四十四部
「お前らのことを海上自衛隊は必死になって探してる。
次の行動後すぐに破棄して、身を隠せ。」
電話越しに坂本が命令を出している。電話の相手は
『わかってます。
ただ、次の行動までには色々と準備が必要です。
さすがに戦争状態にもなりかねないので、準備は万端整ってからになります。
できれば、国内の方の動きを活発にしてもらって、こちらが新しい武器を手に入れる時間を稼いでもらいたいです。』
「ああ、それに関してはそろそろあいつが動き出すと思うから大丈夫だ。
『改革には痛みを伴う』とはよく言ったものだよ、本当に・・・・・・・」
『大丈夫ですか、坂本さん?
少しは休んでくださいよ、あいつは信用できないかもしれないですけど、私のことは信用して頂きたいです。
必ず、坂本さんの計画を成してみせます。その暁にはぜひ言って貰いたいこともあるので、報酬はその言葉でお願いします。』
「何を言わせたいのか知らないけど、計画がうまくいったら、またみんなで集まって騒ぎたいもんだよ。」
『ごちそうさまです。』
「お、おい、おごるとは言って・・・、でもそうだなおごってやるよ。
食べたいもんでも相談しといてくれ。」
『安心してください、『異国船撃払い令』は絶対にこの身に変えても実行して見せますから。』
「おいおい、『作戦よりも身の安全を優先すること、自らを守れなくて他者を守れると思うな』だろ?」
『そうでしたね、坂本さんにご飯をおごってもらうために全員で無事に帰りますよ。それではまた連絡します。』
電話は切れた。坂本が後ろに立っている男に向かって
「情報操作の方はよろしくお願いします。」
「わかっているとも、君達の勇敢な行動に敬意を表して、君の望むままに情報を発信させてもらおう。
特に、彼らからもたらされた動画・・・・あれは最高だ。
加工して、そうだな・・・・・迫力のある音も加えよう。
そして、一番大事なことは決して忘れないよ。
『平成攘夷軍』の犯行声明はね。」
男は、自分が作るであろう最高傑作の動画を思い浮かべて一人満足そうに笑っている。坂本はこの男がかなり苦手なタイプではあったが、その能力の高さから頼らざるを得ないことも理解していたので、必死に笑顔を作って、
「期待していますよ、その・・・・・最高傑作を・・・・・」
男は満足そうな顔を浮かべたまま、部屋から出て行った。




