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六十六部

「撃て!!」

 号令と共に轟音と共に鉄同士がぶつかる甲高い音が響き渡り、むこうからも怒声で号令を出す声が聞こえるが、こちらの攻撃が正確に相手の砲撃手を撃ち抜いていき、反撃すらさせない。

接近したところで、手榴弾を取りだし、相手の大砲の中へとどんどんと投げ込まれ、内部で爆発し、内部に装填されていた弾薬を誘爆して、瞬く間に敵船は海に沈んでいった。

「お前らから日本が搾取される時代はとうに終わっとる。

 これからは俺らがお前らから学んだことを活かして、新たな文化を作る。新国風文化をな。

 お前らは搾取される側になるんだよ。」

 戦果を眺めながら、西郷はそう呟いた。


『本日未明、動画サイトに生放送を示唆する『Live』の文字が出た動画が投稿され、海上自衛隊の巡視船らしき船の甲板の映像から始まり、近づいてきた中国の巡回船と思われる船に向かって、銃撃を行い、手榴弾の様なものを投げ込んで、船を沈めるという内容のものが投稿されました。実際にその映像をご覧ください。

 なお、一部放送に適さない箇所は加工がが入っております。』

 山本達は集まってテレビを見ていた。

 アナウンサーが動画について説明を終えて、動画を流す。おそらく人が撃たれて倒れるところや血が飛んでいる箇所にモザイクを入れたのだろうが、画面のほとんどがモザイクで埋め尽くされていく様から、現場の凄惨さがうかがえた。動画が終わりアナウンサーが

『自衛隊の発表は、今のところありませんが自衛隊が他国の船を襲撃するようなことはあり得ないとの見解から、平成攘夷軍と名乗るテロ組織の反抗である可能性が高く、現在、動画の真偽を含めて精査中です。』

 アナウンサーの言葉を聞いた三浦が

「精査中なら報道しなければ良いと思うんですけどね。」

「いまだに自分のところが真っ先に報道したいとか考えてるやつらが残ってるってことだろ。

 利益優先で報道を行うことのおろかさを理解しきれてないってことだ。」

 山本が言い、竹中が

「まぁ、動画がどうとかやなくて、これが本当に起こってた場合に沈められた船の国が、『テロ組織のすることですから』ではすまんってことやろ。

 一歩対応を間違えば、国同士の戦争なんてことにもなる。

 国際情勢見てたら、色んなところが関わってきて、第三次大戦なんてことにもなりかねへんくらいの状況や。

 早く、犯人捕まえへんと大変なことになるで。」

「今のところ、捜査は行き詰まりです。

 人材派遣会社の荒木も結局、岩倉という人物に雇われていただけでなにも知りませんでした。

 岩倉という人物を捜索はしていますが、偽名の可能性が高く、見つかる可能性の方がゼロですね。」

 上田が報告し、山本が

「防衛省には色々と手を回してもらってますが、進展はなしです。

巡視船が奪われたのか、それとも内部に協力者がいて運び出したのか、それすらわからない状況では捜索範囲も絞れないですからね。」

「八方どころ三十二方くらい塞がりやんけ。」

「問題は次に何をしてくるかです。

 不法滞在者の襲撃事件が激化するのか、それともまた違う国の船を襲撃するのか、どちらにしても警察がこれ以上何もできないのは困りますね。」

 大谷が言い、今川が

「こっちも捜査が進んでないのに情報は出せないから厳しいですね。」

「松前、例のデマの工作は?」

 山本が聞くと、松前がパソコンを開いて、

「今はこんな感じですね。

警察は、手がかりがないから、別の事件の捜査ばかりをしている。

 襲撃された不法滞在者をどうやって送り返すかだけを話し合っているようだ。ぐらいにしておきました。

もっと、連続で情報を出して、信用を集めてから、犯人グループを揺らすようなことを書き込もうと思います。

「まあ、それに関しては任せた。

 できるだけ注意をそらすようなことをしといてくれ。」

 山本が言い、松前は黙ってうなずいた。続いて山本は全員に向かって

「三浦と大谷は動画の真偽についての検討を、竹中さんと今川は不法就労者の襲撃事件を、伊達と片倉は『平成攘夷軍』の情報収集を俺と上田で『岩倉』という人物についてもう少し調べます。

 それじゃあ、各自捜査に行ってください。」

 山本が言うと各自捜査のために部屋を出て言った。残った上田が

「良いんですか?伊達と片倉を組ませると何をするかわかりませんよ?」

「あいつ等は、あいつ等なりに事件を解決させようと動いてはいるだろ。こっちに入れてこない情報もあるだろうが目指してるとこは一緒なんだから、自由にやらせておけば良いんだよ。

 それに『手段は選ぶな』との総監命令もあるしな。」

「総監も何をしても良いと言ったつもりはないと思いますよ。」

 上田が呆れ気味に言うと山本は真顔で

「あの人は冗談を言いながら、本音を混ぜてくる怖い人なんだよ。

俺らも行くぞ。」

 そう言って山本が先に出ていく。付き合いが長いとそんなことまでわかるようになるのかと上田は思いながら、山本を追いかけた。

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