7/17
あの時の眼差しは忘れない
「最初の夜の久恵ちゃんの眼差しが忘れられない。久恵ちゃんが手を握り返してきて、明かりを消したとき、月明かりで一瞬見えた、もの悲しそうなうるんだ眼が。今でもはっきり目に焼き付いている。きっと一生忘れないと思う。あの眼を見たとき、思い切り抱きしめたくなった。今でも思い出すと抱きしめたくなる」
「よく覚えていない。でも、あの時、うれしくて、少し怖くて。明かりを消してもらったけど、顔を見たかった。パパはとても優しい顔をしていた」
「あんな眼は、あの時の一回だけで、その前もそれからも見ていない。ほんの一瞬のことでも一生記憶に残るんだね。だから今、この時この一舜を大切にしたいと思う」
「私も」