二十三部
男を目の前にして、はじめに口を開けたのは竹中だった。
「お前は、あれやな、伊達の部下やった奴やな?」
「ええ、片倉と申します。
この度こちらの課に異動させて頂きました。
皆様が捜査をされているということでしたので、合流しなければと思ってやってきた次第です。」
「あんたの相棒のもう片方の大きい奴もこっち来たんか?」
竹中が探るように聞くと、片倉は口角を少しだけ上げ、
「松前でしたら、山本警部の方の事件の捜査に参加するために出て行きましたよ。」
「山本らがどこにいるか知ってるってことか?」
「伊達に聞けば、居所ぐらいわかるんじゃないですか?」
竹中の質問に、三浦が聞き返す。確かにこの二人は伊達の部下なのだからそれもありえると竹中は思って、変なことを聞いてしまったと後悔した。
「松前の能力をもってすれば、テルに聞かなくても居場所くらいわかるんですよ。コンピュータ関連では警察内で一番ですからね。」
「それで、お前がどうやって手伝うっていうねん?」
竹中がほぼケンカ腰に詰め寄るが片倉は表情を少しも変えずに、
「私はこう見えて人脈がとても広いんですよ。
薬物関係に詳しい友人に話を聞けば売人くらいすぐにわかりますよ。」
「そのお友達の情報は、正確なんやろな?」
「ご安心ください。私に嘘の情報を流せばその友人が後で、どんなにひどい目にあうかくらい既に体に教えてありますから。」
平然とした顔で片倉が言ったことに、その場にいた全員が鳥肌が立つほどの恐怖を感じた。当然、竹中もそう感じた一人だった。
「お前、そんなことしてええと思っとんのか?」
「竹中警部が仰っている意味がわかりません。犯罪者に法を犯せばどうなるかを教えるのもまた警察の仕事でしょう?」
竹中はこれ以上こいつと話していてもらちが明かないことを悟り、
「どれくらいの期間で、売人は見つけられる?」
「ご理解が速くて助かります。
そうですね、売人の特定には二・三時間もあれば十分でしょう。
後は居所をつきとめるのにどれくらいかかるかという問題ですね。」
「えっ、そんな早くわかるんですか?」
今川が驚いて聞くと、片倉は首をかしげて、
「情報元というのは、知りたい情報をすぐに正確に教えてくれる人間でなければいけません。こちらが聞く前に、これを聞かれたら即答できるように準備させておくことも怠ってはいけないことの一つですね。」
片倉はそう言うと、携帯を取り出して、電話をかけ、
「ああ、お久しぶりですね、実は薬物関係で知りたいことがあります。
・・・・・・・・・・・・・ああ、いえいえ、あなたの商売には直接介入しませんから大丈夫ですよ。
ええ、危険ドラックの件でして、売人を見つけて欲しいんです。
先週の金曜日の夜です、・・・・・・・・・・・・・そうそうあの強盗があった場所の近くで売っていた売人が知りたいんです。
・・・・・・・・・・・、そうですか、わかりましたそれでは二時間待ちます。
一分でも遅れればどうなるか、わかってますね?
・・・・・・・・・安心してください、あなたならきっと時間を厳守してくれると信じてますよ。それでは今から二時間以内に調べてかけ直してください。」
片倉はそう言って、電話を切り、呆然としている面々に対して、
「二時間以上はかかると思いますから、ゆっくりと休憩しながら待つことにしましょうか。」
そう言って、片倉は笑った。
その1時間58分後に片倉の電話が鳴り、売人の身元は何者かわからない人物によって報告された。




