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裏フリーダム!鎖で縛るのは勘弁してください!

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 ここは『フリーダムすら生ぬるい』のゲーム内。


「おはようございます!」


 では無い。


「2時間経ちましたよ。起きてください」


 すこし、ブラックの入った企業内。パソコンの前に死屍累々(生きています)の人達をやる気のかけらもない声が起こそうとしている。

 周りの人と同じよれよれのシャツに、無精ひげを生やしたどこか焦点のあってない目をした30代の男性。


「しょうがない。……よっこいせ」


 それはどこをどう見ても、バズーカ砲に見えた。


「何する気なの!!!」


 男の背後から声とともに踵落としが脳天に落とされ、あまりの痛みに転げ回っている。

 背後から踵落としを決めたのは、この場には似つかわしくないほどにビシッとスーツを決めた20代の女性だった。


「少しでも目を離すと恐ろし事をしようとして」

「これは音が出るだけのバズーカ砲だから……」

「そんな物を何でうらびれた倉庫街の片隅で怪しい男たちから買ってくるんですか!」

「いや、いくらかまとめて買えば安くなるって言ってたし、早くさばかないと足がつくから言値でいいって……」

「その時点で、モノホン掴まされたって気付やボケ!そんなもんぶっ放されたら、ここのみんなが永眠するわ!」

「最近は、忙しすぎて帰る間もないって言っていたから、帰してやろうと……」

「どこに!」

「ディオとブッチ神父が目指した場所」

「アホかぁぁぁぁっ!」


 そんな毎度の夫婦漫才をBGMにパソコンの前の屍たちが起きだした。


「今日も夫婦漫才が目覚まし代わりだったな」


 他の社員もうんうんと頷いている。


「「誰が夫婦漫才だ」」

「まあまあ、雪崩なだれ君も近見ちかみ君もテンプレはここまでにして」


 雪崩豊快なだれほうかい。訳の解らない方向に突き抜けているHENTAI!

 近見耶千夏ちかみやちかこの会社に入ってから、ツッコミ役がはまりすぎた女。

 そして、モブ社員。


「「「オイ!」」」


そんな彼らが『フリーダムすら生ぬるい』の1地域を任せられている。



(⌒~⌒)




「雪崩くん、ちょっと来てくれ」


 雪崩の先輩にあたるモブ……田中がパソコン画面を見ながら手招きする。


「はい?」


 睡眠ダッハ!(唐辛子100本分)と書かれた栄養ドリンクを飲みながら近寄ってきた。


「どうかしました?」


  その後に、お手製のハリセンを持った近見が背後に立っていた。


「何で、近見さんが来るんですか?」

「あなたが呼ばれる時はろくでもない事が多いから待機してんの」

「そんな事は無いでしょ?近見さんも仕事して下さい」

「これが不本意ながら仕事です!」

「夫婦漫才はいいから、これ見てよ」


 画面の中では人型の煙が歩いている。


「これですか?」

「新人らしいんだか、入ってきたとたんこんなになっててな。これは設定の時に何か起こったんじゃないかな?担当したの君だったよね?」


 少し首を捻り考えて、思い出した様に手を打った。


「たぶん『キング・クリムゾン!』って叫んだんだと思います」

「……何したの?」

「ハリセン構えないで下さい。ただ、そう叫べば、設定をする時間を『ぶっ飛ばせる』だけです」

「そうすると、こうなるんだ。……設定してない訳ね」

「何を納得してるんですか!」

「今、近見君が『ぶっ飛ばした』から、こちらから言う事はないよ。それよりも起こしてやって」

「はい」


 取り出したのは、AED。


「近見君、それは?」

「心肺停止に使われる機械です」

「えっ?それって……」

「大丈夫です。生きてます」

「そうか。なら……」

「今からとどめをさします。その後、蘇生します」

「ちょっ、ちょっと待て!」


 慌てて止める田中に、


「止めないで下さい!こいつのせいで婚活もままならないんですから!」

「それは、君の性格のせいじゃ……」

「聞こえません!そんな戯言聞こえません!」

「近見君、落ち着いて」

「背中で鬼を哭かして、心臓打ちを!」

「誰か、近見君を止めろ~!」


 近見君を取り押さえる皆をよそに、白目向いている雪崩を起こす。口から流れている睡眠ダッハ!の赤色が血を流した様に見えて不気味だ。


「おい!雪崩起きろ!雪崩豊快!……」


 田中は反応しない雪崩の呼吸と脈を取り、徹夜とインスタントラーメンのせいで健康状態の悪い顔をさらに青ざめさせて叫んだ。


「大変だ!死んでる!」

「「えっ!!」」


 皆が田中の方を振り返る中、隙を付いて近見が飛びかかる。


「心臓打ち!」


ーードガッ!


「がはっ!」


 まるで天才医師に心臓マッサージを受けた空手家の様に血の色をした睡眠ダッハ!を吐きながら雪崩が生き返った。



Σ(゜Д゜)



「背中に鬼を飼う人に心臓打ちを食らった夢見ました」


((夢じゃないから!))


田中を含めたモブ社員がツッコんだ(心の中で!)


「まあ、急に倒れたからびっくりしたよ」

「近見さんのツッコミが思ったより強かったもんで……」

「……いつもと同じじゃないの?」

「最近、……鉄板入り」

「近見君?」

「何か?」


 ハリセンを振りかぶりスイングの確認をしていた近見君が振り返る。

 その音は、軽いものを振り回す『ヒュン!』ではなくバット等を振り回す『ブゥン!』。

 雪崩が撲殺されるのも時間の問題かもしれない。……田中はそう思った。


「まあ、いいか」


 田中は無情だった。


「おや?中で動きがありましたよ。これは妖精ですかね?」

「たぶん、転生したプレイヤーだね」

「名前はアサナとなってます」


 みんなが見ているとその人型の煙にに妖精が話しかけた。


「きっとディスってますよ」


 ボソリと雪崩は呟いた。


「いつもそうなんだ! 『30越えてるの~? おじさんじゃない?』そう言ってキャバクラで若い娘はディスるんです」


 回りの男性社員がそれを聞き、うなずきながら涙を流す。


「うるさいよ。顔面偏差値の低い小金落とし」


 近見はバッサリと切り捨てた。男性社員達の屍が虚ろな目をしている。


「あっ、この子設定の仕方教えてるみたいだね。種族を設定して煙が取れた! ……何でか真っ裸だ」

「ーーなに!?」


 男性社員が画面に詰め寄る。


「「「ちっ、男じゃねえか」」」


 画面から離れる男性社員。目も虚ろに戻っている。


「女性が同じ事をすると……真っ裸?」


 田中が復活の呪文を唱えた。


「女性の場合ちゃんとインナー着きます」


 雪崩の一言ジャミングにより復活の呪文は失敗した。


「何してんだか……」


 近見が呆れて見ている。


「初期装備の服着て町に行くみたいですね。いちmっ、じゃなかった一時はどうなるかと思いましたが、よかった。よかった」

「本当によかった。5時迄に雪崩をしばいて帰れるから」


 どこからか取り出した鎖で雪崩を縛りながらつぶやいた。


「ちょっと止めてください。そんな趣味無いんですよ」

「よし! 準備できた。そんじゃ、行こうか」

「へっ? 近見さん、首根っこ掴んで引きずらないで! ケツが摩れて痛い!」


 鎖で縛られ引きずられていく雪崩を見て田中が一言。


「こうして、雪崩君の姿を2度と見ることは無かった。……完!」

「よーし。みんな仕事、仕事」


 こうして彼等の日常が過ぎていく。







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