二十五部
「大きな家ですね」
山本と上田は伊達たちが消えた後で、石田ゼミ長の島村から石田の死後、影山秀二が一回も大学に来ていないという情報を得て、影山の自宅を調べ、その家の前まで来たところで、上田がつぶやいたのだった。
「大手建設会社の重役の家なんだ、それなりの家に住んでてもおかしくないだろ。逆にこじんまりとした家に住んでる方が脱税とかを疑ってしまうそうだろ。」
山本はそう言うと、チャイムを鳴らす。女性の応答する声が聞こえて、
「警視庁特別犯罪捜査課の山本と言います。
ある事件のことで、秀二さんにお話をお聞きしたいのですがご在宅でしょうか?」
「秀二は二年ほど前に家を飛び出してから、一度も帰ってきてないのでどこで何をしてるのかわかりません。」
「そうなんですか?
そのへんのお話も詳しくお聞かせ願えないでしょうか?」
「あの子が何かしたんですか?」
「いえ、そういうわけではないのですが、大学に通われているのですが、そのこともご存じなかったということでしょうか?」
「そうなんですか!全く知りませんでした。
今あけますので、詳しく教えて頂けますか?」
「こちらとしては願ってもないことです。」
そう言って少し待つと、50代半ばくらいの女性がドアを開けて出てきて、
「どうも秀二の母です。」
「ああじゃあ、あなたが長田さんの元奥さ・・・・・」
上田が言いかけたところで、山本が肘打ちをして黙らせたが、重要な部分は全て聞こえていたので、
「長田をご存知なんですか?」
山本はため息をついて、
「ハア、すみません。長田さんの支店長をされていた銀行に強盗が入った事件を調べていたことがありましたので、その縁で何度かお会いした感じです。」
「それじゃあ、光輝のことを色々と調べておられたのもあなた方ということですか?」
「その節は申し訳ありませんでした。事件の最重要事項でしたので。」
「いえ、怒っているわけではないです。あの子の無念が少しでも晴れたのなら、私は満足していますから。」
「そうですか・・・・・・。
お話を戻しますが、秀二さんのことなんですが・・・・・・・」
「とりあえず、中に入ってください。
よく見るとあなたは、この間の報道番組占拠事件の時の刑事さんじゃないですか?警察が家に来たなんて、近所の人には知られたくないので入ってください。」
「それでは・・・・・・お邪魔します。」
案内されるまま、山本と上田は家の中へと入っていった。




