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九十六部

「それでは皆さんお揃いになられたので説明を始めたいと思います。」

 竹中が山本を呼びに来てから、3時間経ってから全員が集まり、黒田が言った。

「え~と、まず最初にですね・・・・

 ああ、これから行きます。第一回国会議員資格認定試験の実施方法に関して、一つ、実施場所は警視庁の会議室において一斉に行う。

一つ、候補者は前もって配布される『候補者マーク』を左胸につけ、実施会場に現れること。

一つ、候補者には事前に選定された警察職員が同行し、その行動の一部始終を監視するものとする。

 なお、警察職員は当日になって初めて誰を担当するかを知らされるものとする。

一つ、実施場所に一歩でも踏み込めば、それ以降の私語を完全に禁止する。

 もし、私語を行った場合は警察職員の判断において厳罰に処するものとする。

一つ、不正行為が判明した場合にはその者の被選挙権を20年間停止するものとする。

 等の規定があります。

 私達に関して、関係があるのはこの監視役の警察職員という所です。

前もって選定されるはいえ警察職員の中からランダムに選ばれるという事ですし、これは候補者による買収工作を防ぐためのものであり、皆さん各自の判断で候補者が不正を行ったと思えば即時報告をして頂く形になります。

 試験が始まったら、監視役の仕事は候補者が問題を解き終わるまでその動きを全て監視することにあります。

 まず、候補者の利き腕とは反対側に立ち、カンニングなどの不正行為をしないか、あるいは警視庁内で私語をしないかを監視してください。

 1・2回くらいなら注意でかまいませんが買収などの話の場合は即アウトだと思ってください。

 え~とここまでで何か質問がある人はいますか?」

「選定方法がランダム言うのは嘘やろ?

 わざと選ばんかったら、こんな少数の課の人間が全員選ばれることなんかないやろからな。」

「そうですよね、選んでいるのが警察の上層部なら自分の息のかかった人間を選びたいと思いますよね。」

 竹中の言ったことに伊達が乗っかって言う。

「総監直属の課なので仕方ないとは思います。

ただ、皆さんが大臣や総理の監視役になることはありませんし、交友関係にある人、少なからず知り合いの人の担当になることはありません。

 さすがにそこまでやると不正行為になりますからね。」

 黒田が言うと、竹中は肩をすくめて黙り、伊達が

「担当の候補者が気に入らなければ即退場させることもできると思うんですけど、それに関してはどうですか?」

「AIを搭載した防犯カメラで監視は行います。候補者だけでなく、警察職員の中にも不正を行う者がいないかはしっかりと監視されますし、見落としがない様にする手立ては他にも用意されているそうです。」

「トイレや急病の時などはどうするんですか?」

 大谷が聞き、黒田が何かを取り出した。

「これを使います。トイレに行きたいときは青の札を挙げてもらい、急病などの緊急事態の時は赤の札を挙げてもらいます。

 筆記具を落とした際に警察職員が気付いていない時は黄色の札を挙げてもらいます。」

「警察職員に対して・・・その~・・・なんていうのか、傲慢な態度の人とかもいるじゃないですか?そういう人に対してはどういう感じで接すればいいですか?」

 三浦が聞き、黒田は困ったように笑いながら、

「そういう人もたぶんいますけど、しゃべらせなければ特段対応策を講じる必要もないと思います。

 年上の人であっても、政界の重鎮と呼ばれる人であっても、今回の試験に合格しなければただの偉そうな人ですから。」

「何人くらいが受験するんですか?

 現役の国会議員は全員受験するんですか?」

 上田が聞き、黒田が資料を確認してから

「750人くらいですね。

 現国会議員が衆参合わせて717人に加えて、新規で受験を申し出た人が33人となってます。

現国会議員は強制的に受験させられることになったみたいですね。」

「何でそんなことになったんですか?」

 上田が聞くと、竹中が

「つるし上げに決まってるやろ。」

「そうでしょうね、要するに現国会議員の中にどれだけ無能でその資格がなかったものが混じっていたのかを鮮明にするための儀式と言ったところでしょう。

 当然、辞退した者もいたようですが、それを許さないところに今回の試験の本気度を示したかったのかもしれませんね。」

 片倉が言い、黒田が

「まあ、そういうことです。

 これは同時に、試験後もその政治家だった人が影響力を持ち続けることを抑止する狙いもあるようです。

 試験の結果は公表されますし、偉そうにしていた人が点数を全く取れなければ、何で今まで偉そうにしてたんだとなりますから。

 要するに実力第一主義です。点数をたくさん取れた人の影響力は政治家として高まり、点が取れなければ失脚する。

 試験に落ちれば笑いものになる。偉そうな発言をしていた人ほど落選した後のバッシングは恐怖でしかないでしょうね。」

「変革のための犠牲というべきか、それとも今までの付けを払わされてるだけと考えるべきか、微妙なところだな。」

 山本が言い、黒田が

「それではこの程度で説明を終わります。

 また、試験前日に集まっていただいて、担当者を各自お伝えします。

それまでは引き続き今回の事件の捜査にあたってください。」


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