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仕様違いの魔法使い  作者: 赤上紫下
第 6 章

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02:何気ない一日と届いたメール

 夜が明け、今日もまた誰からともなく全員が目を覚ました。

 今日の朝食はアンナが作ってくれたので、和風なそれを三人で囲んでいる。

「今日は、特に用はないの?」

「んー、今日はないかな。ああいや、この間持ってった魔石の代金が振り込まれてるらしいからそれの確認と、ついでに多少買い物もしておこうか」

「そういえば……昨日そんな電話をしてたわね。わかったわ」

「アニマもそれで……良さそうだな」

「はいっ」

 アニマの方に視線を向けてみると、控えめではあるものの、やる気が顔に表れている。


 二人は外出用の地味目な服に着替え、俺も大して目立たない服に着替えて玄関の外に出ると、昨日に増して暑い空気が纏わり付いてきた。

「……お外、暑いですねー……」

「今が一番暑い時期だしなぁ。昼過ぎから夕方辺りが特に暑くなるだろうから、さっさと行こう」

「ええ、そうね」

「はいっ」



 スーパーまでの徒歩での移動を終えると、俺だけでなくアニマとアンナの二人もうっすらと汗をかいていた。

 あと一か月もすれば気温は下がり始めるはずだが、自転車でも買うべきだろうか?

 自動車は便利だが、事故のニュースが今朝も流れていたのであまり買おうという気にはなれない。

 そしてまずは入金の確認からと、スーパーの敷地内に設置されている、ATMが入った小さな小屋の前に立った。複数人で入るには狭いため、入るのは俺だけだ。

『じゃあ、ちょっと確認してくる。先に店入ってても良いよ。暑いだろ?』

『私は大丈夫よ』

『はい、私もですっ』

『……わかった。早めに済ませてくるよ』

 俺がATMの用を終わらせるまでそのまま待たれそうな雰囲気なので、さっと済ませることにする。

 アクリルかガラスかは知らないが透明な壁で覆われている小屋の中は、エアコンはほんのり効いているものの、それでもまだ地味に暑かった。

 まぁ、二人が待ってくれている外に比べればマシかと思い直して、ATMの画面を操作する。

 預金通帳をATMに突っ込んで残高を照会してみたところ、振り込まれていたのは三〇〇万円ほどだった。聞いていた額より多くて驚いたが、生活費としては十分である。

 とりあえずと、以前と同じように二〇万円を下ろしてから、速やかに小屋を出た。


『今回は何を買おうか』

『うーん……そうねぇ』

『……』

 エアコンの効いたスーパーに入って早速アンナに聞いてみたのだが、明確な答えは返ってこなかった。

 アニマは無言ながら青果コーナーに目を奪われている様子で、その視線を追ってみたところでスイカとメロンが目に付く。どちらも価格は二千円前後で、玉のままカットされずに並んでいる。

 どちらも今までは避けていたものだし、買ってみるのは良いかもしれない、ということでカートに乗せた買い物かごにスイカをメロンの両方を入れた。

『あ、これなんてどう? ええと、ギョーザ?』

 そのまま足を進めて適当に野菜を選んでいると、アンナが意見を口にした。

 アンナが示す先には、チルド食品のコーナーに置かれた餃子の、一六個入りパックがある。

『そうだな。量はどうする?』

『うーん……多いのか少ないのかよくわからないのよね。三つぐらい?』

『確かに、そのぐらいで良さそうか』

 アニマもアンナも意外によく食べるので、丁度良いぐらいだと思われる。

 餃子といえば、包み方も覚えているので皮と包む具の材料さえ買えば作れるのだが、そこまで安くもないのが悩ましいところだ。

 飲食店で注文するのと比べれば圧倒的に安いのだが、チルド食品の餃子と比べれば大差はない。

 皮の需要がさほど多くなく、焼くだけで食べられる餃子の需要は多いせいだろうとは思うが──まぁ、好評なら一度試してみるのも良いかもしれない。値段的には大差なくても、作業そのものはそれなりに楽しめそうだからな。

 小麦粉から皮を作れるなら桁も変わるが、流石にそこは段階を踏むべきだろう。

 そして、餃子のパックの隣に置かれている冷やし中華が目に付いた。

『ついでに、こっちの冷やし中華も買ってみるか。麺とつゆだけ……なら……卵はあるから、キュウリと、チャーシューかな。紅生姜もついでに少し欲しいが、あれは何処に置いてたっけかな?』

『……三つでは少なかったかしら?』

『いや、明日以降の分としてだよ』

『なるほどね』



 食材以外にもお菓子類やジュースを少しばかり購入してから帰宅した。時計を見てみると、まだ時刻は丁度昼といったところ。

 スイカを冷蔵庫に放り込もうとしたら容量不足で無理だったが、スイカは常温保存が可能らしいのでそのように。

 メロンはむしろ常温でなければ追熟(ついじゅく)とやらが進まないらしいので、一旦放り込んだ冷蔵庫から取り出してスイカと並べてある。

「これで夕食の準備は良し、と。あとは何かあったかな?」

「特に思いつくものはないわね。まだ読んでない本もあるし、でぃーぶいでぃー、とかいうのもあるのよね?」

「ああ、あるよ。プレーヤーは買ってないけどPC(パソコン)で見れるから……」

「っ!?」

 PCの前に歩いて行こうとしていたらしいアニマが、俺達の会話を聞いて硬直した。

「……その、テレビだけじゃだめなの?」

「そうだな。対応してるテレビもあるかもしれないが、このテレビは対応してないから再生できる機器が要る」

「っえ、えと、じゃあ私は本を……」

「いや、たしか片付けたままのゲーム機があれば見れるから、そっちを引っ張り出すよ」

「げーむ機? それで見れるの?」

「物によるけど、DVDが見れるやつは持ってたはずだし、PCより大きな画面で見れるからそっちの方がいいだろ」


 俺が借りているこの部屋は3LDKで、三つの部屋はそれぞれ寝室、空室、荷物置き場といった風に分かれている。

 寝室はゲームもテレビも設置されている娯楽部屋のような状態。

 荷物が置かれていない部屋は、空間魔法で異世界に転移するために使ったり、ちょっとした運動をするために使っている。

 荷物置き場は、低温の液体空気なども置かれているので普通とは言い難いが、まぁ文字通りに使われている。

 異世界に飛ばされる前に暮らしていた頃は、ゲームはPCのものを主に遊ぶようになったので、荷物置き場に片付けてしまっていた。

 だからこの部屋にあるゲーム機は最新のものというわけでもないのだが、DVDを再生するには十分な性能を持っている。

 DVDやアレな(ブツ)が入った箱は寝室に置かれていたのにこちらは荷物置き場にある、というのは酷い突っ込みどころではある。

 ……なんで片付けたんだったか……しばらく放置してた本体に蹴躓いたりでもしたんだっけかな?

 あまり細かくは覚えていないが、壊れてしまったので片付けたというような覚えはないので、問題はないだろうと判断して持ち出した。

「これ?」

「これ。ちょっと繋ぐから待ってて」

「う、うん。手伝うことは……」

「特にないかな。大した手間でもないし、知らなかったら難しい事だから」

「……そう?」

 邪魔にならない場所を探して本体を設置。電源を繋ぎ、デジタルな信号を送れるケーブルをテレビに接続する。コントローラーも箱から取り出して繋ぎ、テレビを外部入力に切り替える。

 ゲーム機本体がまずは無事に起動することを確認して安心し、ディスクが入っていないこともわかったので、機材(ハード)側の準備はこれで終わりだ。

 そして再生するDVD(ソフト)はといえば、本数は少ないがハリウッド映画やアニメも含めたDVDが並んでいる。勿論、アレな(ブツ)は並べていない。

「で、何を見る? 男向けの作品ばかりで申し訳ないけど」

「うーん……どれが良いかなんて、私にはわからないわよ……?」

「……それもそうか。じゃあ、今の並びでこっちから、って感じでいいかな?」

「え、ええ、そうね」

 方針も決まったので、まずは一番左にあったアクション映画のDVDをゲーム機に挿入した。


 何本か見ているうちに夕方になったので、スイカを冷やしながらフライパンで餃子を焼く。

 フライパンの容量的な制限からまずは半分ほど焼きあがったところで、ふと、餃子には羽根付きなんてものもあったことを思い出した。

 羽根付きは挑戦したことがなかったが、せっかくなのでとレシピを調べ、片栗粉は無かったので小麦粉製の羽根付き焼き餃子が完成した。


 そこそこ好評だった餃子メインの夕食を終えてからは、またゲーム機と繋げたテレビでDVD鑑賞。

 途中で風呂を済ませ、この一本が終わったら今日は寝ようかと決めた一本が終わり、エンディングロールが流れ始める。

「もう終わっちゃった……まぁ、面白かったわ」

「そうか、それは良かった」

「ええ。……でも、初めて見たはずなのに、どこかで見たような覚えがあった気がするのは何でかしらね……?」

 アンナは思い出せそうで思い出せない、といった雰囲気の表情で首を傾げている。

 まぁ、今日再生してみたDVDのラインナップ的に心当たりはとてもある。

 言い出し辛いところではあるのだが、気付かれても同じことかと思い直した。

「まぁ、あれだよ。俺がエルヴァンだった頃に試してた事も、見た中にいくつかあったからじゃないか?」

「あー……あー、確かにあったわね。へぇぇ……」

 若気の至りというわけでもないが、種がバレた気恥ずかしさに視線を逸らすと、やや頬が膨れた様子のアニマが目に映った。俺とアンナにしかわからない話になったせいだろうか?

 と、アニマは俺の視線に気付いて、表情が申し訳なさそうなものに変わる。

「え、えと、その……」

「あははは……」

 俺としても多少申し訳なさがあったので、アニマの頭を撫でてやった。

「そういえば、このゲーム機って、DVDを見るだけじゃないのよね?」

「ああ、ゲームのソフトもあっちの部屋にまだあるはずだけど、今はダメだよ?」

「そ、そう?」

「あれは時間が区切り難いからな。やるにしてもまた後日だ」

「……そうね」

 少し考え込んだアンナは、マウスをカチカチと操作するアニマの姿を思い出したらしく、納得してくれた。


 いつでも眠れるように布団を敷いてから少し経った頃、スマートフォンが振動を始めた。どうやらメールを受信したようだ。

 送り主は、『宮寺 美奈子』と表示されていて、アドレスも覚えがあるものだ。開いてみると訓練の誘いで、予定は三日後の金曜日らしい。

「んー……」

「どうしたの?」

「訓練のお誘いだってさ。三日後で、車も出してくれるって話だけど……どうしようかと」

「そうねぇ……アニマちゃんはどう思う?」

「え、えっと、ご主人様は入ったばかりの組織なんですし、行ってきた方が良いんじゃないかなと思いますよ? その日のうちに帰れるんですよね?」

「まぁ……ちょっとした訓練らしいから、多分な。じゃあ参加する方向で送っとくよ」

 参加する旨を書いた返信を送り、スマートフォンを机の上に置く。


 しばらく寛いだ後、一応異世界の方の家も空間魔法で覗いてみて、手紙の類が届いていないことを確認してから電気を消した。

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