四十五部
「どうですか?
大阪は本当に良いとこやと思いませんか?」
高山は相変わらず、テンション高く大阪の観光名所案内を続けていた。
藤堂と加藤もいい加減、そのテンションになれてしまったので軽く流しながらも情報収集を続けていた。
あまり有力な情報がない中でも多少アジア系の外国人が多くいる地区の情報なども入ってきており、捜査は進んでいるように藤堂は感じていた。
「それにしても、大阪の食べ物は美味しいですね。
東京は少しオシャレを意識しすぎてるものが多くて、何ていうんですか、あの~ああ、インスタ映えってやつを意識しすぎてると思うんですよ。
その点、大阪はシンプルな見た目で美味しいものがあって良いですよ。」
加藤が言うと、高山は満足そうに笑った。藤堂が
「この辺ではあまり目撃情報がないですね。
やはり、グエンさんや他の犯行に加担した外国人の人達は逃げ回っていると考えた方がいいのかもしれないですね。
日本の警察だけじゃなくて、潰れたとはいえ中国マフィアが不利な証言をする可能性のある彼らを野放しにしておくとも考えられないので、最悪の場合は既に・・・・・なんてこともあるかもしれません。」
「おい、じゃあ俺らは何のために大阪を歩き回ってるんだって話になるじゃないか。」
加藤が言うと、高山が
「もし、既に殺害されているとしたら、大阪湾に沈められているかどこかの山中に埋められている可能性もありますよ。
特に大阪の近くには自然が豊かな県が多いですし、大阪以外で遺棄されていると府警だけでは対応できませんしね。」
「難しいですね、グエンさんから連絡でもあればいいんですけど・・・・・・」
藤堂が言うと、高山が
「どうでしょうか、グエンさんが警察に不信感を持つようになった原因も竹中さん主導だったとはいえ、うちの府警にありますから、こんなこと言えた義理はないと思いますけど、自分の身が危ないと思うなら警察に頼るべきなんでしょうね。」
「ハンさんのところにも連絡が来ていないようですから、こちらにダイレクトで連絡が来るとはなかなか思えないですからね。
まだ、情報を集め続けるしかないのかもしれないですね。」
藤堂が言い、高山は何かを考えてから
「そうですね、まだまだ観光名所はありますし、美味しいものもまだありますから、まあ、ゆっくりと行きましょう。
準備ができれば、観光巡りも終わりますからね。」
「どういう意味ですか?」
加藤が聞くと、高山は笑顔で
「ああ、こっちの話というか・・・・・、グエンさんに繋がる情報が手に入れば、こうやって観光名所を回るのは終わるというだけの話ですよ。」
藤堂は高山が明らかに何かを誤魔化していることに気が付いた。もしかしたら高山さんは何か目的があって、観光を楽しんでいるように見せているだけなのかもしれない。その何かに対処する準備を今も裏で進めているのかもしれない。そんなことを考えていると高山が
「あっ!あそこのパンケーキが美味しいんですよ。
ちょうどお昼時ですし、ちょっと寄っていかないですか?」
高山は本当に楽しそうに言ったので、藤堂は自分がさっきまで考えていたことを否定し直した。
『ダメだ、これは本当に楽しんでいる人のテンションだ』と。
「ええ、大阪の捜査班は観光巡りをしているだけで、聞き込みもたいした成果は出ていないものと思われます。」
『引き続き、見張ってくれ。犯行に使った外国人は先に見つけ出して始末しないといけないからな。』
「了解しました。」
影から藤堂達を見ていた男は携帯で連絡を入れ、電話を切ってからまた呟いた。
「本当に・・・・・・観光してるだけじゃないか。
あんな警察官ばかりだから、この国の治安は悪くなるんだよ。」




