言いたいこと
『あいかへ
今日の放課後、話があるんだけど…
今日大丈夫ですか?
もし良かったら、川のところで待ってます。
健太より』
我ながら良くできたと思う。よく書けたなと思う。と、安心していたがそれは一瞬の話。
よーく考えてみろ、健太。小さいときは手紙のやり取りなんて当たり前。
でも、最近は全くと言って良いほど話していなかったんだぞ?
それなのに再会したその日に『話がある』なんて手紙…バカじゃないか俺!
再会してテンションが高いのは俺だけかもしれないのに。
(あーあ…ドン引きされてたらどうしよう?もう話せなくなったりしたら?…一生後悔するかも。
ああ、神様どうかあいかにドン引きされませんように…!!!) もう祈るしかない。
そう思っていたけど、案外大丈夫だった。
『健太君へ
今日大丈夫だよ!
ていうか、あいかなんかで良かったらいつでも話し聞くからね!
遠慮せずにどうぞ(^^¥)笑
それより、健太君からの手紙なんて久しぶりだし珍しいね!
なんかうれしい。(*^^*)
じゃあ、放課後! 川に行くから(^^)
あいかより』
なんて返事が返ってきた。あれ?意外とあいかって俺のこと…
ダメだって!バカ!何考えてんだよ…変な期待を頭から追い出しつつ違うことを考える。
あいかの字って綺麗だし可愛い。字があいか本人を表してるみたいだ。
春の暖かい日差し…と言いたい所だが、そう言うには暑すぎる。(気がするのは俺が緊張しているからか
)という帰り道。
といっても、今日は普通の帰り道じゃあない。
そう、俺の運命がかかっているのだ!!
「おまえさぁ、ほんとに大丈夫なの?ちゃんと言えるのか?」
と、帰り道の沈黙を破ったのは優希だ。心配だから途中まで一緒に帰ると言い出したのだ。
心配されるほどコドモじゃねぇ!!といったが無視されたのだ。
「さあな。人生なんてどうにでもなるもんだぜ?なんとかなるって!」
と笑い飛ばしはしたものの、顔は引きつっていただろう。
優希は またお前はそうやってカッコつけて と呆れている。カッコつけるくらいいいじゃないか。
そうやって俺を非難するお前だってカッコつけることあるじゃん。
「じゃ、また明日」と別れを告げる。そうさ、ここからが本番だ!!
川辺の砂利に腰を下ろす。あいかが来るまでの時間潰しは砂利投げ。
てきとーに石を取って川に投げる。 ポチャンと音がして波紋が広がる。この風景を眺めていると暑いときも涼しく感じる。気持ちがいい青空と涼しい音、そこに駆け寄ってきたのは俺の初恋の人。
「ごめん!今日、掃除当番だったんだ。待たせちゃってごめん。」
あいかは申し訳なさそうな顔をしながら、俺の横に座った。その瞬間俺は脈拍が速くなった。
「あのさ…」と切り出したいいがその後がうまくつながらない。
ああ、どうしよう?言えない。
『今』俺の気持ちなんて言えない。呼び出しといてやっぱ何でもないなんて言えない。
どうする?どうしよう?「あのさ」って言ってから何分たった?
きっとほんの数秒なのに、どうしてこんなに長く感じんだ? まず落ち着け、落ち着くんだ。
冷静になればどうにかなる。大丈夫、大丈夫… あれ、どうしよう。隣にあいかが居るんだよ?
どうしたら冷静になれるんだよ。 冷静になれるわけねーだろ。 どうしよう…