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二十六部

リビングに通されたところで、影山の母親が

「あの子はどこの大学に通っていたんですか?」

「緑山学院大学です。二回生ということだったので、家を出られたあたりから通われていたのではないかと思います。」

「そうですか・・・・・・、それでどのような事件の捜査をされているんですか?」

「石田一成という緑山学院の准教授の殺害事件です。

秀二さんは、二回生ながら石田准教授のゼミに通っていたのですが石田准教授が亡くなられてから一度も大学に来ていないことがわかったので何か関係があるのかを調べているんです。」

「それは・・・・・・秀二が石田准教授を殺して逃げているということですか?」

「いえ、現段階では関与を裏付けるものはありませんし、お母様の考えの逆というと少し違うかもしれませんが、事件に巻き込まれている可能性もあると思います。」

「殺されているかもしれないっということでしょうか?」

「そういうことかもしれないので一応確認をと思いまして・・。」

 山本が言いかけたところで暗い空気が流れていることに上田が気づき、

「緑山学院は有名私立ですよね。

 秀二さんもそんな大学に通ってらっしゃるくらいだから頭がとてもいいと思うんですけど、昔から勉強はできたんですか?」

「できなかったわけではないですが、光輝と比べるとどうしてもという感じですね。」

 母親が言いにくそうに言い、山本が

「光輝さんのご友人の方に秀二さんのことを聞いたことがあるんですが、兄と比べられるのが嫌で勉強も何もせずに引きこもりになったと聞いたのですがこれは本当ですか?」

「そうなのかもしれません。

今の夫は、光輝と秀二を比べては秀二にきつくあたることもありましたし、掛けられるプレッシャーも並みのものではありませんでした。」

「秀二さんがひきこもるようになってから旦那さんはどのようにされたんですか?」

「最初のうちは怒鳴り付けたり、説得したりしていたんですが、見限ったのか話しかけることも無くなりました。」

「光輝さんは、秀二さんに対してはどのような?」

「光輝は、あまりうちの人間に興味がないという感じでした。外にお友達が多いので高校生の時も二日に一回しか帰らなかったり、長いときは一週間丸々帰らないなんてこともありました。ただ、勉強もできて素行も悪くなかったので別に問題視はしていませんでした。

 そんな光輝ですから、弟のことなんて全く相手にしてませんでした。」

「お話は変わりますけど、秀二さんが大学に通っていたということは授業料や入学金なんかも払っていたということになります。

 そのお金はどこから出ていたかわかりますか?

お母様が大学に通っていたことすら知らなかったのなら、秀二さんが自分でお金を出していたということになると思うんですが。」

「わかりません。

あの子とは出て行く前から全く会話をしてませんでしたから、一日中何をしていたのか、どんなことが好きで、何になりたかったのかも・・・・何も知らないんです・・・・」

 影山の母親は涙を流して、ハンカチで目元を押さえてしまった。

「そうですか・・・・わかりました。秀二さんの情報がわかり次第こちらからもご連絡させて頂きますので、秀二さんから何か連絡があればで大丈夫ですので、私の方までご連絡いただけますか?」

「・・・・・・わかりました。」

 影山の母親に連絡先を渡して、山本と上田は影山邸を後にした。


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