俺の気持ち
3時間目の後の10分休憩中、俺は隣のつばさを見た。珍しくぼんやりしている。
「なぁ、つばさ。これあいかに渡してきてくれないか?」
退屈そうに放心状態いになっていたつばさに声をかける。
ぼんやりとしていたつばさの表情がパッと明るくなった。お、引き受けてくれそう。
「いいよ!」と、つばさはあいかへの手紙を受け取った。
「おぉ、ありがとう。」本当は自分の手から渡したかった。
結局は、ただの情けない男なんだろうけど…今の俺には絶対にできない。
情けない自分に悔しさを覚えている俺に
「じゃ、行ってくるね~。分かってると思うけど、私に何か頼むときはアップルパイを私に奢るんだからね??」
「はぁ?! じゃあ自分で行くから返せ!!」
「やなこったぁ~!取れるもんならとってみな~!!」
必死に取り返そうとする俺だったが、その努力は無駄だった。
つばさが笑顔で教室からじゃ~ね~と出て行くのを見守ることしかできなっかた。
まぁ、しかたないか。次の授業は何だ?とサイド黒板に目を向ける。
ゲッ!数学?! ってことは、と思ったとき背後のドアが勢いよく開いた。
「おっ、これはこれは…赤城の健太君じゃあありませんか。」
ですよね。柴崎コーチですよね。苦笑いをしていると頭をわし掴みにされた。
「“わーい、楽しい数学の時間だぁ”くらい言ってくれても良いじゃないか。なぜそんなに俺を嫌がる。顧問だからか?」
「あはは。。。数学楽しみだなぁ…」
「お前…それ絶対、気持ちのこもった言い方じゃないよな」
(やばい、もうちょっと違うこと言えばよかった…)
柴崎コーチが俺に何かしようとしたとき、タイミング良くチャイムが鳴った。
(あぁ…助かった。危うく死ぬとこだった。)
その後の数学は最悪だった。コーチの嫌がらせで、今回の授業の8割は俺が当てられた。でも、ある意味良かったと思う。
もし当てられていなかったら、俺はあいかのことが気になって集中できていなかったと思う。
とは言うけれど、早く授業が終わらないかなと内心はソワソワしていた。
そして、ついにチャイムが鳴った。
「んじゃ、ここまで。あ、ここ宿題な。」
よしっ!次は給食。もしかしたら水飲み場であいかに会えるかもしれない…!手紙の返事を貰えるかもしれない。
ちょっとだけ期待をして教室を出た。(4組は移動教室かな?誰もいない。)
まぁ、手洗いしてたら帰って来るか。
「あ!健太君、ちょっと待って!!」
背後からの声をかけられた。その声はあいか?
振り向けば体育の後らしいあいかが教室に向かって走っていた。
ここで待っているより4組の前のほうが良いかな、と思い移動するとあいかが教室から飛び出してきた。
「お待たせ。えっと…これ…あの手紙の返事。です。」
あいかは恥ずかしそうに前髪をなでながら、しどろもどろ話した。
「おぉ…ありがとう。」
じゃあ… とお互いにぎこちなく別れを告げた。
本当はもっと、もう少しだけでも長く話していたかった。