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六十七部

「どうだね?私の私設部隊の働きは?

君の満足のいく結果を出しているかね?」

 ねちっこい話し方と表では絶対に見せない下卑た笑い方で聞かれたので、面倒だと思いながらも、

「十分な結果を出してくれていますし、今後も期待ができそうですよ。

そんなにお捨てになられた部隊が心配ですか?」

「アハハ、捨てた気などないよ。

 部隊というのは、先陣、後陣というわけ方をさらに分けて、先陣の中の特攻隊というものがある。

 言わば彼らは特攻隊なのだよ。特攻隊の生死を心配したりはしない。ただ、目的を果たせるかどうかが重要なだけだよ。」

「あんなに優秀な自衛官達なのに、あなたの第一部隊には所属すらできないということですか。

 見てみたいものですよ、あなたのかくし球を。」

「君は誤解をしているよ。

私の私設部隊は『優秀な自衛官』では務まらないのだ。

国を守るという意識が高いのは当然ながら、『どんな手段を使っても守る』ぐらいの覚悟のない者や信念の強すぎる者では務まらない。

 命令に従順で柔軟な思考力こそが我が部隊には必須なのだよ。

 そういう意味では、西郷君は実にもったいない人材だと言える。

 身体能力も高く、知性も飛び抜けてあり、命令以上の結果を出せるだけの能力を持っているが、彼は学閥に縛られ過ぎている。

 もっというなら、警察庁の坂本に対しての忠誠心が強すぎて、こちらの命令よりも坂本を優先する可能性が高すぎた。

 信念さえなければ、西郷君は優手な我が手駒となっただろうに残念だよ。」

 表情から残念さが伝わって来ない。おそらく表面上は気にしていると見せかけたいのだろう。上っ面だけで押し上げって来たわけではないことは確かだが、この軽薄な感じすらも何かの意図を持って演じているのかもしれない。そんなことを考えていると、

「君は先ほど……………見てみたいと言ったが、当初の予定では君は部隊を目にした後でこの世からいなくなるはずだったわけだ。

 君は危険分子だったのだから。」

「そうですね。あの時、あなたとコンタクトをとり、話し合わなければ、僕はこの世に本当にいなくなっていたと思いますよ。」

「いや~驚いたよ。

 法制審議会で一度あっただけの君から直接電話が来た時には言葉もでなかった。

それに、部隊以外の誰にもはなしていなかった計画のことまで持ち出されるとは、驚きすぎて笑ってしまったよ。」

 男はそう言って笑っているが、目が笑っていない。若僧に自分の連絡先を手に入れられ、更に内密に処理するはずの案件のターゲットから、話し合いを持ちかけられるなど、この男の栄光に満ちた人生ではなかったことだろう。

「三橋先生が話してくれなければ、僕はあなたに殺されていたでしょうね。本当に感謝していますよ。」

「三橋も頑張ったくれたよ。彼が輩出した優手な人材が各分野で成功を納めている。黒木に坂本、君を含めてね、影山くん。何より、山本勘二ほど優手な刑事は今までいなかっただろう。

 彼が敵というのも残念で仕方ないよ。」

 今度は本当に残念そうだ。影山は探るように男を見ると、

「三橋には死んでもらわなければいけなかった。

 彼は知りすぎていたからね。

 でもどうだったね?私の部隊の仕事は。

見事に自殺と判断されたじゃないか。手を回す必要もないくらいの仕事だ。」

「ええ、石田先生の時の手際のよさからも優秀さが伝わってきましたよ。」

「石田一成か。

 彼も君の秘密を知らなければ、幸せな人生だっただろうに………

おっと、言葉が過ぎたね。では、そろそろ私は失礼するよ。

このあと、北条さんと面倒な会食なのでね。」

 男は立ち上がり、部屋から出ていく。影山は姿勢をただして、立ち上がり、頭を下げて、男が出ていくのを見送った。

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