八十部
警視庁監査室室長坂本警部補の逮捕により、平成攘夷軍のテロ行為は終わるものだと、誰もが思っていた。
坂本のパソコンからは、動画の投稿履歴や指示書などが見つかり、事件の捜査も着々と進んでいた。
誰もが事件は終わったと思っていたのだ……………………………
『我らが同志、坂本は捕まった。
だが彼が何を思い、そしてなぜ蛮行に及んだのかを日本国民は知らなければいけない。
我らこそが真に日本のことを考え、口先だけで何もしない者達とは違い、行動に移してでも国民に問うたのだ。
偽りの中で生まれる平和で満足か?
いつ崩れるかわからない階段をこのまま上り続けるのか?
誰かが足場を支えてくれるとまだ信じているのか?
誰もがみんな同じように、誰かがと思っているだろうことを理解しているのか?
聞け、我らか同志の叫びを。
考えろ、人任せではなく自らの頭で。
我ら平成攘夷軍はまだ終わっていない、国民がまだ甘い夢の中に居るのなら、我らの砲撃で目を覚まさせてやる。
犠牲となった同志の死を私は絶対に無駄にしない。』
新たな動画が投稿され、山本達が監査室において坂本と話していることの全ての音声が流された。そして動画はまだ続き、
『我らが犠牲になった同志は、自衛隊からの有志であり、そして日本にあって存在してはいけない部隊から選び抜かれた精鋭なのである。
隠密の暗殺部隊の名を組織した人物は鬼兵隊などと呼び、世界各国の日本に害を及ぼす要人から、日本国内の反乱分子に至るまでを手にかけて来た者達だ。
以下は、参加した者達の名前と所属である。
西郷隆康 陸軍軍曹
武川淳司 海軍一等兵
笹森祐一 陸軍二等兵
……………………………………………
………………………………………… 』
総勢80名以上の名前と自衛隊における所属と階級が一覧となって表示された。そして、
『彼らは護国のために志願し自衛隊に入隊したが、優秀がゆえに暗殺部隊に配属され、そして守ることなく殺すことを命じられ、唇を噛みながら守るべき国民に手をかけたものもいただろう。
ではなぜ、彼らはこんなことをしなければいけなかったのか?
それは現防衛大臣高杉晋太郎によって組織され、彼の邪魔になる存在を消すための組織として成立してしまったからである。
国の防衛の最高責任者が腐った人間である以上、守られる命は選別されるのだ。
全国民を守らず、権力者やその関係者から守られてしまう。
平民よ、自らを貧民と思う者達よ、奪われる命はあなた達から始まるのだ。
国の上層部が腐っているなら、その上層部を破壊するしかない。自らと大切な人を守るために、今こそ立ち上がるべきなのだ。
平成攘夷軍の奪った命は、帰りを待つ人がいる大事な命だっただろう。だが、同志を含めた彼等の犠牲の上に立ち、何も変えることができなければ、彼らは犬死にではないか。
立ち上がれ、立ち上がれなくても考えろ。尊い命の犠牲を無駄にするな。我らの行いがいつか正しかったと思われる日が来ないように、考え、そして行動せよ。
我らは平成攘夷軍。我が名は岩倉、まだ終わってない。』
動画は終わり、様々な情報が盛り込まれていたため、各報道は全面的にこの情報を報道した。




