第二十三話
「ツツナさん、外した?」
「いいや、間違いなく触れた。 ロク、口を開けろ」
「口? あーん……んっ!?」
言われたままに口を開けたところ、ツツナさんが僕の口に指を突っ込む。 いきなり何をするのかと思い、もしもまともな理由がなければポチさんに言いつけてやろうと思い、ツツナさんを睨む。 が、対するツツナさんは特に妙なことをしているとは思っていない顔付き。
「奴の血だ。 物理的には食らうようだが……とにかくそれで異法を使え」
「血? ああ、僕の異法ね……別に良いんだけど、そういうのは最初に言ってよ、ツツナさん」
「努力はしよう」
「むう……異法執行」
対象に意識を向ける。 回路は既に理解した。 アルデルト・ヴァリアント。 僕の完全逆転を使えば、魔術使いも無効化することができる。 それは法使い同様、無の状態だ。 なんの力も持たない生身の人間、そうなってしまえば最早戦闘ですらない。 ただの惨殺だろう。 それもそれで、楽しそうだよね。
「……あっれ」
しかし、手応えがまるでない。 いつもなら、回路を逆転させたその瞬間、頭の奥で回路が組み変わるイメージを見ることができる。 それは法使いに対して行ったときでも、異法使いに対して行ったときでも、魔術使いに対して行ったときでも変わらない。 そのはずなのに、今回はそれが全く見えなかった。 僕の異法が……効いていない?
「やはりか。 ロク、こいつに俺たちの異法は効かない」
「……ふうん。 それってあれ? あの甲冑がなんか特殊ってこと? それとも魔術?」
アルデルトは剣を構え、僕とツツナさんを見据えている。 いつ動くか、そのタイミングを見極めている様子だ。 だけど、どうせ攻撃をする前には馬鹿でかい声で叫ぶのだから、今現在はそれほど警戒しなくても良いだろう。
「いいや違うな。 あの魔術使いの回路は、俺やお前よりも強力だということだ」
「……なんだって? ツツナさん、それは少し冗談がキツイよ」
並大抵の者では、僕やツツナさんの回路を超えられるわけがない。 確かに言っていることは分かるよ、回路が強力ならば、僕とツツナさんの異法がまともに通らないのは当たり前だし。 でも、ツツナさんの異法はあのエリザという魔術使いの頂点である人物に効いているのだ。 なのに、その下っ端に通らないってのはオカシイ。 一体どういうことなのか。
「おお! 素晴らしい素晴らしい素晴らしいぞぉおおおおおおお!!!! 貴様等ほどの異法使い、いや人間は初めてだッ!!!! 拙者の相手にとって不足ナシッ!! 思う存分やり合おう!!」
「……なるほど、そういうことか」
アルデルトを見て、ツツナさんは呟く。 何か分かったのか、それを尋ねるために僕はツツナさんの方へと顔を向けた。 しかし、その瞬間。
「余所見厳禁……だッ!!」
「ッ!?」
体の左側に衝撃が走る。 気配を感じる前に、攻撃を食らった。 吹き飛ぶ体でその場を見ると、どうやら僕はただのタックルを受けたらしい。 そして、ツツナさんも反応する前に蹴りを放たれ、その体が勢い良く飛んで行く。
「……ムカつく」
そのまま空中で体勢を直し、地面へと足を付ける。 それでも衝撃を殺しきることはできず、数十メートルに渡って地面を滑走した。 異法使いの状態に戻っておいて良かったとしか言えないね。 法使いの僕では体が脆いし、今ので死んでたかもしれないよ。
立ち止まったそこで左腕を見る。 無残にも折れ曲がった腕を一度振り、骨がバキリという音を立て、元に戻る。 そして前を見据えると、アルデルトはツツナさんと僕を交互に見る。
「全力で来い、異法使いッ!!!! エリザ様親衛隊、第一兵隊兵隊長、アルデルト・ヴァリアントが屈服させてやろう!!」
「くだらないね。 そもそもその親衛隊ってやつ、一体何人いるの? みんな君くらいに強いの?」
僕が距離を詰めて言うと、アルデルトは構えを取って答える。
「今は拙者のみだッ!! これからどんどん増える予定だッ!!」
「……あっそ」
馬鹿なのか分からなくなってきた。 いやでもきっと馬鹿なんだな。 一々うるさいし。
「まぁ良いや、殺してやる」
「ふっはは! いいぞ、来いッ!!」
あと、数歩。 しかしそこで、横から声がかかった。
「止まれ、ロク」
「っ……」
その声が聞こえた瞬間、僕は攻撃を停止させる。 足に入れた力をなくし、体を強制的に止める。 最早それは反応ではなく、反射だ。 条件反射のようなもの。 そして次に反撃を避けるため、また後ろへと飛んだ。
「何さ、ツツナさん」
少しだけムッとし、攻撃を止めたツツナさんの方に顔を向ける。 すると、ツツナさんは口を開いた。
「異法を使うな。 奴の魔術は異法を吸収している。 持つ剣がそれを力として与えている。 もっとも、無効化できたものに限ってはいるようだがな」
「……異法を?」
それが相手の魔術か。 だから、僕とツツナさんが異法を使用した所為で、あいつの身体能力が上がったということか? そりゃもう反則的な魔術だね。 強力にできている回路は、並大抵の法、異法、魔術ならば無効化してしまうだろう。 その上で、無効化に成功すれば力が増幅する……と。
「そのとおおおおおおお……りッ!! だがツツナと言ったか、貴様の異法はかなりギリギリだぞッ!! エリザ様でも防げないのは納得だッ!! そして拙者の魔術は対異法に特化したものッ!! 故に今日この日、貴様等を倒すために馳せ参じたッ!! 親愛なる王女、エリザ様の命によってッ!!」
なるほどね。 あの怠惰な王女様は、異法使いである僕たちにぶつける最高の人材を持ってこさせたというわけか。
「ふっはは! しかし、拙者の魔術でも対処できない奴も当然存在すッ! だが、その者も本日は不在のようで、だからこそエリザ様は采配をしたのだッ!!」
「へぇ。 それじゃあ、ポチさんが居ないってのを知ってて襲撃したんだ。 異法使いと組んで?」
「当ッ然! 貴様等、異端者と言ったか? 良き思いをしていない者たちを集め、襲撃をしたのだッ! これも全て、ジェローム様の神意魔術に寄るもの……ふっはっは!」
「ジェロームっていうと、この前僕が相手したあの人か。 その神意魔術ってのはなにさ?」
「神意魔術とは、その名の通り神の意向とも呼べる魔術のことだッ!! 意思の増幅、能力の活性化、そうだな……例えるならば、魔術を受け入れた者にLLL同様の力を与えると言ったものだッ!!」
LLL……ってなんのことだろう? その単語は良く分からないけど、簡単に言うと強くして支配下に置くみたいなものか。 まぁ受け入れた者と言っていることから考えるに、単純に支配するのとは違って、それを望んだ者を支配する……つまりは支配を受け入れた者に、ということだね。
ならば話は早い。 単純に考えて、今攻撃を仕掛けてきている奴は操られているわけじゃなく、完全に敵対する意思を持ち、僕たちに手を出したということだ。 ふふ、愉快だね。
「情報ありがとう。 ひとつ教えてあげると、身内話は一切口に出さない方が懸命だよ」
「む……謀ったな!? き、貴様ッ……騎士と呼ぶのもおこがましい子狐めッ!! 絶対に許さんッ!!!! このような奴を部下に持つポチも、拙者は絶対に許さんッ!! 所詮は異法使いの弱者がッ!!」
「勝手にぺらぺら喋っただけじゃん、それに僕は騎士じゃないし。 まったく」
僕は言い、短く息を吐く。 そして、ツツナさんの方を見た。
「ツツナさん、なんか僕はナメられているみたいだし、殺っちゃっても良い?」
さっきの言葉、忘れないよ。 一生、ずっと、忘れない。 ムカつくよ、ほんっとに。 これでもさ、馬鹿にされればムカつくんだよ。 それに何より、ポチさんのことを馬鹿にしちゃ、マズイでしょ。
「……ポチには黙っておく。 だが、制御できる範囲でやれ」
「ふふ、了解」
僕は笑って、アルデルトに向き直る。 そして、口を開いた。
「僕の方が回路が弱いだって? ポチさんが弱者だって? ナメてくれるね、騎士さん。 今すぐ謝るなら、さっきの発言は聞き流してあげるけど、どうする?」
まあもう、何を言っても許す気なんて皆無だけど。 一応はホラ、言っておいてあげないと。 謝る気があるのかないのかくらいはね。
「くだらんなぁ! 拙者は事実を述べたのみッ!! 子狐よ、貴様の異法を消すのは容易いことだッ!! ポチという奴も、拙者にかかれば軽く捻ることはできるだろうッ!!」
ああ、そう。 なら、話は終わりだ――――――――殺し尽くしてやる。
「そろそろ黙れよゴミが。 後悔して消えろ。 その態度を省みろ。 僕に喧嘩を売ったこと、懺悔しながら死ね。 異法執行」
視界が黒く染まる。 ふつふつと、体の中で何かが蠢く。 音が消え、色が消え、思考が消え、視界が消え、何もかもが無と還る。 全ての有は、無に。
「物があるということ。 現象が起きるということ。 その全て、元々は無だ」
「……む」
だけど、意識だけは僅かに残した。 これを消してしまえば、僕は自分でも何をしてしまうか分からない。 制御できる範囲で、とのことだから、抑えてやろう。 抑えて、抑えて、抑えて。 あ、ヤバイかも。
あは、君は消えちゃうね。 ふふ、そしたらごめんね。 かわいそうだね。
「ああ……気分わる」
両腕を見た。 腕の周りを黒いナニカが覆っていた。 蠢く霧のように、影のように、それは動き、僕の両腕を巨大に覆う。 腕は、二メートルほどにもなっている。
「――――――――僕の異法を見せてあげよう」
熱くも、冷たくもない。 だが、それはとても心地の良いものだった。 それはまるで僕の体の一部の幸福で、ように、意思で動かすことが範囲もできる。 広げられる、生まれたときからそれはしているように、理解できる、それは、絶望ではない。 殺したい、消してやりたい、楽しみたい、壊したいし守ってあげたい、僕は僕で、僕の中は僕しか僕は幸せ、だけど知らなくてで、今この生活は。 だからこんな最高だところで死はないにたく。 ずっと一人だった僕をこのが愛してくれているようにナニカ思って、愛されていると。 感じた僕は何も知らない。 知ろうとして、知れない。 だったら僕の中にある――――――は一体なんなのだろう? ということは、僕は僕すら知らないのだろうか? あれ、変だな。 僕は結局何ものか? 自分の中知らないにあるモノすら。 でもまぁ良い、やとりあえず目の前にいるアイツを殺そう。 たっぷりの怒りを込めて、憎悪して。 愛して。 愛して愛して殺せ。
「ふふふふふふ――――アッハハハハハ」
腕を振るう。 数十メートル離れていたアイツへ向け、黒いナニカは伸びていく。 まるでもう一本の腕のように。 黒いナニカは手の形となり、アイツの体を掴もうとする。
「迎え撃つッ!! 炎剣、レーヴァテイン!! 炎獄、鳳凰斬ッ!!」
炎剣は火柱をあげ、僕の腕を包み込む。 しかし、包んだ瞬間に炎は消滅した。
「なにッ!?」
「消えろ、キエロキエロキエロキエロキエロ」
そのまま腕は伸び、アイツへ向かう。 あとすこし、もうちょっともうちょっともうちょっと。 消えろ消えろ、あははハハハ。
「ぐっ!!」
だが、外した。 避けられたの? ああ、惜しい。 でも、腕一本もーらいっ。 消えちゃったね、腕。
「……馬鹿な、拙者の魔術で消しきれないだと」
「死ね死ね死ね死ね死ねッ!! 殺してやる。 指の先から脳味噌まで全部ぶちまけて消してやる。 細胞ひとつ残してやるものか」
意識が少し、更に沈んだ。 背中にナニカがもう一本、腕のように生まれた。 苦しくなく、ただただ幸福だ。 あいされて、る。
「ロク、落ち着けッ!!」
ツツナさんの声がした。
僕は笑っていた。 嬉しかった。 気持ち良く、頭がオカシクなりそうなほどに、楽しい。 この時間は、きっと一生忘れない宝物になるだろう。
「今だッ!!」
と、声がする。 右から八人、左から六人、僕とツツナさんとアイツが戦っている間に、様子を伺っていたのか。 姿を現したのは、魔術使いと異法使い。 隙を見て、僕たちを殺そうと企んでいたって感じかな。
「邪魔をするなよ」
「ひ……」
笑い、僕はそいつらの内の一人を見た。 見られた一人は、どうしてかとてもとても怯えた表情になる。 それがまた面白く、僕は笑う。 そのまま、右腕を振るった。
「な――――――」
右側にいた八人は、その一振りで跡形もなく消滅する。 呆気なく、消え去る。 僕はそのまま今度は左腕を振るった。 同じように、そこにいた五人は消えた。
「な、何を……一体何が……」
一人はその場で崩れ落ち、辺りをきょろきょろと見回している。 いくら探してももういないのに、かわいそう。
「ばあ。 あはは、邪魔しないでよ。 ね? ね? ね?」
「や、やめ……助け――――――」
男の前に立つと、男は今にも気を失ってしまいそうに言う。 だから、僕は優しく触れてあげた。 そうしたら、触れた部分から男の人は消えちゃった。 少しずつ、ゆっくり。
「続き、続きだよオマエ。 楽しみにしてたんだから、楽しませて。 お願い、ね?」
「回路の暴走か……? 見誤っていたか、この拙者が。 しかし、それは戦力の見極めを怠った拙者の失態。 仕方あるまいッ!!!!」
アイツは逃げない。 それは、褒めよう。 さすがにキシは、誇り高い。
そのままアイツは、地を蹴り僕の元へ飛ぶ。 それを見て、僕は右腕を振るう。 アイツはそれを目ではっきりと追った。 反応したんだ、僕の腕に。
やっぱり、良い。 楽しい。 だから殺すのを少し躊躇ってしまう。 でも、迷いはしないよ。
「次、次次次、左腕」
言って、僕は左腕を振るう。 もう少し速度をあげて、捕まえられるように。 捕まえたら、ゆっくり消していくんだ。 指の先から脳味噌まで、ゆっくりゆっくり消してあげる。
だが、それでもアイツは反応した。 持っていた炎剣を使い、それを地面に刺し、方向転換を強制的に行うことによって。 持っていた武器をあっさりと捨てる、凄いな。 その判断を咄嗟にできるのは、強い。
「っはぁああああああああああ!!!!」
そのまま、伸びきった腕の間をアイツは駆けて来る。 あと、十メートル、九、八、七、六、五、四、三、二……。
「ざんねん。 ザンネンザンネン! あっはぁ! ぼくのかちだ」
「な……それは!」
ぼくの背中から、腕が無数に生えた。 まっくろで、幸せな、うで。 意識はもう、ほとんどない。 分かるが、考えて何かをすることはできない。 それよりもよっぽど、幸せだ。 生えたのは八本の腕。 影がそのままウデになったような、モノ。 その腕はアイツめがけて伸びる。 対象めがけ、けすべく。
「ッッッ!!!!」
当たった。 当たった当たった当たった。 勝った。 ぼくの勝ちだ。 あ、あ、忘れてた。 ゆっくり消すこと、忘れてた。 いきおいよく、やりすぎた。
でも、よかった。
「……はてさて、これは一体どういうことですかね。 異法力S、異法使いランク二位、狐女の能力は完全逆転だと聞いていたのですが。 情報とは違うようで」
「だれ?」
目の前に、男があらわれた。 めがねをかけて、身長がたかい。 しろいぐんぷく、肩にある勲しょう。 こいつ、だれだ。 キシを殺し損ねたぞ。
「申し訳ありません、自己紹介が遅れました。 私は十二法の一人、ゼウスと申します。 この度は魔術使い、及び異法使いの反逆者たちが異端者へ対する襲撃を行っていると聞き、様子を見に来た所存です」
「ああ、てき? きみ、てき?」
「もちろん」
「がっ!」
おとこの姿がきえた。 そして、ぼくのおなかに拳がはいった。 ぼくの体は、うしろへとんだ。
その途中、ツツナさんのすがたがみえた。 ツツナさんは、すでに倒れていた。 あ、れ。 ツツナさんが、まけた? だれに?
「おまえ、消してやる」
吹き飛ばされながら、僕は無数の腕でバランスを取り、着地する。
「まぁまぁ、ここは一つ仲良くしましょう。 私としても、このままパワーバランスが崩れるのは望ましくないことです。 魔術使い、及び異法使いが大量に殺戮されるのは、非常にマズイ。 なので、既に手は打ちました」
上から音がきこえた。 ヘリ、機関のか。 つまり、ほうつかいが、くわわったのか、このたたかいに。
「ッぬぉおおおおおおおおおッ!!!! きぃさまぁ!!!! 騎士同士の戦いを汚すと言うのかッ!!!! 無礼千万だぞぉおおおおおおおおお!!!!」
「それは失礼しました。 ですが、あなたも早々に退却した方が良いですよ。 私が合図をするまで、法使いはこの地区に存在する全ての人間を殺し続ける。 お仲間が殺されてしまうのは心苦しいでしょう?」
「なにッ!? 法使いか貴様ッ!! っくぅううううう……仕方あるまいッ! 貴様の言う通り、それは拙者としても歓迎せんッ!! 何より拙者は異法使い以外に対しては無力だッ!!!!」
アイツは、そうさけんだ。 そして、つづける。 耳に手を当て、なにかをいう。
「……拙者だ。 今回の作戦は失敗、全軍撤退せよッ!!!!」
「懸命なご判断。 さすがは魔術使いが誇る騎士様ですね」
「そのとぉおおおおおり!! だが、貴様も子狐もいつか拙者が倒すッ!! 必ずだッ!!」
そして、アイツは、霧のようにきえた。 ああ、あああああああああああ、ころしそこねた。 消し、そこねた。 なんでなんでなんで。
「さて。 異法使いランク二位、ロク。 あなたの身柄を拘束します」
「あ? な、に? アッハハハ、なになになに?」
背中から生えているうでを全て男へ向ける。 絶対によけられないように。 ぜんほうこうをかばーして。 これならかくじつに消せる。 無数の腕は全て、オトコ目掛けて迫っていった。
「少し寝ていてください。 予想以上に早いのでね。 それに、あなたのそれは危険すぎますね」
「ん、あれ? あ」
頭が揺れ動く。 途端に、意識が遠のいた。 腕が、消えていく。 僕の、大切な、もの。
「私です。 対象を確保しました。 残る異端者との交戦は控えてください。 全員直ちに帰還。 作戦は終了」
遠ざかる意識の中、ゼウスと名乗った十二法のその声だけが、響いていた。




