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異法使いのポチ  作者: 枚方赤太
二章 変革
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第十八話

 何やら不審な動きを見せ始めた、二人。 ツツナとロク、ね。 面白い二人、こういう子たちがいるなら、きっと異端者ってのは良い組織なのかも。 うふふ、ますますワンちゃんが欲しくなっちゃう。


「頑張る姿は大好きよ。 それを壊すとき、とってもとーっても楽しいから」


 上に一人。 ロクという女の子。 そして、下に一人……わたしがさっきまで戦っていたツツナという男。 弱者は弱者なりに、わたしの魔術に対抗する。 嬉しいことね、それは。 わたしが本気で戦える相手なんてきっといないんだから、それ以前にわたしの力の前にみんなが靴を舐めるのだから。 こうして歯向かってくるというのは、とっても新鮮で幸せなこと。 だからせめて、絶望しないでね。 わたしの魔術に、屈服しないでね。


「魔術執行」


 言うと、眼前に剣が十本現れる。 それに意識を一瞬向け、ロクの方に意識を向けているツツナに放つ。 あなたの異法は自動で行われるもの。 けれど、同時に二つは行えない。 ならばあなたを殺してしまえば、これほど簡単なことはない。 どうやらこの地区にロイスはいないみたいだし、用事はないわ。


「あら?」


 しかし、その剣の全てがツツナに当たる瞬間、水に飲まれた。 なかった場所に現れた水、ツツナの異法……ということはないわね。 あいつは今、上空で何かをしようとしているロクに意識を向けている。 ということは、援軍? でも、水を発生させる……うふふ、どこかで、聞いたこと、見たことのある()()ね。


「……どういうつもりかしら。 しーらーずーちゃーんー?」


「ひっ……だ、だが負けぬ! ふ、ふふふ……私の心は既に他にあるのだっ!」


 へぇ……一体どういう風の吹き回しかしら。 一番裏切らないだろうと思っていた部分なのに、ね。 それもまさか、異法使いに肩入れ? あり得ないわ、不ちゃんに限ってそれはない。 だとしたら、メリットが一致したか。 不ちゃんのメリットと、異法使いのメリット。 この場合、わたしのしようとしたことを根元から折るということかな。


「ねーえ、わたしが不ちゃんの生殺与奪権を握っているの理解してるよね? 今すぐにでも、わたしの魔術であなたなら殺せるのよ? あなたの有限の命を消すことだって、すぐにできるの」


「ちょ、超のーぷろぶれむ。 え、えりざっちの呪いはもうないっ!」


「あらそう。 わたしの魔術を呪いと愚弄するか、不良品が。 魔術執行、不の否定魔術を取り下げよ」


 わたしの言葉と同時、光の粒が不ちゃんから放たれる。 いや、放たれようとして……止まった? わたしの魔術が、消されたというのかしら。 しかし、不ちゃんにそんな力は絶対にない。 だとしたら……。


「う、うふふふふ。 なるほど、なるほどそういうことね。 繋がっていたのは、そっちか」


 三人、またしても現れた。 白の軍服に巨体、わたしはこいつを知っている。 向こうは初見だろうけど、わたしは使い魔を通じて知っている顔だ。


「数多、友鳴。 あなたの法ね」


「……まったくとんでもないガキがいたものだ、魔術使いには。 計り知れない魔術だな」


 襲撃を受けての応援か、それにしては駆け付けたのはこいつの他に男と女がいる。 法使いが少数行動とは考えづらいから、先遣隊としてたった三人で来たってところかしら。 なら、あとから増援が来ているのは間違いない。 目的は、わたしの隕石魔術を打ち消すこと。 あーあ……少し派手な魔術を使ったのが仇となっちゃったかな。 支部が襲撃され、更にそこへ膨大な魔力が発生したのなら、駆けつけるのも無理はないし。


「わたしの本気はこの程度じゃ済まないわよ、おじさん? それよりわたしのペットを奪うだなんて、随分ナメたことをしてくれるのね」


「いいや、違うな。 俺はペットだなんて思っていない。 一人の友人として、助けてやっただけだよ」


「あっそ。 まぁ良いわ、あなたも一緒に殺してあげる。 あ、それとも捕まえて不ちゃんの前でいたぶってあげましょうか? そっちの方が楽しそう」


 不ちゃんの悲しむ顔が見れるのは、苦しむ顔が見れるのはとっても好き。 可愛い子のそういう顔って、とってもとっても興奮しちゃうの。 ああ、もう想像しただけでおかしくなりそう。 早く、早く早く早くわたしのものになれ。


「下衆め。 数多さん、異法使い共はどうしますか」


 横に立っていた女が言う。 同じく軍服を身に纏い、雰囲気は鋭い女だ。 この子は確か……あのワンちゃんと二回ほど戦っていた子ね。 鹿名だっけ。


「そっちもやるに決まってんだろ鹿名、お前そんなことも分からねえのかよ」


 そしてもう一人、こっちは知らない顔だ。 事前情報はなしだけど、警戒するほどのものを持っているようには見えないかな。


 この人たち、前回と違うのは……うふふ、一年半前のワンちゃんとの一連の戦い、その功績が認められたのか、本部所属になってるわね。 数多という男は本部の中尉、鹿名と男はその部隊というわけか。 面白い、多少はマシになったのかしら。 それとも、そう自分で思い込んでいるだけかしら? もしも後者なら、教えてあげないと。 そんな肩書なんて、なんの役にも立たないってことを。


「いいや、やらないよ。 木高(きだか)特務兵、その場に居る自分以外を全て敵と決めつけては駄目だ。 状況と場合、それを考慮しなければならない時もある。 そして今が、その時だ」


 ……ふむふむ。 勉強になるなぁ、と思いはしても、役に立つとは思えない。 わたし以外は全部わたしのペットでしかないしね。 敵も味方も、ぜーんぶわたしのペットなんだから。


「だそうだ、木高くん。 お前そんなことも分からねえのかよ」


「……おい俺の真似してんじゃねえぞ馬鹿名」


「私を馬鹿呼ばわりか、随分な身分になったものだなぁゴミ」


「最早名前ですらねぇなそれ……」


「……お前らいい加減にしろ。 今は、あのランク二位を守るぞ。 上には三位、狐女だ。 あいつらの考えでどうにかしようとしている現状、我々もそれに手を貸す他ない」


 あらあら、仲がいいことで。 まぁ別に構わないわ、その程度、なんの弊害にもなりはしない。 雑魚が百いようと千いようと、何一つ変わりはしない。


「けど、涙ぐましい努力は讃えられるべきね。 わたしは努力って言葉、大好きよ。 わたし自身、努力なんてしたことないけど。 うふふ、だからこうしましょう? わたしはあなたたちの努力を讃えて、この場から一歩も動かないわ。 あなたたちと遊んであげるのに、飼い主であるわたしが動く道理はない。 分かる?」


「ほざけ、魔女め。 てめぇのその舐めた態度は気に食わねー」


 剣先をわたしに向けたのは、木高と呼ばれた若い男。 若い子は好き、躾け甲斐があるから。 若くて従順な子が一番好きよ、わたしは。


「魔術の原点も知らぬ法使い風情が、良くもまぁ言えたものね」


「知らねーよんなもん。 けどあれは知ってるぜ、法の原典……六法全書くらいはな」


「……おい木高、お前格好付けてるのか知らないが、今めちゃくちゃダサいぞ」


 木高と呼ばれる男に対して、鹿名は言う。 面白いお二人さん、仲が良いのかな。 良いわよね、お友達って。


「うるせえ! それっぽいこと言っただけじゃねーか!」


 ああ、そろそろ喋るのも、話を聞くのも疲れてきちゃった。 だからもう良いわよね?


「魔術執行。 まずはお手並み拝見」


 作り出すは、銃。 その数、約千。 宙に出現したそれらの全ての銃口を目の前の四人へと向ける。 不ちゃんは当たっても死なないし、わたしの遊ぶ道具にするために不ちゃんは生かしておくことは簡単。 だからとりあえず、邪魔な三人組からね。


「……来るぞッ! 鹿名、木高、不ッ!」


「はっ!」


 雰囲気ががらりと変わった。 さっきまでの緩い雰囲気から、一気に引き締まったのをわたしは感じた。 面白い、わたしが本気を出すほどではやっぱりないけど、お遊びは大好きよ。 せめて死ぬまで、遊びましょ。


「一手目で死ぬことだけはやめてちょうだいね」


 そしてわたしは全ての銃を放つ。 まるで爆撃のような音が辺りに響き、全ての銃弾は四人へと向かっていく。


「舐めるなと言ったはずだ、魔術使いッ!!」


 銃弾が当たる直前、軌道が変わった。 まるで地面へ吸い込まれるように、千発の弾は全て外れる。 この女……重量を強化する法だとは知っていたけど、ここまでだったかしら。


 ……いや、ありえない。 いくら時間はあったとしても、銃弾のように小さく、重さもそこまでない物、更に速度がある物をあそこまで急激に曲げることは。


「あなたの法かしら、それともあなた?」


 小太りの男の法は、結果の強化。 それ以外にも持っていた可能せということと、考えられるのは若い男の法かな。 さて、どっちの法か。 それとも両方? 銃弾を放たれたということ自体を強化したとは思えない。 ならば、若い男の法で、そこへ数多の法を使い強化したといったところか。


「両方だよ、魔術使いさん」


 目の前まで距離を詰めてきた男、数多はそのままわたしに剣を突き刺す。 かなりの威力が込められたそれは、目で見ただけですぐに分かった。 しかし、わたしは防御行動は取らない。 必要ないと、判断。


「ッ……法執行!」


 わたしの眼前から僅かに距離があった場所で、剣は氷の壁に阻まれる。 円状の氷壁、自動防御型の魔術。 さすがにさっきツツナに腕を飛ばされたことで、発動させたんだけどね。 ナメすぎなのは事実だったみたいだから。


「……なに?」


 しかし、その氷壁が破壊された。 かなりの防御性能はあるはず……だけど、この男の法が関係しているか。 まぁ、良い。 それでも無駄よ、無駄。


「チッ……分厚い壁だね、ほんと」


 二枚目、出現した更なる壁に阻まれ、攻撃は停止する。 十層からなる氷壁、それがわたしの防御魔術だ。 しかし、なんの変哲もない剣で一層を破ってくる男か。 この結果には恐らく法が関わっている、現象を強化する法。 数多の結果の強化は、その法使いの根本的な部分にある現象の強化と非常に相性が良い。 概念の強化というのは、使いようによっては最強にも分類されるほどの力。


 ……ま、そんなことはいっか。 いくらそうだとしても、頂点に君臨するのはわたしなのだから。


「わたしが防御として氷を使う理由を教えてあげる。 うふふ」


 粉々に砕け散った氷、それらは地面へ落ちる直前、静止した。 そして次の瞬間、それらは粒となって男に放たれる。 防御と攻撃の一体化、それが戦闘をする上でもっとも効率的なもの。 これは法でも、異法でもできないこと。 防御に使った物質を攻撃へと転用する。 いちいち新たな物を生み出すまでもなく、仕留める方法。


「数多中尉ッ!」


 しかし、またしても攻撃が下へと逸れた。 全ての粒は地面へと衝突し、砕け散る。


 攻撃が全て逸らされる、か。 けどもう分かっちゃった。 木高という男、まだまだ戦闘経験が少なすぎるわね。 少し、敵に手の内を見せすぎよ? あなたの法ということも、そしてどんな法ということも、ぜーんぶ分かっちゃったんだから。 ほらほらだから、これならどうかしら。


「魔術執行」


 手を天へ向け、わたしは言う。 直後、十メートルほど上空に魔法陣が形成された。


「ヘブンズ・ゲート」


 降り注ぐは、光の柱。 全てを薙ぎ払うこの魔術、()()()()()()()()()しかできないあなたの法で、回避できるかしら? うふふ。

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