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四十八部

『依然として、海上自衛隊は事件の詳細を明らかにしていません。

 密漁者の国からも何も声明などは出ておらず、水面下で外交が行われているようです。

 一部のSNSでは、密猟者が朝鮮人だったとの投稿や現場から遠ざかっていく海上自衛隊の巡視船を見たとの投稿もあり、事実関係を防衛省に問い合わせたところ、期限までに回答は得られませんでした。』

 アナウンサーが密猟者殺害事件の続報を伝えている。竹中が

「これって、結局何もわかってませんってことやろ?」

「どうですかね。

 本当は質問したのに返事をしなかった防衛省に対する当てつけかもしれないですよ。『聞いたのに答えてくれない』って文句をテレビを通して言ってるんじゃないですか。」

 今川が言い、三浦が

「こういうのをブラックボックスっていうんですよね?

 内部で勝手に色々と決めたりとか情報の開示をしないとか。」

「ノリ弁とも言われましね。提供された資料がほとんど黒塗りで塗りつぶされていて資料が意味をなさなかったりするんですよ。」

 片倉が言うと、大谷が

「皆さん、何度も言わせないでください。

 この件に関しては、自衛隊の管轄で警察には何もできないんですよ。

無駄口叩いてないで、他の仕事をしてください。」

「そうですね、では大谷さんにお仕事の話がありますので、取調室までご同行頂けますか?」

「えっ?」

 突然、片倉に言われた大谷が驚くと、竹中が

「それはええなぁ、俺も聞きたいことあるから一緒に行くは。」

「えっ、何ですか?ここで話せばいいじゃないですか?」

「それではダメなんですよ。お仕事の話ですから。」

 片倉が言うと、大谷は焦った感じで、

「いや、ここが職場じゃないですか。職場で仕事の話をしても・・・」

「これは、あかんなぁ~。 今川、三浦、連行しろ。」

 竹中が言うと、今川と三浦が大谷の横を固めて、両脇をつかみ

「ごめんね。」

「まあ警部の命令だからな。」

「ちょ、ちょっと待ってください。」

 残念ながら大谷も二人には勝てずに無理やり連れて行かれた。

 黒田は課長室からその様子を紅茶を飲みながら見ていた。そこに電話が鳴り、

「はい、黒田です。ええ、わかりました。

 今は別件で誰もいないので戻り次第伝えて、捜査をさせます。」

 黒田は電話を切ってから、パソコンを起動してメールを開き、内容を確認した。

「まあ、少し時間をあげますから頑張ってくださいよ、竹中さん。」

 黒田はひとり呟いた。


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