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七十五部

『総理は緊急でA国大統領と電話で会談し、今回の事件についての対応を話し合ったとのことです。』

 ニュースのアナウンサーは、普通のニュースを読み上げるように淡々としている。この事件の重大さが少しもわかっていないのだろうかとと思ってしまう。上田が

「日本に戦争を仕掛けてくる何てことにはならないですよね?」

「アホか、さすがにそんなことはできへんやろ。

 テロ組織に攻撃されたからってその国を滅ぼしたなんて話聞いたこともないからな。」

 竹中が言うが山本が

「それにしてはおかしくないですか?

 A国は自国の軍隊を攻撃されたのに未だに何の声明もだしていません。テロ組織からの攻撃だとしても、日本国内で起こったことに関しての責任追求はあるはずです。

 それがないとなると問題は深刻なのかもしれないですね。」

「不確定情報ですが……………………」

片倉が言い、全員の視線が片倉に集まってから、

「襲撃に使用された船籍が日本の自衛隊、中国軍、他のアジア諸国軍、そしてA国軍の物も含まれていたそうです。

 事前にテロリストに軍艦を奪われていたことを公表することになれば、A国の世界的な信用は地に落ちることになります。

 それを回避するためにも、ことを荒立てずに早期に終了させることを望んだ可能性があります。

 何より、テロリストはほとんどを壊滅させてますし、日本に責任を求めて、関係を悪化させること自体がA国にとって不利益しか無いものと思われます。」

「アジア最大の理解者を失いたくないってことか?」

 竹中が茶化すように言う。伊達が

「国の面積としては、小さな国でも経済面、自衛隊という軍事力の大きさを考えると、それも否定できないでしょうね。

 何より中国に対抗できるアジアの国は日本くらいでしょうから。」

「問題は日本の世界的な立ち位置とかじゃなくて、この襲撃を事前に阻止することができなかったことですね。

 ここまで大がかりな襲撃になったにも関わらず、日本の警察がインターネットに公開された動画で事件を知ったということの方が大問題ですよ。」

 三浦が言い、竹中が

「そんなこと言われてもなぁ、海の上を移動してる船やと警察では監視もできへんしな。海上保安庁が動いてもないなら、何もできへんかったと思うで?」

「軍艦を何者かに奪われていたのに、それを公表しなかった各国の軍隊にも責任はあるでしょうね。

 日本の自衛隊を管轄する防衛省も含めて、現在の日本の状況を考えれば奪われた軍艦が何に使われるかというのは具体的にわからなかったとして、テロ行為に使われることくらいは考えれたでしょう。」

 大谷が言い、山本が

「俺らが責任のありかについて議論しても意味ないだろ。

 俺らの仕事はこの動画をネットに公開した人物を見つけて、捕まえることだ。その他にも不法滞在者の襲撃事件もある。

 政治的なことは抜きにしても、テロリストをこのままにすることはできないんだから各自の捜査に戻ってくれ。

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