せ屍賢者!」
「勇者は――」
「聞いてない!?」
必ず効く!
聖女印のポーションは教会で。
この物語は空飛ぶスパゲッティモンスター教の提供でお送りしておりません。
「勇者は万能な戦士として且つ、リーダーとしてこのパーティーの要となっている」
「そ、そりゃあ勇者だからなっ!」
「だが、実際のところ必要と言えるだろうか?」
「え?」
「万能とは聞こえがいいが器用貧乏と言い換えることができる。前衛は剣士をはじめとした専門の職業である者達には敵わず、魔法も攻撃面では俺に劣り、回復面では聖女様に劣る」
「だ、だがオレはパーティーリーダーとして……」
「基本的に前衛に出る以上は効果的な指示は出せない。むしろ賢者である俺の方が有効な助言を戦闘の際、随時行っている」
「た、確かにー!?」
敵の弱点を見抜き、また敵の怪しい行動にもすぐに対応していた賢者の実績を思い出す勇者。
「勇者は持ち前のリーダーシップを発揮し、ムードメーカーとしてメンバーを引っ張ってはいる。また国民にも希望を与える偶像的な象徴ではある勇者だが、その影響力がマイナス面を持ち合わせていたりもする。この前も勇者の権威を借りようとした為政者が現れて無理難題を――」
「賢者ぁあああっ!」
「ウヴォア」
勇者はいきなり賢者にタックルするように抱き着く。
会心の一撃だったのか賢者はモンスター染みたうめき声をあげた。
「な゛あ゛、オレ悪いことしたがぁ~!? グスっあれば直ずがらぁああ~。オレが悪がっだがらぁああ~ズビビ!」
「ええい、寄るな鬱陶しい! あっコラ! ローブで鼻水を拭くんじゃない!」
「見捨でな゛いでぇぐれぇえ゛ええ~」
「ああもう! 仮定の話だ馬鹿! ただでさえ極一部の輩に勇者と賢者で良からぬ噂をされているというのに! 勇者×賢者とか賢者×勇者とか、どっちが先なら攻めか受けかなど知りたくもなかったよ!」
「うヴぁあぁあああ~」
「ぎゃああああああ! 新調した装備がああああああ!」
勇者パーティーから勇者を追い出そうとすると勇者パーティーの前に勇者が崩壊する。賢者はそう結論づけた。
・今回のお話に登場した人物紹介
勇者……言わずと知れた勇者様。賢者とは生まれ故郷からの仲である。バカなところもご愛嬌。
「魔王はオレが倒す!」
賢者……こいつは本当に賢いのだろうか。考える馬鹿なのか考えても馬鹿なのか。嗚呼、考えるだけでも馬鹿馬鹿しい。
「本日の目玉商品は勇者汁の付いたローブ、今ならなんと金貨百枚ポッキリだよー」




