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便利屋の異世界出張!!  作者: 未来
序章 便利屋
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序章 2 父と娘



 屋敷からの脱出から数時間後。町から離れた港の古い倉庫に入ると、薄暗い部屋の中で一人机に向って機材をいじっている白髪に白ひげを生やした初老の男性がいた。


「帰ったよ、父さん」


私が声をかけると、父さんが手を止めて顔を上げて私に近づく。


「おう、アン。お疲れ。ところで、例の物は?」

「大丈夫、ちゃんとあるから」


屋敷から手に入れた無透明の宝石を渡す。父さんは、入念に石を眺め本物である事に安心したのか、息をもらして視線を私に向ける。


「よし、本物だな…それにしても、お前も立派になったもんだな」

「おいおい、おやっさん。俺も大分協力したんだが?」

「おう、そうだった。パルトもご苦労だった」


ポケットから端末を出すと、頬をふくらませ不機嫌になっている相棒が見えた。実を言うと、パルトや仕事で私が使っている道具はずべて父さんが作った物で、表・裏社会に関係なく、父さんの発明品は有名で注文する人がかなりいる程だ。


 机にある機材を見て、また何か新しい道具でも作っているのかな? と思っていたら、突然父さんが私の頭を優しくなでる。大きく暖かい手は、これまでの仕事でごつごつしていたが全く痛くはなくむしろ心地が良かった。


「おまえを拾った時はあんなに小さかったのに、いつの間にかこんなに大きくなって…」

「ちょ!? よしてよ!! 私もうすぐ二十なんだから子供じゃないって…」


内心で照れているのを隠し視線をそらす。実は父さんと私は本当の親子ではなく昔、父さんが仕事中に森の中で一人だった私を見つけ拾ってくれたのだった。最初は孤児院にいたのだが、この銀髪のせいで中々周りと馴染めず孤児院から逃げ出し父さんと一緒になって段々と仕事を手伝ようになりその際「アン」と名前をつけてもらい既に数年が経っていた。


「そうか…もう。そんなになるのか…あの時拾ったお前がまさか俺の仕事をするとは正直思わなかったが…」

「もう、どうしたのさ? なんだか変だよ?」


 父さんは一度言葉を区切り、改めて私と目を合わせる。


「その、なんだ…こんな真っ当じゃない世界で働かせてすまんな。お前みたいな歳の子だったら、学校に行って楽しい人生を送れたはずなのにさ…」

「何言ってんのよ…そんな事言わないでよ。父さんは私に居場所も名前もくれた…それにこの仕事は人のためになるんだから、私、幸せだから…」

「それに、俺も作ってくれたから。まぁ、少しは感謝はしてやるよ」


私とパルトが感謝の言葉を述べると、父さんは目頭を押さえ後ろを向いてしまう。

なんだろう、今日はいつもと様子が違うような…?


「ごほん!! すまんな、変な事言って…で、アン次もまた仕事があるんだが…これはお前にとっても重要な仕事だ、やってみるか?」


 私にとって? その仕事の内容を聞こうとしたが父さんが真剣な眼差しで私を見つめてくる。何か言いづらそうで、しかも悲しげな目をしていたが私は…


「やります」


 とはっきり答える。すると私の返事の満足したのか父さんはいつもの。太陽のような笑を浮かべ再び私の頭を優しくいつも以上に長く撫でる。


「そうか、お前ならきっと引き受けると思っていたよ…アン、パルトを貸してくれ」


 端末を渡し、父さんは机の上にある機材を使い端末をいじり始める。それから数分してから、何も変わっていない端末が渡されるがパルトの声がしない。見ると電源が切れていた。そして、何故か私が屋敷から持ってきたあの無透明の宝石も一緒に渡される。


「この端末は今までとは違う力がある。そして、こっちの宝石は、これからのお前の仕事になくてはならない物だ。何しろ、これから行くところは…」

「父さん?」


 父さんはそう言って、数歩私から離れたところで


「異世界だ」


と告げた瞬間。床に変な光る文字が浮かび上がり、私を中心にして魔法陣のようなものが出現した。


「な!? 何これ!? と、父さん!?」

「アン!! これから先は私は一緒については行けない!! だが、私は信じている!! お前ならできる!! だから、行ってこい!!」


 父さんに近づこうとしても、何故か足が動かず手を精一杯伸ばす事しかできない。そそて、魔法陣の光が段々強くなる中、父さんは涙を流しずっと私を見つめ小さく口を動かしていた「さよなら、私の愛する娘」と。


 「父さんーーー!!」


 私が叫び声をあげる中。目の前が真っ白になり。そこで私の意識が完全に途切れるのであったーー


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