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六十部

「聞いてくださいよ、竹中さん。

 高山さんは観光気分でずっと案内してくれているんですけど、お世話になっているということに関しては文句も言えないんですけど、それでも最近はなんか観光中心になってる気がするんですよ。」

 竹中から捜査状況の確認の連絡を受けた藤堂が高山がいないうちに竹中に言った。竹中は笑いながら、

『それで、どんなとこ行ったんや?

こっちは忙しくて観光もしてられへんっていうのに。』

「どんなところって、通天閣とか大坂城の天守閣とかあべのハルカスとかですよ。どこも観光客が多いところですけど、情報はあまり手に入ってない状況なんです。」

『なんや、エライ高いところが多いな・・・・・・・・・。

 ああ、そういうことか。』

 電話越しに何かに気付いたように竹中が言い、気になった藤堂が

「何かわかったんですか?」

『まあ、そう焦んなや。

 高山もきっと色々と考えがあってそうしてるやろうし、高山が遊び惚けるような奴やったら、お前らの世話係なんか頼まへんしな。

もうちょっとだけ高山に付き合ったってくれや、頼んだで。』

 竹中はそう言うと、電話を切ってしまった。

「竹中さんはなんて言ってた?」

 加藤に聞かれ、藤堂が呆れた感じで

「まだ何も報告してないのに電話切るって何なんですかね。

 もう少し高山さんに付き合えって言ってました。」

「何か裏があるってことなのかな?」

 加藤が言ったところで、高山が戻ってきて、

「あれ?もう報告は終わったんですか?」

「竹中さんが雑談だけして電話を切ってしまったので、もう一度かけ直すべきか相談してたんですよ。」

 高山の愚痴を言っていたとは本人には言えないので、藤堂が誤魔化すように言った。高山は笑いながら、

「そうですか、まあ向こうも色々と忙しいんじゃないですか?

 必要ならまた向こうからかけてきますよ。」

「そうですか・・・・・・」

 藤堂が言い、加藤が

「今日はどこに行きますか?」

「ああ、それなんですけど、今日は観光地やなくてちょっと違うとこに行こうかなと思ってるんですけどいいですか?」

「ええ、良いですよ。どこに行くんですか?」

 藤堂が聞くと、高山が笑顔で

「大阪で有名な水族館なんですけどね。

 まあ、人はたくさんいますけど、人通りのないところもあるし色々と好都合な感じなんですよ。特に平日の今日は穴場スポットですよ。

 釣りするのにはね。」

「水族館で釣りができるんですか?」

 加藤が聞き、高山が

「そうですね、大物が釣れるかもしれないですよ。」

 藤堂は高山の含み笑いが気になったが、竹中との会話を思い出し、竹中が信頼を置いているこの人は何か自分が見ているこの人とは違いうのかもしれないと思った。


「さ~てと、次は何の生き物が良いですか?」

 水族館の館内を歩きながら、高山が楽しそうに聞いた。

「もうかなり見ましたし、そろそろ帰りませんか?」

 藤堂が言うと、高山が

「あれ藤堂さんは水生生物はあまり興味なかったですか?」

「いえ、そういうことじゃなくて・・・・・」

 水族館に来る前に藤堂が考えていたことが全て否定されるかのように高山は心の底から水族館を楽しんでいるだけに見えた。加藤が

「そう言えば釣りはどこでできるんですか?」

「そうですね、そろそろ釣りに行きましょうか。

ちょうど準備もできたみたいですしね。」

 高山はそう言って、出口の方に歩いて行き、意味の分からないまま藤堂と加藤もそれを追いかけて出口を出た。

 開けた公園のところまで来ると、高山は周囲を確認して人がいないのを確認するといきなり大きな声で「今や!確保!!」と叫んだ。

 藤堂と加藤が意味がわからずあたりを見回すと防弾シールドを抱えた機動隊が現れ、藤堂達が立っている場所を全方位囲んだ。

「ちょっと、高山さん?何ですか?」

 藤堂が聞くと、高山は笑いながら

「だから釣りですよ。」

 そう言って真顔で、藤堂を指さし大きな声で「そこや!」と叫んだ。

 自分を指さされたと思った藤堂は自分に機動隊が向かってくるのかと思い周りを見渡す。前方からも防弾シールドを構えた機動隊が突っ込んでくる。だが、機動隊は藤堂の横を素通りし、藤堂の後方へと向かって突進していった。

 草陰に隠れていた黒い影が急いで走り出すが、その後方から来ていた機動隊のシールドに激突してその場に倒れた瞬間に機動隊が覆いかぶさって手錠をはめていた。

 意味の分からない藤堂が高山に向かって

「どういうことですか?あの捕まってる人は誰ですか?」

 高山が笑顔で、

「何ですかね、尾行者とでも言っときましょうか。

 僕らのことをずっと付け回しとったんですよ。気になったから調べたら、中国マフィア系の男やったんで、気づかんふりして根城暴いて一網打尽にしようと思ってたんですけど、なかなかうまくいかんくて。

 今朝、根城の一つが見つかったんでそこからちょっと離れたここであの男を捕まえて他の根城も吐かすことにしたんですよ。

 まあ、あの男がつけ回してるっていう確信を得るために色々と高いとこ行ったり、外国人観光客があんま行かんようなとこも行ってたんで、お二人には少し時間を無駄にしているように思われてたかもしれないですけど、今回の捜査に関連することがわかるかもしれんかったんで、ちょっとおとりになってもらってたんですよ。」

「それを何で教えてくれなかったんですか?」

 藤堂が聞くと高山は楽しそうに

「だって、釣りはやっぱりルアーみたいな疑似餌を使うより、生餌を使った方が楽しいと思うんですよ。

 魚の食いつきもいいですしね。」

「つまり、釣りっていうのはあの男を捕まえることだったわけですか?」

 加藤が聞き、高山がうなずく。藤堂が

「敵を欺くにはまず味方からってことですか?」

「こんなこと言うのもなんですけど、藤堂さんなら話しても大丈夫だったかもしれないですけど、加藤さんはこういう騙す系の罠のエサには向いてない気がしたんですよ。

 それなら自然体でいてもらった方が釣りやすくなると思ったわけです。」

 藤堂が加藤を見ると、高山の言ったことを理解したのか加藤が少し落ち込んだように見えた。

「それで、その根城の方はどうなってるんですか?」

「さあ。同時に確保を始めたんで、向こうはまだ終わってないみたいですね。

 一人捕まえんのと大勢を制圧するんでは時間も労力も全然ちゃいますから。」

 高山はそう言って笑った。それを見て藤堂はなぜ竹中さんが高山さんに信頼を置いているのかの意味を悟った。

 高山さんは竹中さんのような無茶な捜査はしないが似て非なるところが両者にあるからなのだろう。


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