八部
「どう思う、藤堂?」
加藤は真剣な顔で、藤堂に向かって聞いた。藤堂は呆れた顔で
「一応聞きますけど何がですか?」
「決まってるだろ、お昼はたこやきにするかお好み焼きにするかだよ。」
どや顔で言いきった加藤に向けて、藤堂は思いっきりため息をついた。
「捜査のことかなと一瞬思った僕がバカでしたよ。」
「腹が減っては戦はできぬって言うだろ。せっかく大阪まで来たんだから、美味しいものでも食べながら、捜査した方が何かつかめるかもしれないしな。」
「何をつかむ気なんですか?まったく、もう。」
「で、どっちがいいと思う?」
加藤はそう言って、たこ焼き屋のチラシとお好み焼き屋のチラシを藤堂に見せてきた。藤堂はもう一度ため息をついて、
「大阪に来たなら串カツとかの方が良いんじゃないですか?」
「おま、お前バカか?選択肢が二つでもこんなに迷ってるのに、選択肢を増やすなよ!」
お昼ご飯1つでこんなに必死になれる人もそうはいないだろうと藤堂は思いながら、もう一度ため息をついた。
「じゃあ、こうしないですか。最初に串カツ屋に行って、串カツを買って食べて、次にたこ焼き屋に行ってたこ焼きを食べて、最後にお好み焼き屋さんに行くんです。」
「何でその順番なんだ?っていうか全部食べるのか?」
「加藤さん決められそうにないじゃないですか。それなら全部食べさせた方が早いかなと思いました。
あと順番の話ですけど、串カツとたこ焼きならテイクアウトで歩きながらとか適当に座って食べられますけど、お好み焼き屋さんは店の鉄板で焼いてもらってすぐに食べたほうが美味しいかなと思ったからです。」
「おまえも充分昼飯の食い方にこだわってるじゃないか。
よく俺のことバカにできたよな?」
「な、何言ってるんですか。
食い意地が張ってる加藤さんのために最善のプランを考えてあげたんだから、感謝してくださいよ。」
「あ、あの~・・・・・」
そこで加藤と藤堂以外の第三者が会話に割り込む。
「あっ、すみません。高山さんは何が良いですか?」
「そうじゃないでしょう加藤さん。すみません、捜査に来てるのこんなバカな話して。」
「いえ、お二人の捜査のお手伝いをするのが僕の仕事ですし、竹中さんからも大阪の美味しいところに案内してやれと言われてますから、大丈夫です。
ただ、その三種を食べるんやったら、別々の日にした方がええですよ。」
「どうしてですか?」
加藤が不思議そうに聞くと、高山は笑いながら、
「重いんですよ。それにお二人はお好み焼きを甘く見てます。
お好み焼きはご飯のおかずですから、たこやき食って、串カツ食っての後に食べるなんて、体育会系の大学生やないんやからきついですよ。」
「そうなんですか?」
「そうです。こちらには長くいるんでしょう?串カツの美味しい店やったら知ってますから、今日の晩御飯にしないですか?」
「それもいいですね。
じゃあ、昼はやっぱり当初の予定通り、たこやきかお好み焼きということだな。」
加藤がまた悩みだしたのを見て、藤堂はまたため息をついた。
昼飯を決めるだけのはずなのに加藤さんと一緒にいるとこんなにため息が出るのかと思うと疲れを感じるのと同時になんだか楽しい気分になっていた。
特別犯罪捜査課に来る前、いや、山本警部の部下になるまではこんな風に同僚の人と昼ご飯の話をすることもなかった。そんなことを考えている藤堂に向かって、加藤が
「早く決めろよ、藤堂。全くお前は全然決めてくれないよな。」
「加藤さんが決めればいいじゃないですか。」
そう言い返しながら、藤堂はそう言えば昔から加藤さんはずっと僕をお昼に誘ってくれていたことを思い出し、知らず知らずのうちに口角が上がってしまいそうになる。加藤さんに気付かれたら恥ずかしいので必死に表情をなおして、真剣にたこやきかお好み焼きで悩む加藤を藤堂は見ていた。




