二十四部
「お前が異動して来てくれて素直に嬉しいけど、どうやって俺らの居所がわかったんだ?」
昼時に定食屋でご飯を食べながら、色々と整理している時に松前小十郎は現れた。何も聞かされていなかった伊達は驚いて松前に聞いたのである。
松前はニコリと笑って、
「Nシステムとその他にもいろんなところに情報っていうのはあるもんですから。」
「まあ、聞くだけ野暮だな。カタは?」
伊達が片倉のことを聞くと、松前は椅子に座りながら、
「強盗事件の方の捜査に合流しに行きました。なんでも薬物関係の人探しで煮詰まっているようだったので、カタさんの人脈が必要なんじゃないかっていうので出て行きましたよ。」
「あいつの人脈はあてになるけど、少し危ないからな・・・・・・」
二人だけで話が進む中で、山本が
「それで松前さん、あなたがこっちに来たということは何か情報がつかめたということでしょうか?」
「松前でいいです。あるいは小十郎で呼んでください。
一応、闇サイト等を見回しておかしい求人がないかを調べてみました。
そこで何個か犯罪に直結しそうなものから、簡単な作業に高額のバイト代が出るモノまでを探してみたところ、ひとつ空港内での荷物の運送代行という仕事がありました。
残念ながら、ログは消されていたので出元の情報や何人がそこに応募したのかもわからない感じです。
山本警部の調べられている事件ならこれが一番近いかと思います。」
「それはあたりみたいですね。今藤堂からメールが来て、空港で顔が見えた男を調べていたらしいんですけど、元同僚に変なバイトをしたと電話して来たみたいなので、その闇サイトの募集に応募した人が窃盗の幇助をさせられたと見ていいんじゃないですか?」
上田が言い、山本が
「そういうことなら、その闇サイトを引き続き調べてもらえますか?」
「僕はもう山本警部の部下になったので命令してもらえれば何でもやりますよ。」
松前が笑顔で返す。「何でも」という言葉に色んな意味が隠されているのだろうと山本は考えた。それこそ犯罪と思われることでも伊達の命令でしてきているのではないかと疑ってしまう。
「それじゃあ、よろしく。」
考えたことを置いといて、次の捜査に関して考えることにした。
「こっちではあまりに情報が少ないから、藤堂にそのアジア人の行方について継続して調べるように言ってくれ。
伊達、友人から連絡はあったか?」
「まだないです。さすがにそんなに早く返信が来るとも思えませんよ。
まだ、別件を調べる時間くらいはあるんじゃないですかね。」
「他にも何か調べてるんですか?」
松前が聞き、上田が
「石田一成という大学の准教授殺害事件を調べてます。これは警部の一存で勝手に調べてることなので、協力する義務はないヤツです。」
「そうですか・・・・・・、ああ、あの通り魔事件かってニュースでやってたヤツですね。雨の日に帰宅途中の大学講師がナイフで刺されているのが見つかった事件。」
「まあ個人的に調べてるだけなので気にしないでください。」
山本が言うと、松前は何かを考えた後で
「その事件は通り魔でなく、その人を狙った殺人事件なんですよね?」
「それはまだ調べてるところです。」
上田が言うと、伊達が面白そうに
「何か思いついたのか?」
「事件現場に行ってみれば、近くのカメラとかから僕ならわかることがあるかもしれませんよ。」
「なるほど・・・・・・、じゃあ警部こうしませんか?
俺と小十郎で現場に行ってみます。もし友人から連絡があればすぐに集まるということにして、それまでは別々に捜査する。どうですか?」
「なんか企んでるんじゃないだろうな?」
「そんなことないですよ。ただ、一緒に捜査するよりも別れた方が効率的だと思っただけです。それに俺と小十郎は長く組んでますから俺らなりの捜査の仕方もありますからね。」
「違法捜査だけはするなよ。」
山本が呆れ気味に言うと、伊達は笑顔で
「善処します。行くぞ、小十郎。」
そう言って、二人で行ってしまった。その後ろ姿を山本と上田は心配そうに見送った。




