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五十五部

全世界に向けて、日本語、英語、ドイツ語、フランス語、ポルトガル語、中国語、韓国語、ロシア語の9か国語に翻訳された動画は公開された。

一部の人権団体は強い言葉で批判する声明を発表し、一部の人からは何かの映画の宣伝動画だと誤解する人達もいた。

中には、最近日本近海で起こった事件に乗っかって、無駄に事件をあおっているだけのバカな動画作成者だと罵った人もいた。

だが、日本人の中には感化された人も少なくはなかっただろう。

 しかし、本気にする人も多くはなかった。だが後日公開された密漁船襲撃の様子をうつした動画はほとんどの批判者の言葉を封じた。

 光の群れに近づく船のエンジン音、『構え』の号令とともに、金属音がして、少し間をおいてから、『全基、一斉掃射』の号令とともに轟音が響き、光の群れから聞くのも堪えがたいほどの断末魔の悲鳴が上がる。

爆発音とともに、光の群れに違う色の光が大きく弾けて、燃え上がりながらほんの数秒で消えていった。それは燃えた船が沈んだことを意味していた。

そして落ち着いた声で、

『これは警告である。

日本の利権を害するものには制裁を。

犯罪者に罰を、我らは『平成攘夷軍』

怯えろ、震えろ、そして逃げ出せ。

次は貴様らの番だ。』

動画には多くの爆発音やまばゆいほどの炎が上がっている。

 そして実際にはなかったかなり派手目のBGMが響いている。

 その動画を見ながら、

「さすがは岩倉さんだね。

こんなにカッコいい声じゃないのに、これも加工してくれたんだろうな。

僕としてはこのBGMがかなりカッコいいから好きだな。」

「西郷さん、俺らがいま世界的に指名手配されてることも理解して言ってますよね?」

「当たり前だろ、でもさすがにこんなに爆発するものは使ってないし、加工が行き過ぎてるなとは思うよ。

 皆の銃の腕なら、こんなに爆発を起こさずに乗組員を全滅させることくらいわけないのにね。」

「西郷さん、この活動に参加したことを後悔はしてませんが、人を殺すということはそんなに簡単に言っていい事じゃないと思いますよ。」

「わかってるよ。これも全ては坂本さんの業を分担して、全員で背負うための行為。

おいどんは、国の未来を案じ、そして自らの信じる正義のためにこの身をささげると決めたのだから。」

西郷の顔は真顔であり、ゾクッとするほどの凄みがあった。話しかけた男はたまに西郷が二重人格なのではないかと思うほどの人間性の変化を感じることがあった。今は怖いときの西郷さんだと思い始めたところで西郷は笑顔になり、

「さあ、次はどっちかな?

 海を犯す侵入者か、それとも日本をむしばむ悪の軍隊か。

君はどっちがいい?」

「私は・・・・・・・・」

 男が答えられずにいると西郷は笑顔のまま、

「君は・・・指揮官に向かないね。

 即断即行、それができなければ君の軍は全滅するよ。」

「それでは・・・・西郷さんはどちらがいいのですか?」

「両方一遍にというのも悪くはないが、欲を出してしくじっては笑い話にもならないから、まずは侵入者をつるし上げてからだろうね。」

 最後の言う意味は男には理解できなかったが、これも計画の中の何か大切な言葉なのかもしれない。そして、この男は西郷の次の行動後、この言葉が至極単純で、そしてかなりむごい意味を持っていたことを知るのだった。


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